※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第13章」


 翌朝、ナマエは篠岡と数学準備室で氷を仕込んだ後、教室に向かいながらかばんから昨日作成を終えた資料を取り出した。
「千代ちゃん、これ私が作った資料。目を通してもらっていい?何か指摘事項とか不足している情報があったら教えてほしい。」
「うわあ、すごい!たくさん作ったね!」
ナマエが作った資料は桐青高校の概要1ページ、選手プロフィール一覧1ページ、20名分の選手プロフィール詳細20ページ、桐青バッテリー分析結果3ページと計25ページ分あった。
「千代ちゃんの方は作業進捗どう?」
ナマエは篠岡に訊ねた。
「私も昨日の夜がんばって終わらせてきた!ノートに書き出してあるよ。でもまだコピー取ってないから一旦このノートごとナマエちゃんに渡しておくね。このページから始まってるよ。あ、ふせん付けておこう。」
篠岡はペンケースからふせんを取り出し桐青打者の打球の情報の開始ページと桐青投手が打たれた時の打球の情報の開始ページに付箋を付けた。
「ありがとう。じゃあノート借りるね。午後の部活開始までに目を通しておくから、あとで部活中に空いてる時間があったら話し合おう。」
「うん、そうしよう!」
7組の教室前でナマエは篠岡と別れて自分の教室に向かった。そして席に着いたらさっそく篠岡のノートに目を通す。
『うわー、すごい。これやるの大変だっただろうな。あ、しかも打った時のボールカウントまでチェックしてくれてる。』
ナマエは篠岡のノートを読みながら、他にできることはないかと色々と思案してみた。

 午前の授業が終わった。今日は土曜日なのでこれで学校は終わり。昼食を食べたら13時から部活だ。いつものメンバーとお弁当を食べたナマエは今日も7組まで篠岡を迎えに行って草刈りのために裏グラへ自転車を走らせた。今日は草はあんまり生えてきてない。ちょっと草刈りしただけですぐにグラウンドは綺麗になった。13時の部活開始までにはまだ時間があるし、モモカンも選手たちもまだ到着してない。篠岡とナマエは今朝交換し合ったお互いの資料について話し合いをすることにした。
「私はナマエちゃんの資料は一旦これでいいと思ったよ。次の月曜日に監督と志賀先生と選手たちに見てもらって、それで指摘や追加の依頼があったらまた対応したらいいんじゃないかな?」
篠岡はそう言った。
「私はねー、ビデオを見て失投だった球がどれなのかはもう調べ終わったから、千代ちゃんが作ってくれたこの"桐青投手が打たれた時の打球の情報"に本来捕手が要求していたリードの情報も載せたらどうかなって思った」
「そっか、それはいいアイディアかもね。でも私のノートには本来捕手が要求していたリードの情報を載せるスペースがないよ。どうする?別ページに書き出す…んじゃ見づらいよね。」
「千代ちゃんが作ってくれたノートを見ながら私がパソコンでエクセルに書き出していくのはどうかな?そんで、そこに本来のリードの情報を付け足す。」
ナマエは篠岡に提案した。
「えっ、でもかなりの数あるよ?パソコンに入力するだけでもすっごく大変だと思う。」
「そうだけど、パソコンでデータ化した方が今後何か指摘があって情報追加してほしいって言われた時にも対応しやすいし、それに私の予想だとこのままの状態で月曜日に資料見せたら阿部君は十中八九、本来のリードの情報の載せろって言ってくると思うんだ。やって損はないんじゃないかな?」
ナマエには資料を見た阿部がその指摘をしてくる姿が容易に頭に浮かんだ。
「そっか。でも、もう土曜日だし、明日も部活があるけどナマエちゃんは月曜日までに作れそう?もしきついようならナマエちゃんは今日は帰って家で資料作成に専念させてもらったらどうかな?マネジの仕事は今日は私1人でやるよ。」
篠岡はナマエを気遣いそう提案してくれた。
「あー、作業時間確保したいね。でも1人でおにぎり作成するの大変じゃない?私、USBメモリ持ってるから学校のパソコンルームで作業するよ。んで、おにぎり作成の時間には戻ってくる。で、どうかな?」
ナマエは篠岡に訊ねてみた。
「うん、それいいね。助かるよ。あとで監督に相談してみよう。」
篠岡が答えた。

