※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第11章」


 翌朝、ナマエは7時15分に裏グラに到着した。
「おはようございまーす!」
ナマエはグラウンドに向かってあいさつしながらフェンスをくぐってグラウンド内に入る。ベンチにエナメルバッグを置いて倉庫で運動着に着替えようしたところでナマエに気付いたモモカンが「おはよう。朝は着替えなくていいよ。」と言った。
「え?いいんですか?」
「8時前には練習は終わるからね。千代ちゃんが来たら明日からこの時間に何をやってほしいのか説明するから声を掛けてね。」
「わかりました」
とりあえずナマエはベンチに蚊取り線香を設置することにした。昨日の部活開始時に設置してからもう15時間近く時間が経っているためもう蚊取り線香は燃え尽きていた。
『これからは朝と部活上がる前に蚊取り線香をセットするのようにルーティンを組んだ方がいいな』
ナマエはメモ帳を開いて朝やることリストを作った。その中に"蚊取り線香の設置"と記入した。そうしていると篠岡が「あーっす」と言いながらグラウンドに入ってきた。篠岡は元ソフトボール部なので意外とあいさつは体育会系なのだ。
「千代ちゃん、おはよう」
ナマエちゃん、おはよう。着替えないの?」
「朝は着替えなくていいって。8時前には練習終わるからだってさ。」
「そっかー。」
篠岡はエナメルバッグをベンチに置いてノートと筆記用具を取り出した。
「監督ー!千代ちゃん来ましたー!」
ナマエは大声でモモカンを呼んだ。ベンチにやってくるモモカン。
「千代ちゃんもおはよう。揃ったね。じゃー、さっそく説明していくよ。まずはこれを見て!」
モモカンはベンチに新しく設置されたホワイトボードを指さした。今は何も書かれていない。
「今日の夜から選手たちはゲーム形式のトレーニングを行ってその成績に従って順位を決めます。その結果をこのホワイトボードに記入しておいてもらうから、マネジの2人は朝来たらこれをチェックして誰に何の具のおにぎりを出すのか決めてちょうだい。1位の人には1番の好物を、ペケの人には白むすびが基本ね。1位以外の上位組には1番ではないけど好みの具、下位の子には好きな具は出さないけど何かしらの具は入れる。こんな感じかしら。」
篠岡とナマエは必死にメモを取った。
「それから今までは氷は買いに行くことが多かったけど、これからは毎朝数学準備室に行って冷凍庫に氷を仕込んでおいてもらいたいの。今日は午後の部活で最初に作るドリンクで使う分と怪我した時に使うアイシング用の氷の両方が必要ね。でも明日以降はアイシング用の氷の仕込みだけでオッケー。なぜなら1回目のドリンクの氷は前日の最後のドリンク作成の時に仕込んでおけばいいから。朝やることはこれだけ。大丈夫そう?」
篠岡とナマエはメモをとりながら「はい!」と返事をした。
「それから昼間は草刈りね。もちろん生えてない時はやらなくていいんだけど、いつ生えてくるかわからないから毎回お昼にチェックして生えてるようなら午後の部活が始まる前に刈っておいてほしいの。」
「「わかりました!」」
篠岡とナマエは頷いた。
「午後にやることは、午後の部活の時に教えるから今教えるのは一旦ここまでね。大丈夫そう?」
「「はい!」」
篠岡とナマエはモモカンに返事をした。
「じゃあ、さっそく数学準備室に行って氷の仕込みをお願いね。それが終わったらそのまま教室に向かっていいよ。また午後の部活で会いましょう。」
「「はい!ではお先に失礼します!」」
篠岡とナマエはモモカンに頭を下げた後、エナメルバッグを持って数学準備室に向かった。数学準備室には志賀先生がいた。
「「おはようございます!」」
「おお、ミョウジと篠岡か。おはよう。そうか、今日から毎朝氷の仕込みをやるんだったね。」
「はい!」
「そーなんです。冷凍庫お借りしますね。」
篠岡とナマエは6枚ある製氷皿全部に水を入れて冷凍庫に配置した。
「「では、失礼しますー」」
「はい、お疲れさま」
