※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第16章」


 桐青高校に勝利した後、しばしの間みんなでハイタッチやグータッチを交わして喜び合った部員だったが、モモカンから「さあ!次のチームを待たせないようにさっさと荷物片づけて出るよ!」という指示があり、その言葉を皮切りにみんな片づけモードに入った。バットやキャッチャー防具を専用のバッグに収納したり、ヘルメットをかばんにしまったり、各自自分の荷物をエナメルバッグに片づけたりした。そしてベンチを後にした。ダウンは球場の外の屋根のある場所でやる。…と、その前に桐青戦を投げ切ってもう電池切れでフラフラ状態の三橋だけは肩と腕を主とした身体全体を志賀先生にチェックしてもらうために別な場所へと移動した。当然バッテリーの阿部も三橋についていった。加えて、なぜか田島も阿部を追っていった。篠岡とナマエはジャグにまだ残っているドリンクをみんなに配ったり、選手たちのダウンの様子をを見守った。今日から本格始動した父母会のメンバーともあいさつを交わして自己紹介をした。明日からはおにぎりの具材とかも父母会から差し入れてもらえるらしい。そしたら毎日買い出しに行かなくてよくなる。
「ダウンが終わったらまずは服を着替えて!雨で場所ないんでお昼は学校戻ってからね!午後は普通の練習の前に今日の試合の反省会やります!じゃー、10分後にタクシー呼ぶよ!」
モモカンが部員たちに呼びかけた。篠岡とナマエがタクシーを呼ぼうとしたところ、花井母が父母会のメンバーで手分けして選手を運んでくれると言った。タクシーを呼ぶとお金が高いのでそれはとてもありがたい申し出だった。そんな折、桐青高校の主将と副主将の3名が千羽鶴を持って西浦高校の主将の花井のところにやってきた。受け取った花井は頭を下げてお礼を言う。他の選手たちもマネジの2人も同様に頭を下げた。
 選手たちが着替えをしてそれぞれ父母会のメンバーの車に乗り込んでいると阿部と田島が「監督ー、三橋つぶれましたー」といいながら寝ている三橋を担いでやってきた。モモカンは三橋は今日はもうこのまま帰らせることにした。三橋を三橋母に託した後、田島と阿部は急いで着替えをして田島家の車で学校まで送ってもらった。この2人はダウンは学校に着いてからだ。篠岡とナマエは志賀先生の車に乗せてもらって学校に帰った。
 学校に着いたらまずは昼食だ(ちなみに田島と阿部は昼食前に先にダウンだ)。各自持参したお弁当やコンビニで買ってきた食べ物を裏グラのベンチで食べた。そして昼食後、午後練開始の前に今日の試合の反省会をした。まず、改善点として様々な意見が出た。具体的には
「フォークとシンカーを打てるような練習がしたい」
「三橋が牽制で挟まれた時にもっと早く三塁蹴ればよかった。驚きで判断が遅れてしまった。」
「4番はやっぱり強烈にマークされるから田島以外の選手ももっと打てるようにならなきゃだめだと思った」
「本塁でのクロスプレーの時に吹っ飛ばされないくらいブロックをしっかりできるように身体づくりをしたい」
「9回裏ではプレッシャーで焦って暴投をしてしまった。焦らず冷静に丁寧な送球を徹底したい。」
「バントの構えをしててもバスターの可能性があるので、どんなパターンで来ても対応できる柔軟性を手に入れたい」
といった意見があった。次にそういった課題があるのは理解したうえで、今日の試合の出来についての総評を言い合った。みんなが今回の勝利は投手の三橋ががんばって桐青を抑えてくれたおかげだを言った。そんな中で阿部は
「ギリギリの試合はもうやめたい」