 13時前にはモモカンがグラウンドに到着した。篠岡とナマエはさっそくモモカンに事情を説明して交渉してみた。
「うん、わかった。それでいいよ。千代ちゃん、一人でもマネジの仕事しっかりこなしてね。ナマエちゃんは資料作りしっかり頼むよ。」
「「ありがとうございます!」」
篠岡とナマエは深々とお辞儀をした。そしてナマエはパソコンルームに向かうためにエナメルバッグを持ち上げた。
「じゃ、行ってくるよ。おにぎり作成のために18時頃には戻ってくるね。」
「うん、ありがと。行ってらっしゃい!」
ナマエはパソコンルームに向かって自転車を漕いだ。そしてパソコンルームに到着すると篠岡のノートを見ながら"桐青投手が打たれた時の打球の情報"の内容をひたすらエクセルに書き起こしていった。全7試合分のデータは決して少ない量ではない。
『とりあえず先に全部エクセルに書き起こして、その後で本来捕手が要求していたリード欄を追加しよう』
ナマエは13時から18時までの5時間、黙々と作業を続けた。何とか作り終わってUSBメモリにデータを保存した。それから篠岡用と自分用に2部資料を印刷する。そしたらもうおにぎり作成の時間になっていた。ナマエは慌てて裏グラに戻った。
「ただいま!資料できたよー!」
ナマエは篠岡に向かって印刷してきた資料を持った右手をペラペラを振って見せた。
「おつかれさま!5時間で作り終わったんだね。よかった!」
「はい、これ千代ちゃんのノート。貸してくれてありがとう。書き起こした内容に間違いがないか念のためチェックしてもらえる?」
ナマエはノートと資料を篠岡に手渡し、資料のチェックを依頼した。
「はいよー」
篠岡が資料を見ている間にナマエはジャグのドリンク残量をチェックしたり、炊飯までの残り時間を確認したり、クーラーボックスの中身を確認した。
『そろそろ炊きあがるから具材をクーラーボックスから出しておこう』
ナマエは机におにぎりの具材を並べた。それから備品棚のところへ行ってトレー、しゃもじ、お椀4つ、ラップも持ってきた。ついでにホワイドボードに張り付けたメモを眺める。それは今朝篠岡とナマエが一緒に決めた今日のおにぎりの具材の分配を書いたメモだ。
『よし、覚えた!』
すると資料をチェックし終えた篠岡が声を掛けてきた。
「資料、間違いなかったよ。ありがとう。」
「よかった、確認ありがとう」
その後はいつも通りにおにぎりを作り、ジャグに麦茶を作り直し、19時になったら選手たちにおにぎり2個とプロテインと牛乳を配った。選手たちが食べてる間に蚊取り線香を取り替え、おにぎり作りで使った食器を洗い、拭いてから備品棚に戻す。マネジの仕事はこれで終わりだ。篠岡とナマエは先に上がらせてもらって帰宅した。家に着いたナマエは他の作成済みの資料も明日篠岡にチェックしてもらおうと考え、各資料を2部ずつ印刷してかばんに入れた。

 翌日の日曜日、今日も朝から部活がある。篠岡とナマエはマネジの仕事をこなしながら手が空いてる時間はひたすら作成した資料に目を通した。資料に間違いがないか確認する目的もあるし、他に不足している情報がないか考えたり、収集・分析した桐青のデータを頭に叩き込むためでもある。そうして篠岡と相談しながらナマエは資料に赤ペンを入れていった。部活後、家に帰ったナマエはパソコンの電源をつけて篠岡と話し合って決めた修正箇所を修正した。そして、明日のミーティングに向けて野球部員全12名+モモカン・志賀先生2名の合計14名分の資料を印刷した。