氷の仕込みを終えた篠岡とナマエは自分たちの教室に向かった。
「じゃ、千代ちゃん、またお昼ねー。」
「はいよー。またねー。」
ナマエは7組の教室前で篠岡に別れを告げた。8時過ぎになると田島・泉・三橋・浜田が戻ってきた。
「みんな、おはよー!朝練どうだった?」
「フリーバッティング、スゲーたのしー!」
田島はニコニコの笑顔だ。
「オレも参加させてもらったんだけど、野球部って瞑想なんてやってんのな!すげーな!」
浜田がそう言った。
「なー、浜田って1個上なんだって!留年したんだって!んで泉と同じ小学校・中学校なんだって!んで三橋とは幼馴染なんだって!」
田島が捲し立てるように喋る。
「情報量が多いな」
ナマエは前の世界でアニメおお振りを観てたからその設定はすでに知っていたが、田島のあまりの勢いに思わずそう言った。
「歳は1個上だけど同学年だし、今まで通りタメ口でいいからネ」
浜田がそう言った。ナマエは「わかった。そうする。」と答えた。
「そういえば田島君、炊飯器持ってきてくれた?」
ナマエはいつものエナメルバッグしかもっていない田島を見て疑問に思った。
「あ!忘れてた!わりー!昼休みに取ってくるわ!」
「やっぱり!炊飯器なかったら今日おにぎりなしだからね!」
ナマエの言葉を聞いた田島は「げえ!」と青ざめた。
「田島、テメー、絶対昼休み取りに行って来いよ!」
泉が念押しした。
「わかった、わかったから!ゲンミツに取ってくるって!」

 昼休み、今日から浜田も田島・泉・三橋・ナマエと一緒に昼食を食べることになった。
「今まではお昼はどうしてたの?」
ナマエが浜田に訊ねた。
「2年生の教室行って元クラスメイトたちと食ってたよ」
浜田が答えた。
「その人たちとはもういいの?」
「おう。あいつらは喜んでくれてたよ。前々から"同じクラスに友達作れよ"って言われてたんだよね。」
浜田は頬をポリポリ掻きながらそう言った。
「まー、そうだよね。その友人たちは先に卒業しちゃうんだから。」
ミョウジはいつもこのメンツで絡んでるけど同性の友達はいらねーの?」
「ん-、いた方がいいんだろうけど、今のところ意外と困ってないのよね」
ナマエはハハ…と乾いた笑いをした。浜田は「困ってねーならいいんじゃん?」と返事した。
「おし!ごちそーさまでした!オレ、家に炊飯器取りに行ってくる!」
田島は珍しく静かだと思ったら、炊飯器のために急いでお弁当を口にかきこんでたからだった。
「よろしくね」
「いってらー」
泉・三橋・浜田・ナマエは田島を見送った。ナマエたちはいつも通り他愛のない雑談をしながら昼食を食べた。ナマエが食べ終わるまではみんな側にいてくれる。そしてナマエは昼食を食べ終えたら草刈りのために裏グラにいかなければならない。泉は午後の部活に備えて机で寝る。三橋は暇さえあればひたすら角材ワインドアップの練習をしている。浜田は野球部の応援団をやるにあたって横断幕を作ることにしたようで裁縫をしていた。ナマエが篠岡のところに行こうとした時、田島がドデカ炊飯器を持って9組の教室に戻ってきた。
ミョウジー!持ってきたー!」
「デカッ!ありがと!今からちょうど裏グラいくところだから、ついでに持っていっちゃうね。」
「おー!おにぎりよろしくなー!」
田島はニカッと笑った。そして自席に着いたら仮眠を取り始めた。ナマエは7組に向かった。
「千代ちゃーん」
「うわ、それが15合の炊飯器?」
篠岡はナマエが抱えているドデカ炊飯器を見て驚いている。
「そう。田島君からもらった。超デカいよね。草刈りのついでに裏グラに持ってっちゃおう。」
「うん、行こっか」
ナマエは篠岡と一緒に裏グラへと向かった。自転車の荷台に炊飯器を括り付けてから自転車を走らせる。裏グラに到着したらまずはベンチに炊飯器を置いた。そしてグラウンドを見渡す。
「ちょっと生えてきてる感じかな?」
篠岡がそう言った。昨日は雨は降ってないのだが、それでも生える時は生えるみたいだ。
「ちゃっちゃと終わらせますか」