という回答だった。
「阿部君も三橋君を褒めろよ~!」
ナマエは阿部に文句を言った。
「三橋君が今日どんだけがんばってたか一番知ってるのは阿部君でしょ!」
「もちろん三橋のがんばりはわかってんよ。でもあいつホントに終盤ボロボロの状態だっただろ。もうあんな状態で三橋を無理させなきゃいけない状況にはしたくねえって意味だよ。」
阿部はそう言った。
「なんだ、そういう意味か。そこまで三橋君のこと思ってんならそう言いなよ。阿部君は言葉が足りないよ?」
「あ?そうか?」
「そうだよ。阿部君って現国とか古典とか苦手でしょ?」
「うっせ!」
どうやら図星らしい。
 ここで花井が今日の反省会のまとめをすることになった
「っつーことで、今日の試合の振り返りが終わったわけだけど、まとめっとまずは取り掛かるべきはバッティング技術の向上だな。とはいってもマシンはフォークとシンカーは投げてくれないし、高校野球ではフォークとシンカーを投げる投手はそこまで多くない。いきなりフォークとシンカーの練習するより基礎的なバッティング練習をしっかりこなして地道に選球眼や反射神経を伸ばしていこう。毎日のバッティング練習、気合入れてやってくぞ!」
「うっす!」
「それから鍛えたいのは状況判断能力だな。これは今までも外野使える日には浜田さんたちにランナー役こなしてもらって実践的なプレー練習をしてきたけど、それにバスターのパターンと牽制のパターンを追加して色んなパターンでの対応能力を鍛えるか!」
「うっす!」
「阿部はブロックの練習はもちろんだけど、日常生活でもよく食ってよく寝て身体デカくしていけ。まだまだ成長期だから大丈夫だろ。」
「おう」
阿部が返事をした。
「っつーことでいいっすか、監督?」
「うん、それでいきましょう!じゃ、反省会はここまで。桐青高校に勝てたのは喜ばしいことだけど、これで夏大は終わりじゃないよ。3回戦以降も勝てるように、気を引き締めて練習に取り組んでいきましょう!それじゃ、さっそく視覚トレーニングから始めようか。」
「はいっ!」
部員全員で元気よくを返事をして午後の練習を開始した。マネジはいつも通り水撒きをしたり、ジャグにドリンクを作ったり、おにぎりの具を買い出しに行ったりおにぎりを作ったりして過ごした。

 翌日、球技大会の日、三橋は熱を出して休んだ。朝のホームルームでそれを知った9組の田島・泉・ナマエは集まって話をした。
「三橋どうしたんだろうな?」
泉が言う。
「大丈夫かな~」
ナマエも昨日の試合後のフラフラな三橋を見ているだけに心配だった。
「オレ、三橋にメールしてみる!」
田島がケータイを取り出し、操作した。
「私、女子ドッヂボールだから体育館に行かなくちゃ。田島君、返事があったら私にも何て返事来たかメールで教えて。」
田島と泉は男子サッカーに出場するので一旦ここでお別れだ。
「おう、ドッヂボールがんばれよー!」
田島が大きく手を振った。

 1つ目の1年9組女子ドッヂボールの試合が終わった後、ケータイをチェックすると田島からメールが来ていた。三橋はちょっと熱があるらしい。それから三橋の今日の昼食はカレーらしい。なんでいきなり昼食の話になったのか脈絡がよくわからないが、とにかく田島と泉はお昼に三橋の家に行って一緒にカレーを食べることにしたとかで"ミョウジも一緒に行くよな?"と書いてあった。ナマエの返事はもちろんイエスだ。ナマエは田島に"私はお弁当があるけど、とりあえず一緒に行く!"と返事した。そして2つ目の1年9組女子ドッヂボールの試合が始まった。その試合が終わったら次は午後まで試合はない。ナマエは男子バスケットボールの試合の応援のために田島と泉が体育館に来ていることに気付いた。阿部も隣にいる。