 翌朝、選手のおにぎりの具材の検討と数学準備室で氷の仕込みを終えた篠岡とナマエは購買横のコピー機で篠岡のノートに記載されている"桐青打者の打球の情報"13ページ分を全14名分コピーした。7試合分のスコア表と配給表も篠岡とナマエ以外の12名分コピーする。それから7組の教室に行って、コピー・印刷してきた様々な資料を種類ごとにホチキスでまとめたり、それを14名分に仕分けてダブルクリップで留める作業をした。
「おし!終わりー!あとは放課後のミーティングで見せるだけだね。」
ナマエは篠岡にそう言った。
「たぶん監督から資料について説明するよう求められるよ。あと板書も。」
「あ、そうかも。どっちやりたい?」
ナマエは篠岡に訊ねた。
「データのほとんどはナマエちゃんが作成したものだから、ナマエちゃんに説明頼んでもいい?私も必要に応じて補足説明するから。」
「オッケー。じゃあ、千代ちゃんは板書お願いね。」
「うん、わかった」
役割分担が決まった。

 そしてやってきた放課後、1週間ぶりの野球部のミーティングの日だ。学校内の一室を貸し切りにしている。ホームルームが終わり次第、野球部員たちはその部屋にやってくる。全部員が集まるまで待ってから篠岡とナマエは手分けして資料を選手たちに配り始めた。そしてミーティングの開始時間になるとモモカンと志賀先生がやってきた。その2人にも資料を配った。そしてモモカンが教壇に立った。
「はーい。それじゃミーティング始めるよ!まず、前回のミーティングで出た意見をもとにナマエちゃんと千代ちゃんが資料を作ってきてくれました。みんな、手元に資料はある?受け取ってない人はいないね?」
選手たちから「はい!」とか「うっす!」といった返事が返ってくる。
「それじゃ、ナマエちゃんと千代ちゃんは今配布した資料の説明をしてもらえる?それから必要に応じて板書もお願い。」
事前に打ち合わせしていた通り、篠岡が板書をするため黒板へと向かった。ナマエは席から立ち上がりその場で口を開いた。
「はい、まず表紙にスコア表と書かれてダブルクリップで綴じられている資料、これが桐青高校の秋大と春大の7試合分のスコア表です。次に表紙に配給表と書かれてダブルクリップで綴じられている資料、これが桐青高校の秋大と春大の7試合分の配給表です。ここまでは問題ないですね?
次、"桐青高校の概要"と書かれた資料が1枚あると思います。この資料には桐青高校がどんな学校なのかという学校の概要説明と野球部の過去3年分の大会の成績のまとめを載せています。あと、これは私が個人的に知りたかったので桐青高校の制服を載せてます。今後、どこかの試合観戦に行った時に桐青高校の人が来てたら気付けるようにしたかったので。皆さんは特に覚えなくてもいいです。それから私は5月以降の埼玉新聞のスポーツ欄を毎日チェックしてまして、桐青高校の試合結果が記載されている箇所はスキャンして画像を撮っておいていました。せっかくなので共有しておきます。ご参考まで。
次、"選手プロフィール一覧"と書かれた資料が1枚あると思います。これは前回説明した通り、桐青高校のベンチ入りしている選手全20名分の主要な情報を一覧化したものです。前回のミーティングで栄口君からご指摘いただきましたので投手の持ち球も記載しておきました。これは選手の皆さんにはぜひ頭に入れておいてもらいたい大事な資料です。
次に"選手プロフィール詳細"と書かれた資料が20枚、ホチキスで綴じられているかと思います。これも前回説明をしましたが、各選手毎の詳細なプロフィールを記載したものです。これも重要な資料です。最低でもレギュラー9名の分は必ず目を通していただきたいです。ここには選手プロフィール一覧に記載されている情報に加えて、打席での立ち位置とスタンス、手を出したボールカウント、逆に見送ったボールカウント、ランナーとして塁に出た時の動きといった情報を載せています。打者成績・投手成績は一覧表よりも詳細な成績が載っています。それから打者毎のバッティングの分析結果をここに記載しています。具体的に言うとフライになった球の配給表、ゴロになった球の配給表、ライナーになった球の配給表、ファウルになった球の配給表、その4つを重ねて作った"打者が打った球の配給表"、見送った球の配給表、空振りした球の配給表、"打った球の配給表"と"空振りした球の配給表"を重ね合わせて作った"打者が手を出した球"の配給表、"見送った球の配給表"と"空振りした球の配給表"を重ね合わせて作った"打者が打てない・打たない球の配給表"の合計9種類の配給表があります。