ナマエは軍手と鎌と麦わら帽子を備品棚から取り出した。そして篠岡とナマエは二手に分かれて黙々と作業をした。今日はそんなに生えてなかったのですぐ終わった。7組の教室まで戻ってきた2人。まだ午後の授業開始までにはしばらく時間があるのでモモカンから借りたビデオ機材に備え付けの画面で桐青高校の準々決勝の試合を見ながらスコア表と配給表を作ることにした。篠岡がスコア表の担当で、ナマエが配給表の担当だ。
ナマエちゃん、いつの間にか配給表まで書けるようになったんだね」
「田島君たちからみっちり指導を受けたのよ」
ナマエは5月中旬の1週間、部活後に田島・泉・三橋を家に招いていたことを話した。
「えー、いいね。私も今度ナマエちゃんの家行ってみたいな。」
「おいでよ!お母さん、喜ぶと思う。」
そうやって会話しながらも2人はスコア表と配給表を書く手は止めない。試合の2回裏まで見たところで午後の授業の開始時間が近づいたので作業を中断してナマエは9組に戻った。

 午後の授業が終わって部活の時間になった。篠岡とナマエはいつも通り裏グラの倉庫で運動着に着替えた。今日から午後の練習の始めにパネルを使った視覚トレーニングを行うそうだ。これは篠岡とナマエも参加する。ナマエは全然できなかった。篠岡は元ソフトボール部なだけあってなかなかの出来だった。
「やっぱ千代ちゃんはすごいなー」
ナマエちゃんは色々上達が早いから大丈夫だよ」
視覚トレーニングが終わったら選手たちはアップに入る。マネジはこの隙に水撒きとドリンク作成を行う。今日は篠岡が水撒きの担当で、ナマエはドリンク作成の担当だ。ナマエはジャグを持って数学準備室に向かって自転車を走らせた。そして裏グラに戻ってきてベンチにジャグを設置した。篠岡はボール磨き・ボール修理をしていた。
ナマエちゃん、おかえり。監督がキャッチボールの後、みんなで瞑想やるから、ちょっと待っててって言ってたよ。」
「そっか。じゃ、私も一緒にボール修理やるわ。」
ボール修理をしていると志賀先生が裏グラにやってきた。そして篠岡と碧にこの後やる予定のサードランナー瞑想について解説をしてくれた。選手たちのキャッチボールが終わったらいよいよサードランナー瞑想の時間だ。選手はそれぞれの守備位置について、そこから三塁に立つモモカンの姿を眺めた。そして目を閉じて瞑想を始める。篠岡とナマエは志賀先生と一緒にベンチからサードランナーを見て瞑想をした。
 瞑想が終わったらモモカンがベンチまでやってきて、篠岡とナマエをテニスコートの側にある水道水の場所まで案内してくれた。
「ここの水道は飲める水なので、お米はここで研いでね。研ぎ方は合宿でやったからもうわかるね。それが終わったらショッピングモールに買い出しに行ってきてください。今日買ってきてほしいものはこの紙に書いておきました。買ってきたおにぎりの具材と牛乳はクーラーボックスにしまってね。数学準備室から保冷剤を持ってくるのも忘れないように。この時についでに2回目のドリンク作成をすると効率がいいかな。ごはんが炊きあがったらおにぎりの作り方を教えるのでまた声掛けてね。何か質問はある?」
「今日のおにぎりの具はどうしますか?」
ナマエはモモカンに質問をした。
「んー、今日は全員梅干しでいいかな」
「明日以降の監督のおにぎりの具はどうやって決めますか?」
今度は篠岡が質問をした。
「私は何でも食べられるからテキトーにその日に余ってる具を使ってくれればいいよ」
「わかりました」
篠岡がモモカンに返事をした。隣でナマエもコクッと頷いた。
「じゃー、よろしくね」
モモカンは裏グラへと駆け足で戻っていった。篠岡とナマエはお米を10.5合はかり、水で研いだ。研ぎ終わったら裏グラのベンチに戻って内釜を炊飯器にセットする。
「あ、この炊飯器は予約機能はないみたいだね」
篠岡が炊飯器を一通り調べてからそう言った。
「30分は吸水させたいから先に買い出し行って、帰ってきたらスイッチ押す?」
「うん、そうしよう」
篠岡とナマエはショッピングモールへ自転車を走らせた。モモカンに指示されたモノを全て購入してから裏グラに戻る。
