※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第19章」


 崎玉高校との試合が終わった後、篠岡とナマエはモモカンの車に乗せてもらって学校の裏グラへと帰った。車に積んである様々な道具をおろして元の場所へと戻す。それが終わったら昼食の時間だ。篠岡とナマエはベンチでお弁当を食べた。お弁当を食べ終わった後は恒例の草刈りだ。とはいえ、もう梅雨は明けたし昨日は雨は降っていないので今日はそんなに生えてきていない。8月になったら台風のシーズンになるのでまた草刈りが大変な時期がやってきそうだけど、あと1ヶ月くらいの間は楽できそうだ。
 篠岡とナマエが草刈りを終えたあたりで電車移動してきた選手たちが昼食を食べ終えて裏グラに到着した。
「みんな、おかえりー!」
ナマエは続々とグラウンドに入ってくる選手たちに声を掛けた。
ミョウジ、篠岡、監督はまだ昼メシ?」
花井が篠岡とナマエに話しかけてきた。
「うん、まだ戻ってないよ。そろそろ帰ってくると思うけど。」
ナマエが返事をした。
「どうかしたの?」
篠岡が花井に訊ねる。
「電車でたまたま崎玉の主将に会ってな、練習試合を申し込まれたんだ。向こうの監督の連絡先教えてもらったからスケジュール確認してあとで連絡してほしくてさ。」
花井が答える。
「わかった。監督に伝えておく。崎玉の監督の連絡先教えて。」
ナマエが花井に訊ねた。
「阿部ー!崎玉の監督のケー番教えてくれ!」
花井がベンチにいる阿部に大声で呼びかけた。阿部はベンチから崎玉監督の電話番号を大声で読み上げる。篠岡がそれを聞きながらメモを取ってくれた。
「じゃ、よろしく」
「あいよー」
ナマエが返事をすると花井はベンチに戻っていった。
「まだちょっと時間早いけど、もう水撒きやっちゃうね」
篠岡が言った。今日は篠岡が水撒き担当でナマエがドリンク作成担当だ。
「じゃあ、私はジャグにドリンク作ってくるわ。モモカンが帰ってきたら崎玉との練習試合の件、伝えといてくれる?」
「うん、伝えとくよ。ナマエちゃん、いってらっしゃい。」
「はーい」
ナマエはジャグを持って数学準備室へ向かった。ナマエが裏グラに戻ってきた頃にはモモカンも帰ってきていた。選手たちは視覚トレーニング中だった。篠岡はモモカンと話をしている。モモカンは手にスケジュール帳を持っている。おそらく崎玉との練習試合の日程を検討しているのだろう。西浦高校野球部はもう既に色んな高校との練習試合の予定を組んでいる。それは崎玉も同じだろう。おそらく崎玉との練習試合の実現は来年の春以降になりそうだ。
「あ、ナマエちゃん、おかえり」
裏グラに帰ってきたナマエに篠岡が気が付いた。
「おかえりなさい。じゃあ、2人も視覚トレーニングやってね。」
モモカンはそう言って篠岡から電話番号が書かれたメモを受け取った。そして裏グラの外に出て電話をかけ始めた。ナマエは篠岡と視覚トレーニングを実施した。ナマエも以前よりはできるようになってきた。視覚トレーニングが終わったら、今日は練習開始の前に崎玉戦の反省会をする。いつも通り主将の花井が司会進行をやって、篠岡とナマエはその内容のメモを取った。それから篠岡とナマエは次の対戦相手となる港南高校について現時点でマネジの2人が集めた情報を選手たちに共有した。
「マネジの2人は明日の午前までに港南高校の試合のスコア表と配給表を作って来てくれる?とりあえずその2つさえできれば、その他のデータはできる限りで構わないからね。」
モモカンが篠岡とナマエに言った。
「「はいっ!」」
篠岡とナマエはモモカンに返事をした。

 反省会が終わったら選手たちはアップに入る。マネジの篠岡とナマエは水撒きとドリンクの設置は先に終わらせたので今日はこの時間におにぎりの具の買い出しに行くことにした。今日は午前中試合だったため父母会からの差し入れがないのだ。それに昨日は今日の試合に備えていつもより早めに練習を切り上げたので順位争いのトレーニングもしていない。だから今日のおにぎりの具は全員梅干しだ。
「じゃ、買い出し行ってくるね!」
篠岡がナマエに声を掛けた。買い出しは以前は2人で一緒に行っていたが、もう慣れたので分担することになった。その日のドリンク作成担当ではない方が買い出しをすることになっている。なので今日は篠岡が買い出し担当だ。