「お疲れ。体育館来てたんだ?」
ナマエは3人に話しかけた。
「おう、ミョウジ。女子ドッヂボール勝ってるじゃん。」
泉が返事をした。
「私はすぐ当たって外野で暇してたけどね。そっちは勝ってる?」
「お、ミョウジ!こっちも勝ったぞー!」
田島が元気に返事をした。
「なんでカレー食べに行くことになったの?脈絡がよくわからないんだけど。」
「田島が三橋に食欲あるか訊いたら、カレーがあるんだって返事来たんだよ。で、オレら"カレーいいなー!"って言ったんだ。オレらは今日早弁しちまってもう昼メシねーしな。そしたら三橋からカレーたくさんあるから食いに来るかって返事来てさ。」
泉が事情を説明してくれた。
「阿部と花井も行くってよ!」
田島が言った。
「ちなみにオレはカレー目当てじゃねえぞ」
阿部が釈明した。
「そうなんだ、じゃあ5人だね。三橋君の家、豪邸だから5人くらい大丈夫か。」
ミョウジと阿部と花井は弁当あるんだろ?カレーは足りるだろー。」
田島がカレーの心配しかしてないのがおもしろくてナマエはクスクスと笑った。

 浜田のバスケの応援が終わったら、ナマエたちは三橋の家に向かった。
ミョウジっていつも昼メシ田島たちと食ってんの?」
花井が訊いてきた。
「そうだよ」
「へえ~、お前ら仲良いんだな。篠岡はオレらとじゃなくて、別の女子たちと食ってるぞ。」
「私が女子の友達作るより先に田島君たちと仲良くなっちゃったからねー」
ナマエは「私、女子の友達がいないのよ」と笑った。そうしているうちにナマエたちは三橋の家に到着した。チャイムを何度も鳴らす田島と叱る泉。電話をかける阿部。
「い、いらっしゃ~~い」
三橋が玄関を開けた。なんだか顔も赤いし、フラフラしている。ただでさえそんな状態なのに、そこに田島から「期末返ってきたぞ」と言われた三橋はフラ~ッとよろめいた。慌てて支える花井と阿部。
「オレも三橋も赤点はなかったぜ!」
田島が言う。三橋は「はふ~」っと息を吐いた。安心したみたいだ。田島は三橋家のキッチンでカレーを温め始めた。
「田島、右手いてーのか」
泉が田島に訊ねる。
「ああ、ちょびっとな」
「混ぜるの替わる。湿布しとけよ。」
「あ、私、湿布持ってるよ」
ナマエは前の世界の記憶から田島が右手を怪我することはわかっていたので湿布もテーピング用のテープも持ってきていた。
「まじ?もらっていい?」
田島がナマエのもとにやってきた。
「テーピング用のテープもあるけど、どっちにする?」
「湿布でいいや。あとで病院行くし。」
ナマエはかばんから湿布とハサミを取り出した。
「手出して」
「ん」
「痛いのどの辺?」
「この辺に貼ってほしい」
「オッケ」
ナマエは田島の手に湿布を貼ってあげた。
「サンキュ」
三橋は田島に向かっておずおずと「ど、どうしたの…ケガ…?」と訊いてきた。泉が昨日の最後の打席で痛めたらしいと説明する。
「三橋、何キロだった?」
三橋に体重を計るように言っていた阿部は体重計から戻ってきた三橋に訊ねた。「50キロ」と答える三橋。
「てめえ、3キロも減ってんじゃねえか!!!」
阿部は三橋に怒鳴った。怯える三橋。
「オイ昨日何食った?」
「ゴ…ゴメンナサイ…」
「はああ!!?」
ナマエは全然通じ合ってない阿部と三橋を見て、思わず口を出した。
「阿部君、言い方」
「は?何!?」
「その言い方じゃ、問い詰められてるようにしか聞こえないって。阿部君は三橋君のことが心配なだけなのにそれが伝わらないのよ、その言い方じゃ。」