「炊飯器のスイッチ押すね」
篠岡がナマエに声を掛けた。
「私はジャグにドリンクを補充してくる。ついでに保冷剤も取ってくる。」
ナマエはジャグの中身がもうなくなりかけてるのを見て篠岡にそう言った。数学準備室まで行ってドリンクを作ってからまた裏グラに帰ってきたナマエは保冷剤と梅干しと牛乳をクーラーボックスにしまった。ごはんが炊きあがるまでにはまだ時間が掛かりそうなのでその間は買ってきたお椀とトレーとしゃもじを洗ったり、ボール磨き・ボール修理をしたり、必要に応じて練習中のモモカンや選手へのボール渡しをしたりして過ごした。そうしているうちにごはんが炊きあがったのでモモカンを呼んだ。
「じゃあ、おにぎりの作り方を説明します。まず、炊き立てのごはんはとても熱いからこれを手で握るのは無理があるの。だから買ってきてもらったお椀を使います。お椀に1杯分のご飯をよそって、2つ目のお椀を蓋のように被せる。そんで左右にコロコロと何回か振ってからお椀を開く。」
モモカンはトレーの上でカパッとお椀を開けた。まん丸のおにぎりが出来上がっていた。
「まず最初にこうやって21個のまん丸のおにぎりを作りましょう。はい、2人ともやってみて。」
篠岡とナマエはモモカンがやっていた通りにお椀2つ使ってコロコロしてまん丸のおにぎりを作った。
「うんうん、上手上手。その調子で21個作りましょう。」
モモカンは篠岡とナマエを褒めてくれた。篠岡とナマエは順調に21個のまん丸のおにぎりを作り終わった。
「はい、じゃあ次はおにぎりに具を入れて、形を三角形に整えていきます。ごはんはこのくらい時間を置けばもう素手で触っても大丈夫な温度だよ。おにぎりの真ん中の部分を開くように割ってそこに具を詰めてから閉じます。そしたらこうやって手のひらで形を三角形に整えていきましょう。そしてさいごに海苔を巻いたら完成です。」
モモカンの手には綺麗な3角形のおにぎりができあがっていた。
「監督、上手!」
「2人もこのくらいできるよ!さ、残り20個分のおにぎり作っちゃって、もう時間がないよ。」
篠岡とナマエは梅干しの種を抜いてからおにぎりの真ん中に詰めて、形を整えた。そして海苔を巻く。それをどんどん繰り返していく。21個分のおにぎりが完成した。
「18時50分だ。ギリギリ間に合ったね。あとはプロテインと牛乳を配るのも忘れないで。それから休憩前にジャグにドリンク補充をしてきてださい。」
今日はナマエがドリンク作成の担当なので、ジャグを持って急いで数学準備室に向かった。おにぎりとプロテインと牛乳の配布は篠岡に任せた。ナマエが急いでジャグに麦茶を作成し、明日のための製氷準備を終え、そして裏グラに戻る頃には篠岡はおにぎりを配り終えて今度はプロテインをみんなに配っているところだった。牛乳はまだのようだ。ナマエは選手たちのコップに牛乳を注いで回った。牛乳もみんなごくごく飲んでおかわりをして、その日買った分は空になった。
「ジャグに麦茶入ってるから飲み物足りない人はそこの蛇口でコップを洗ってから麦茶を飲んでください。」
ナマエは選手たちに声を掛けた。数人の選手が蛇口に寄ってからジャグに群がった。ナマエはこの間に蚊取り線香の中身をを取り替えた。それからおにぎりを載せていたトレーやお椀やしゃもじを裏グラの蛇口の水で洗う。篠岡は洗い終わった食器をふきんでどんどん拭いてくれている。備品を棚に片づけたらナマエたちマネジの仕事はここで終了だ。倉庫で着替えをして外に出ると、時刻は約19時半だった。モモカンと選手たちは21時まで練習があるみたいだ。照明のない裏グラでは日が暮れたら練習ができないので電気の点いている場所へ移動したらしく、あんなに賑やかだった裏グラはもう誰もいなくて空っぽになっていた。誰もいないけれど篠岡とナマエは一応「お疲れさまでした」とグラウンドに向かって頭を下げてからフェンスをくぐって外に出た。そして校門のところで篠岡に別れを告げて帰宅した。

今日もようやく1日が終わった。

<END>