「いってらっしゃい。気を付けてね。」
ナマエは篠岡を見送った。篠岡が買い出しに行っている間、ナマエは買ってもらったばかりのノートパソコンを開いて、先ほどの反省会の内容をワードファイルに書き起こした。それが終わったら父母会が撮影してくれたビデオのメモリカードをパソコンに差し込み、港南高校の試合の観戦を始めた。ビデオを見ながらスコア表と配給表を書き起こしていく。途中で篠岡が買い出しから帰ってきたので、配給表の方は篠岡に担当してもらった。篠岡とナマエは約2時間程でスコア表と配給表の作成を完了した。それが終わったらスコア表と配給表を見ながら各打者の得意コース・苦手コースの分析をしたり、各打者毎の打った球のコースや打球の方向と種類を一覧表にまとめたりした。そうしているうちに炊飯の時間になったので作業は一時中断だ。買い出しを篠岡にやってもらったので、お米を研ぐのは今日はナマエがやることになった。その間、篠岡はボール磨き・ボール修理をする。ごはんが炊きあがるまでの間は再び2人で港南高校のデータ分析作業をできる限り進めた。ごはんが炊けたらいつも通りおにぎりを作り、19時の休憩時間に選手たちにおにぎりを配った。それで今日のマネジの仕事は終わりだ。

 翌日、日曜日も朝から練習がある。その日の午前中も水撒きとドリンク作成以外は港南高校のデータ分析作業を進めた。そして、お昼休み、お弁当を食べ終わったナマエはパソコンで作った資料を印刷するためにUSBメモリを持って学校のパソコンルームに向かった。その間、篠岡はお昼の恒例の草刈りをやってくれている。野球部員12名&モモカン&志賀先生の合計14名分の資料の印刷とスコア表・配給表のコピーを終えたナマエは学食のテーブルで各資料をホチキス止めしたりダブルクリップでまとめたりして資料を仕分けてから裏グラに戻った。篠岡は草刈りを終えて休憩していた。
ナマエちゃん、おかえり」
篠岡は汗をかいていてすごく暑そうだ。
「ただいま。草刈り1人で大変だったよね。ごめんね。」
「ううんー。ナマエちゃんこそ、資料14人分仕分けるの大変だったでしょ。」
「この炎天下での草刈りほどじゃないよ。はい、これ千代ちゃんの分の資料ね。」
「ありがとー!」
ナマエは篠岡に資料を手渡した。日曜日のこの時間帯は選手たちは格技場で昼寝をしている。午後の練習を開始したらモモカンと志賀先生と選手たちにも配ろうとナマエは思った。
「油断は禁物だけど、港南高校はそんなに強くなさそうだね」
ナマエは篠岡に正直な感想を言ってみた。
「そうだね。港南には佐倉君みたいなスター選手も特にいなさそうだしね。」
篠岡も同意見みたいだ。
「午後は5回戦の対戦候補の2校の分のスコア表と配給表を作り始めない?気が早いかな?」
「そんなことないよ。前もって準備しておくのって大事だよ。それにナマエちゃんがノートパソコン持ってきてくれてるおかげで大きい画面でビデオ視聴できてすごい助かる!」
「今までビデオ機材に備え付けの小さい画面でがんばってたもんね」
ナマエは買ってもらったノートパソコンがさっそく役に立って嬉しい気持ちになった。

 午後の練習開始前、モモカンと志賀先生と選手たちがお昼休憩から戻ってきたところでナマエは作成した資料を全員に配布した。
ナマエちゃん、千代ちゃん、ありがとう!じゃ、花井君と阿部君はさっそくデータ解析しましょう。他のみんなはいつも通りに視覚トレーニングから始めてアップとキャッチボールをやってね。副主将の栄口君、しばらくの間、花井君に代わって指示出しよろしくね。」
「はいっすー」
指名された栄口がモモカンに返事をした。
 その日の午後、水撒きとジャグの設置を終えた篠岡とナマエはあらかじめお昼休みに会話した通り、5回戦の対戦候補となる美丞大狭山高校と狭山高校の2校のデータ収集を進めた。篠岡の読みでは美丞大狭山高校が5回戦の対戦相手になるとの予想だ。なので先に美丞大狭山高校のビデオ視聴から始める。
「今度はどこの試合見てんの?」
ジャグのドリンクを飲みにベンチにやってきた水谷が篠岡とナマエに話しかけてきた。
「美丞大狭山高校だよ」
篠岡が答えた。