ナマエと阿部が話している間に田島から「三橋ー、皿どれー」と訊かれた三橋は逃げるようにその場から離れていった。
「オレの言い方の何が悪いんだよ」
「口調、デカい声、質問の意図や背景の説明不足。あと怖い顔。」
ナマエは次々と指摘した。
「ええーっ、あいつ見てっとたまにぶん殴りたくなるのはオレだけなのか!?」
阿部はそう問う。
「いーや!」
花井は阿部に同意らしい。
「西浦野球部の中じゃ君ら2人だけじゃない?あとモモカンか。他メンバーは別に三橋にイラつかないと思うよ。君らが血気盛んなんじゃないの?」
「えー…、そうか?」
阿部は納得がいかないらしい。阿部は三橋の姿を見つめながら何かを堪えているように見えた。ここで花井が花井母から三橋母へのプレゼントを持ってきたと言い出す。昨日の高校野球ニュースの録画と今朝の埼玉新聞らしい。
「今朝の埼玉新聞まだ見てないっ!私も見たい!」
ナマエは三橋と一緒に埼玉新聞のスポーツ欄を覗き込んだ。
「うちの結果、ここに載ってるね!」
「うおおお」
ナマエは他校のチームの勝敗もチェックし、いつも持ち歩いているやぐら表を取り出して内容を記入していった。これで次の西浦の対戦校は2校に絞られた。次の試合まではあと1週間だ。

 6人は恒例の"うまそう"の儀式をやってから昼食を食べ始めた。ついでに昨日の高校野球ニュースの録画をテレビで見る。熱があってフラフラの三橋も食欲だけは相変わらず旺盛だ。
「なあ、ミョウジ。明日から三橋のおにぎり倍にしてもらうことって可能か?」
阿部が訊いてきた。
「倍って4個ってこと?全然構わないけどそんなに食べた後で運動できる?」
「うーん、そうだな、倍はやりすぎか。じゃあ、3個。3個目のおにぎりの具はなんでもいいから。」
「わかった。一応監督にも相談してみるね。たぶん許可してくれると思うけど。」
「おー、頼んだ。サンキュ。」
その後はみんなでニュースを見ながら各試合結果について話したり、田島が三橋になんで西浦に来たのか話を聞いたり、逆に田島に阿部が西浦を選んだ理由を訊いたりした。ちなみにナマエはこの世界にやってきたのは高校入学の日なので自分がなぜ西浦を選んだのか知らない。もし訊かれたらなんて答えればいいんだとヒヤヒヤした、が、幸いなことにそれは訊かれなかった。ここで阿部が篠岡が同じ中学出身だということを知らなかったことが判明した。
「えー、阿部ってサイテー!」
ナマエは思わず"君"付けするのを忘れた。泉も「マジでひでえ」と言っている。
「千代ちゃん、中学の時に西浦の情報集めたくて阿部に話しかけたことあるって言ってたよ」
ナマエはもうこの際、阿部に君付けするのはやめることにした。
「え?マジで?記憶にねーな。」
「うわ、阿部ってやっぱサイテーだ」
「あまりにサイテーだから、ミョウジが阿部のこと呼び捨てにし始めたぞ」
泉がそう言った。阿部本人は呼び捨てでも君付けでもどっちでもいいみたいだ。まったく気にしていない。
ミョウジ、オレらのことも呼び捨てでいいぞ」
泉がナマエに言った。
「そう?でも泉君は泉君って感じなんだよねー。」
「なんじゃそりゃ。ま、好きに呼べばいいよ。」
「オレも田島呼びでもいいぞ。悠一郎でもいいぞ。家では悠って呼ばれてる。」
田島が話に入ってきた。
「田島呼びかー。下ネタぶち込んできやがった時なんかは"たじまぁ!?"って呼び捨てしたくなるね。でも田島様と呼びたい時もある。」
「なんだよ、田島様って?」
花井が訊いてきた。
「叶のフォークをステップして打った時とか、昨日、高瀬のモーションのクセ見抜いたのとか、最後の打席でシンカー打ったのとか、"さすが田島様~!!"って気分にならん?」