ちなみにフライになった球の配給表、ゴロになった球の配給表、ライナーになった球の配給表はそれがヒットになったか、犠打なのか、アウトなのかを色で区別できるようにしてあります。また、調査の結果、桐青はスクイズありのチームでしたので、各打者がスクイズをしたことがある場合には何球目でスクイズしたか、ボールカウント、ランナーの位置、スクイズの成否などの情報を載せています。なお、バッティングの分析についてはまだ続きがあります。
それが次の資料、"桐青打者の打球の情報"と書かれたノートのコピーが13枚あり、ホチキスで綴じられているはずです。これが前回阿部君から要望があった桐青の各打者の詳細な打球の情報です。桐青の各打者が打った球のコースと球種、打球の方向、打球の種類、ヒットor犠打orアウトをまとめて表にしました。
次は守備の情報です。"桐青バッテリー分析結果"というタイトルの資料が3枚、ホチキスで綴じられているはずです。ここには桐青バッテリーの遊び玉の有無、決め球の球種、よく使われる球種、よくある配給パターンとその見せ球、カウントを整える時に投げる球種を記載しました。それから失投に関する情報も載せていて7試合中の明らかな失投の回数、失投の割合や失投が多い球種・コース、失投を起こしやすい試合の状況を記載しました。具体的な失投内容が知りたければその下にどの試合の何回の何番バッターで失投したか、元々のリード、失投の結果の投球コース・球種、その時の試合状況を表にしたものを貼ってあります。阿部君からご要望のあったボールカウントの作り方については、結論から言うとパターン化できませんでした。桐青の捕手は打者や状況によってボールから入るか、ストライク先行するかは変えているようです。それから泉君からご要望のあった牽制球についての調査結果をこちらに載せています。それから投手の投球についてはまだ続きがあります。
それが次の資料"桐青投手が打たれた時の打球の情報"と書かれている3枚の資料です。打たれた時の投球のコースと球種、打球の方向、打球の種類、ヒットor犠打orアウトを表にまとめました。打たれた球の中に失投がある場合は元々捕手から要求されていたコースも載せています。
以上、合計41枚です。」
説明を終えたナマエが着席するとモモカンが目を輝かせながら「素晴らしい!!」と言って拍手をした。それにつられて選手たちからも拍手が沸き起こる。モモカンが教壇に立って口を開いた。
「さて、スコア表・配給表、選手プロフィール一覧、打球の詳細な情報については各自空いてる時間に読んでもらうとして、桐青高校の概要、レギュラー選手9名分のプロフィール詳細、桐青バッテリー分析結果については今からみんなで読んでいくよ。読んでてわからないこと、疑問に思ったこと、気付いたことがあったら遠慮なく口に出してみんなと共有しましょう。これだけの資料を作ることがどれだけ大変か、みんな言われなくてもわかるよね。マネジ2人はみんなを勝たせるためにこれだけのことをやってくれたんだよ!無駄にしないようにしっかり頭に叩き込むよ!」
選手たち全員が元気よく「はい!」と返事をした。そしてその日のミーティングでは篠岡とナマエが作った資料をみんなで読みながら意見を交わし合った。自分たちが作った資料が選手の役に立っているところを目の当たりにしてナマエは深い感動を覚えた。
『がんばってよかった』
桐青高校との試合まであと2週間ある。ナマエが前の世界にいた時は西浦は桐青高校に勝利していたが、ナマエがこの世界に来たことでこの世界のストーリーは変わってしまった可能性も否定できない。前の世界で勝ったからって今この世界で勝てるとは限らないのだ。ナマエは決して油断しないようにマネジとしてできることを最大限やりきると心に誓った。一方で、ナマエは前の世界で桐青高校に勝つところまでしかアニメおお振りを見ていない。桐青の次にどこの高校と当たるのか、勝つのか、負けるのか知らないのだ。
『桐青戦の後の展開は知らないんだから、私は原作の展開を変えちゃうとかはもう気にしないで勝つために好きに動いていいってことよね、神様?』
この世界の西浦高校野球部マネジとしてナマエは自校の勝利に貢献することを決意した。

<END>