「へー、次勝ったらそこと当たるの?」
「うーん、私の予想が当たれば…だけどね」
「2人ともすごいよなー。短期間でデータ集めて、こんなちゃんとした資料作ってさ。」
水谷はナマエが配った港南高校の資料をぱらぱらと捲りながら言った。
「えらいでしょ。すっごい大変なんだから次も勝ってよね!」
ナマエは水谷にそう言った。
「水谷君、三星学園との試合でフライ落としたでしょ~!ああいう凡ミス、もうやめてよねー。」
ナマエは水谷にクソレフト事件のことを指摘した。
「あーそれはもう言わないでぇ!阿部に散々クソレフト呼ばわりされたんだぜ、オレ!」
水谷は恥ずかしいのか両手で顔を覆っている。
「アハハッ、阿部に直接言われたんだ!」
ナマエはお腹を抱えて笑った。
「笑うなよー。ミョウジって結構ズバズバもの言うよなー。」
水谷は涙目だ。
「てかミョウジってなんで阿部だけ呼び捨てなの?阿部と仲良いんだ?」
「んー?別に悪くはないけど、特に仲良いわけじゃない気がする。なんか阿部はあの性格的に君付けする必要ないなって気がしただけ。」
「じゃーオレのことも呼び捨てでいいよ!」
「たしかに。クソレフトだしな。」
「それはもう忘れて!お願いだから!」
ナマエはププッと吹き出した。篠岡も隣でアハハッと笑っている。
「水谷、なーに練習サボって女子マネといちゃついてんだ」
ここで泉が登場した。泉もドリンクを飲みに来たようだ。
「サボってないよぉ。飲み物取りに来たついでにちょっと話してただけじゃんかぁ。」
「何の話してんの?」
泉が尋ねた。
「水谷にもうフライ落とすんじゃねーぞって言ってた」
ナマエが答える。ナマエは水谷のご所望通り君付けするのをやめた。
「あー、あれな。せっかくパーフェクトだったのにな。」
「だからごめんってー!」
水谷は両手を顔の前で合わせて詫びを入れた。
「謝んならオレじゃなくて三橋に謝んだな」
「三橋にはもう謝ったよ!」
「三橋君が許しても私は忘れないぞ」
ナマエはすかさずそう言った。
「なんでよっ、ミョウジは三橋のなんなんだよおっ」
ミョウジは三橋のことスゲーかわいがってんだよな」
泉がそう言った。
「そ!三橋君って健気で超かわいくない?ああいう息子か弟が欲しい。」
ナマエが答える。
「まーた言ってらー」
泉は笑った。
「じゃ、オレ練習戻るわ。水谷、お前もだぞ。」
ドリンクを飲み終わった泉はコップを片付けながらそう言った。
「ほーい。じゃーねえ。」
水谷も泉と一緒に練習に戻っていった。篠岡とナマエはビデオ視聴を再開した。

 モモカン・花井・阿部の3人によるデータ解析が終わった後、花井は港南高校対策のためのミーティングをやるために部員に輪になって座るよう呼びかけた。いつも通り花井が司会進行を務めながら、港南高校の概要や戦略の傾向、港南バッテリーの配給の傾向や打者の注意点などを説明した。そして港南高校対策にどのような練習を実施するべきか選手たちは意見を出し合い、話し合いをした。マネジの篠岡とナマエもいつも通りその内容をメモに書き起こしていく。
「つーことで今日・明日の2日しかねーけど、港南高校対策しっかりやってくぞ!」
「おおお!!」
篠岡とナマエは自分たちが作ったデータがちゃんと活用されているところが見れたのが嬉しくて顔を見合わせてニコッと笑いあった。そしてその後も可能な限り美丞大狭山高校のデータ分析を続けた。

 翌日、月曜日は1学期の終業式の日だ。だが、当然この日も野球部は朝練をやる。ただし、明日は夏大4回戦の日なので今日の午後は早めに練習を切り上げる予定だ。そのため今日はおにぎりの作成は必要ない。篠岡とナマエは数学準備室に行ってアイシング用の氷の仕込みだけすればいい。それが終わったら篠岡とナマエは自分のクラスへ行った。今日は終業式なのでクラスメイト全員で教室や廊下の大掃除をする。それが終わったら終業式典だ。式典の後はロングホームルームで生徒たちに通知表が配られる。ナマエは恐る恐る自分の成績を確認した。なかなか良い成績だった。野球部の活動で公休を取って授業や球技大会を休んだりしていたのでその辺がどう評価されているのか心配していたのだが、担任教師からのコメントを読むに野球部のマネジとしての活動を評価してくれているようだった。ロングホームルームが終わって晴れて夏休みに突入した西浦高校の生徒たち。もちろん野球部は午後から部活だ。今日のグラウンドは外野も使えるので実践的なプレーの練習ができる。そのため浜田もランナーとして部活に参加してくれることになった。そんなわけで今日も田島・泉・三橋・浜田・ナマエといういつものメンツで昼食を食べた。