花井はちょっと悔しそうにしながら「…わからなくもない」と言った。田島は「ヘッヘーン」と得意気だ。ここでニュースで昨日の西浦高校vs桐青高校の試合についての報道がされた。
「1年生投手、三橋!踏んばりました!!」
アナウンサーが三橋の名前を読み上げた。
「おわっ、三橋名前呼ばれた!」
田島が感激している。ナマエも三橋のがんばりがテレビでも認められて嬉しかった。でも三橋は青ざめて、そして泣き始めた。そして三橋はバッと頭を下げた。
「昨日は、かっ、勝手して、スミマセン、でした…!」
みんな三橋が謝る理由がわからなくてポカンとしている。
「阿部君に、替われ…って、言われて…も、オレ……」
「アレはウソだよ」
阿部が平然と言った。三橋はウソと言われてポカンとした後、涙目になった。
「んなことよかバックホーム躊躇したことのほう気にしろよ」
「ゴ、ゴメンナ、サイ」
「もーぜってーすんなよ。オレも傷付くからさ」
三橋は阿部を傷付けたと知って動揺した。そして再度「……ご、めん、な、さい…」と謝った。
「……まー、わかりゃいーよ」
「阿部も明日からおにぎり3個にする?捕手としてクロスプレーの時にふっとばされないくらい身体デカくしたら三橋君も躊躇なんてしないっしょ。」
ナマエはニシシッといたずらっぽく笑った。阿部は目に角を立てて「…ミョウジ、てめーなぁ」と返してきた。
「身体デカくしなきゃいけねーのはオレだけじゃねえだろ。三橋みたいに体重3キロ落ちたわけでもねーのに、3個目なんか要求できねーよ。自分でどーにかすんわ。」
「そーっすか」
ナマエは『じゃあ米は明日から11合だな』と考えていた。ここで三橋が阿部にメールの内容について訊ねた。阿部は三橋が昨日ダウンしないで帰ったことを気にしていたらしい。そしてメールの返信をしてこなかった三橋にウメボシを食らわせていた。阿部はできれば今日志賀先生にマッサージに来てもらおうと言う。それが無理なら整骨院でマッサージを受けるよう三橋に指示した。
ミョウジ、昨日の反省会の資料、三橋に渡すんだろ?」
泉がナマエに話しかけた。
「あっ、そーだった!」
ナマエはかばんからノートのコピーを取り出した。
「三橋!」
泉が三橋を呼び、ナマエから受け取ったノートのコピーを三橋に差し出した。
「見てみ、総評のとこな」
三橋は恐る恐る紙を開いた。自分が褒められているのをみて顔を赤くしてプルプル震える三橋。
「昨日の試合だったらこんなの普通だぞ。誰も特別いい人でもねーっての。」
泉がそう言った。
「おお、そう。オレたちは普通だよ。普通に野球やってるだけ!」
花井もそう答えた。三橋はこれが普通だと知って驚いているようだった。無理もない。だって三橋は中学で普通の野球はできなかったのだから。ナマエは三橋の中学時代を思うと目に涙が込みあげた。
「なんだ、ミョウジはまた泣いてんのか」
泉がそれを目ざとく見つけた。
「え、なんでミョウジが泣いてんだ?」
花井がギョッとする。泉が「こいつ、三橋のこと弟とか息子みたいな、そんな感覚で見てんだってよ」と説明する。花井は「なんだそりゃ?オレら同い年だろーが?」とピンとこない様子だった。そうして雑談しているうちにもう昼休みの終わりが近づいていた。5人は学校に戻るために三橋の家を後にした。
 午後はナマエは女子ドッヂボールで負けてもう試合が無くなったので田島と泉がいる男子サッカーの応援に行ったり、浜田がいる男子バスケの応援に行ったり、篠岡がいる7組の女子サッカーの応援に行ったりした。
 放課後の部活では昼に阿部から提案のあった三橋の3個目のおにぎりについてモモカンと篠岡に相談してみた。
「そうね、3キロも落ちちゃったのは怖いわね。元に戻るまでは三橋君はおにぎり3個でいきましょう。」
モモカンが答えた。
「阿部は3個目のおにぎりはの具はなんでもいいって言ってました。その時に余ってるやつ使うでいいですよね?」
「うん、いいよ」
今日から父母会がおにぎりの具の提供をしてくれる。今朝グラウンドに到着したら選手たちの家からの差し入れがクーラーボックスにたくさん入っていた。これならもう毎日買い出しに行かなくていい。ただし、毎日差し入れが変わり、それに合わせておにぎりの具の分配を考えなきゃいけなくなった。毎日、差し入れの内容を元に具の分配案を考える必要がある。少し難易度が上がった。
ナマエちゃん、今日、お昼に三橋君の家行ったんだ?」
モモカンとの話が終わり、篠岡とナマエはベンチに向かって歩き出した。そんな折、篠岡がそう訊ねてきた。
「そう。花井君と阿部と田島君と泉君と5人で。」
「三橋君、大丈夫そうだった?」
「うーん、結構しんどそうだったかなぁ」
ナマエは顔が赤くてフラフラしていた三橋の姿を思い出した。
「そっか、明日から復帰できるかなぁ?」
「本人は明日は来るって言ってたよ。高校生男子って回復早いし、大丈夫じゃないかな。あと、さっき田島君が言ってたけど、今日一緒に整骨院に行ってマッサージ受けてくるみたいよ。」
「ああ、田島君、右手痛めちゃったんだって?だから今日来てないんだね。」
「そー。最後の打席でシンカー打つために変な打ち方したんだってさ。」
と、ここでナマエは阿部におにぎりの件を報告しようと思い立った。
「あ、私ちょっと阿部と話してくるね」
ナマエは踵返しをして柔軟中の阿部のところに向かった。
「阿部ー!三橋君のおにぎりの件、許可貰ったよー!」
「おお、サンキュ。じゃ、そういうことでよろしく。」
「あいよー」
それからナマエは備品倉庫からホースを取り出して水撒きを始めた。その後、ナマエは炊飯のために必要な道具を備品棚から取り出し始める。そうしているうちに篠岡がジャグを持って数学準備室から戻ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
篠岡はベンチにジャグを設置した。
「さっき阿部君と何を話したの?」
「ん?ああ、三橋君のおにぎりの件、モモカンから許可貰えたよって報告してた。あれ言い出したの阿部だからさ。」
ナマエはボウルに10.5合のお米をはかりながら言った。
「……ナマエちゃん、阿部君のこと君付けするのやめたの?」
「え、あ、うん。なんか、お昼に三橋君の家で話してて、流れでそうなった。」
阿部が篠岡と同じ中学出身だということを把握してなかったことは篠岡本人には言いづらいとナマエは思った。なのでぼやかして答えた。
ナマエちゃんはどんどんみんなと仲良くなるね。羨ましいな。」
「千代ちゃんは7組のメンバーと教室で話したりしないの?」
「うーん、3人とも休み時間はなんか食べてるか、寝てるかのどっちかだし、わざわざ話しかける用事もそんなにないしな」
「9組のやつらもそんなんだよ。やっぱお昼を一緒に食べてるのが仲良くなれた大きな要因かな。あとは私は野球初心者だからみんなに色々と教えてもらう必要があったのも仲良くなれた理由の一つかも。」
「そっか」
「千代ちゃんはその必要ないもんね。あんま役立つアドバイスできなくてごめんね。」
「ううん、全然いいんだよ」