「なー!オレ、通知表1なかったぞー!」
田島がニアッ笑いながら言った。
「それはよかった…!三橋君は!?」
ナマエは三橋に訊ねた。
「オ、オレも、ない…!」
三橋は顔を赤くしてデヘッと笑った。
「よしよし。君たちは西浦野球部の攻守の要なんだからね。成績のせいで試合に集中できないなんてことがないように、これからもしっかり頼むよ!」
田島と三橋は「はーい!」と元気よく返事をした。
『三橋も4月と比べたらだいぶ馴染んだよな』
4月の頃カチンコチンに緊張していた三橋が最近は9組メンバーといる時はリラックスできているようでナマエは安心した。
食事を終えたらナマエはいつも通り草刈りのために7組に向かった。篠岡は1人でお昼を食べていた。
「あれ?今日は1人?」
「うん。いつも一緒の友達は今日は部活ないから帰ったんだ。」
「そーだったんだ。言ってくれたら私が7組に来て一緒に食べたのに。ってか阿部たちと一緒に食べたら?」
「あー、それもちょっと考えたんだけど、男子に交じる勇気出なかったや」
7組のクラス内を見渡すともうお弁当を食べ終わった花井・阿部・水谷の3人は自席で仮眠を取っていた。
『もしかして私が野球部のマネジになったせいで、千代ちゃんと選手たちが仲良くなるのを妨害しちゃってるかな?』
ナマエは篠岡が選手たちとまだ距離があるのは自分の存在のせいなんじゃないかと心配になった。
「今度からはお昼1人になる時は言ってね。9組でみんなで一緒に食べよう。」
「うん、ありがとう。もう食べ終わったから草刈り行こうか。」
篠岡はお弁当箱をかばんにしまってから立ち上がった。そうして今日も篠岡とナマエは草刈りのために早めに裏グラに行き、それが終わった後は最近の日課となっているマネジ共有ノートの更新作業をした。

 午後練はいつも通り視覚トレーニングから始まる。これはマネジも参加する。その後は選手たちはアップに入る。この隙に篠岡とナマエは水撒きとジャグのドリンク作成を行った。そこまで終えたところでナマエはモモカンに昨日作成した美丞大狭山高校のスコア表・配給表・分析データの資料を渡しに行った。
「もう美丞大狭山の分もやってくれたの!?ありがとう。」
モモカンは出来上がった資料を見て喜んだ。
「5回戦の候補はもう1校、狭山高校があるんですが、それはこれからやります。でも千代ちゃんの読みでは美丞大狭山が勝つだろうとの予想です。」
「そうね、私もそう思う。」
モモカンも美丞大狭山が勝つと踏んでいるらしい。
「選手たちにも資料渡してもいいですか?それとも4回戦が終わって対戦相手が決まるまで待った方がいいですか?」
ナマエは出来上がった美丞大狭山の資料を今選手たちに渡したら、混乱させるのではないかと危惧していた。
「花井君と阿部君にだけ渡しておいてもらえる?他の選手たちには4回戦に意識を集中してもらいたいからまだ渡すのはやめておきましょう。」
モモカンはそう答えた
「わかりました!」
花井と阿部がアップを終えてキャッチボールに入ろうとグラブ・ミットをベンチに取りに来た時、ナマエは2人を呼び止めた。
「これ、5回戦の有力候補の美丞大狭山高校の資料。モモカンから花井君と阿部には渡しておくように言われたから。」
「おお、サンキュ」
花井が受け取った。
「5回戦の相手まだ確定じゃないよな?もう1校のデータは?」
阿部がそう尋ねてきた。
「もう1校の狭山高校の分は今日これからやるよ。でもモモカンも千代ちゃんも美丞大狭山が勝つと踏んでる。」
「まー、そうだわな」
阿部も同じ予想をしているらしい。