今日はナマエが炊飯担当だ。最初は2人で一緒にやっていたが、もう2人とも慣れたので分担することにしたのだ。ナマエは「行ってくる」と篠岡に声を掛けてテニスコート近くの水道に向かった。米を研ぎ終わったらボウルから内釜に米を移して水を規定量注ぐ。そして炊飯器に内釜をセットした。30分吸水させるのでケータイのアラーム機能で30分後に音が鳴るように設定する。その後はベンチでボール磨き・ボール修理をしながら次に対戦相手になる可能性のある2校について情報交換をした。
「どちらもあんまり情報は集められてないねえ」
ナマエは篠岡もあんまり情報を持ってないことがわかって頭を抱えた。
「でも言い換えればどちらもあまり強い学校ではないってことだよ」
篠岡はポジティブだ。
「そっか!うちは桐青に勝ったんだし、練習試合もこれまで負けなしだし、練習量も十分だし!」
ナマエは自分のチームの力を信じようと思った。
「明日の午後は試合観戦に行くし、そこでしっかり観戦して対策を考えよう!」
「うん!」
その後はやぐら表を見ながらどこが勝ち上ってくると予想するか、高校野球オタクの篠岡の意見を聞いた。
「あー美丞大狭山ってとこが最近の上昇株なんだっけ」
篠岡とやぐら表を見ながらナマエが言った。
「そう。元々強い学校だったんだけど数年前に監督が変わってから一時期低迷してたの。でも最近また台頭してきたんだよね。」
「じゃあ5回戦はここが有力候補?」
「だと私は思ってるよ。」
「せっかくマネジ2人いるんだし、手分けして今後の対戦相手になりそうな学校のデータ収集進めたいね。」
「そうしよう」
篠岡とナマエはだれがどの高校の調査をするか担当の割り振りをした。その後はいつも通りドリンクを作ったり、おにぎりを作ったり、ノックのボール渡しやったりして過ごした。

 翌日の球技大会、三橋は無事に登校してきた。敗者復活戦で女子ドッヂボールに出たナマエだが結果負けたのでもうこれ以上試合はない。なので浜田と一緒に田島・泉・三橋がいる男子サッカーの応援に行った。田島はサッカーでも大活躍だった。でも三橋の顔面にボールをぶつけていた。
「おいおい、田島、うちの大事な投手になにやってんの!」
ナマエは思わず声に出た。
「これ阿部に見られたら何言われるやら…」
ナマエは目に角を立てて田島に怒鳴る阿部の姿が脳裏に浮かんだ。
「あー、阿部は絶対怒るよな」
浜田はハハッと笑った。
「つーか、ミョウジも三橋に対して割と過保護だよな」
「え、マジ?そうかな?気をつけよう…。」
浜田は「まー、マネジが選手のこと気遣うのは当たり前なんだからいいんじゃん?」とフォローしてくれた。

 お昼休みはいつものメンツで教室で昼食を食べた。浜田があと1つか2つ試合に勝てば新聞の取材があるだろうと言う。そして浜田はモモカンについてもっと知りたいと言い出した。しかし、野球部男子はその話には乗ってこないで話を切り上げてさっさか寝てしまった。浜田とナマエは顔を見合わせた。
「オレがおかしいのか…?」
浜田は困惑していた。
「んー、歳は私も知りたいかな」
「歳の次は………あ、いや、やっぱなんでもない。」
「? なによ?」
「いや、オレもあいつらがこの話に乗ってこなかった理由わかったわ」
「え、なに?なんで?」
「や、それは、ちょっと、言えないな…。聞かないでくれ。」
浜田がそう言うのでナマエはこれ以上詮索はしないことにした。ナマエは昼食を食べ終わった。今日は裏グラも球技大会で使用中なので草刈りはしない。今日の午後は他校の試合観戦に行く予定だ。それは西浦高校の次の対戦相手が決まる大事な試合だ。
『しっかり観戦して次も勝てるようにサポートするぞ!』
ナマエは13時の集合時間までの間、事前に収集しておいた2校のデータに目を通して午後に備えた。

<END>