 選手たちのキャッチボールが終わったらサードランナー瞑想をした。マネジたちはベンチからサードランナーを見て瞑想をする。マネジたちは選手と違って試合には出ないけど、でもマネジがメンタル弱かったらそれが選手たちに伝わって悪い影響を及ぼすかもしれない。以前志賀先生からマネジにも強いメンタルは必要だと言われた。ナマエはメンタルが弱い自覚があったのでサードランナー瞑想は気合を入れて取り組んだ。その後はマネジの2人は予定通り5回戦の対戦相手の候補の1つである狭山高校のビデオを見ながらスコア表・配給表を作った。それから各打者の得意コース・苦手コースの分析と各打者毎の打球情報の一覧表の作成もいつも通り実施した。夕方にはその日の練習はもう終わりにして、明日の4回戦の試合に向けた準備を全員で行う。具体的には各種道具を専用のバッグにしまったり、それをモモカンの車に積み込んだり、トンボでグラ整をしたりするのだ。それが終わったらその日はマネジ2人も選手たちと一緒に上がった。選手たちは部活終わりはみんなでコンビニに寄ってから帰るのが日課になっている。今日は篠岡とナマエもそれに付き合った。選手たちは今日はおにぎりがなかったのでお腹が空いてるみたいでチキンとか唐揚げとかパンとかカップ麺とか比較的ガッツリしたものを購入していた。ナマエは家に帰ったら夕食があるので今そんなものを食べたら夕食に支障が出る。ナマエは崎玉戦前日と同様にアイスを買った。各々食事を終えたら上り組と下り組に分かれて帰途につく。
「あ、そうだ、ミョウジ
阿部がナマエに話しかけてきた。
「なに?」
「三橋の体重やっと元に戻ったんだけどさ、夏大が終わるまでは引き続きおにぎり3個で頼みたいんだけどいいよな?」
「うん、いいと思うよ。念のため、明日モモカンに確認取っておく。もし問題あったら知らせるわ。」
「おー、頼んだ」
「あと狭山高校のデータできたから今日家で印刷して明日の朝に渡すね」
「サンキュ。ま、たぶん美丞大狭山の勝ちだろうけどな。」
「美丞大狭山の次はどこだと思う?」
ナマエはポケットからやぐら表を取り出して阿部に見せた。
「やっぱ日農大付属じゃねえか?あとはARCと千朶は間違いねえだろ。」
「そっか、じゃあそこのデータ収集を優先的にやろっかな。モモカンと千代ちゃんとも相談するよ。」
阿部も高校野球にはかなり詳しいらしく、帰り道に日農大付属高校のことや千朶やARCに関する知識を色々教えてくれた。ナマエは元々は野球に興味がなかったうえに埼玉県に引っ越してきたばかりなので他校の知識はあまり持っていない。阿部の話はとても勉強になった。

 翌日、西浦高校vs港南高校の試合は市営大宮野球場で12時半より行われる。しかし、その試合の前に美丞大狭山高校vs狭山高校の試合がある。この試合は西浦高校の5回戦の試合相手が決まる大事な試合のため今日は早めに球場について試合の観戦をすることとなった。試合観戦の時、普段は選手たちは裏グラからランニングで球場に向かうが、今日はこの後の試合に備えて自転車で球場までやってきた。スタンド席に着いたら選手たちはユニフォームに着替えをする。最初の頃は男子たちの着替えを目の当たりにして狼狽えていたナマエだったがさすがにもう慣れた。
「あ、ミョウジと篠岡、先発で変わったところある?」
花井がスタメン発表のアナウンスを聞いてそう訊ねてきた。ナマエは篠岡の肩をクイッを押して篠岡に回答するように促した。ナマエは篠岡が選手たちと少し距離があるのを気にしていた。たぶん、元々の世界では篠岡が1人でマネジをやっていたのだからもっと選手たちと仲良くなっていたはずだ。だから今のこの状況はナマエがこの世界にやってきたことによるものだと思ったのだ。
「両校とも変更ないよ。んで美丞は毎試合2~3人で継投します。」
篠岡はマネジ共有ノートを見ながら選手たちに説明した。継投と聞いて嫌がる巣山に阿部は「投手が集まらなかった上での苦肉の策だと思うぞ」と言い、美丞の監督が2年前に変わったばかりであることやまだ学生であることなどを説明した。
「そーいや美丞ってそこそこ強いイメージだけど、去年の夏は見なかったかも」
泉がそう言った。篠岡はマネジ共有ノートを見ながら、美丞大狭山の去年の夏大・秋大の成績と今年の春大の成績を説明した。
「じゃあ、監督のがすごいっすね!1年目で4回戦だから!」
田島がモモカンを褒めた。しかし、モモカンは美丞大狭山の監督のことを「20歳そこそこで投手3人育てたのは大したもんよ」と評価した。
「監督はいくつなんすか?」
田島が誰もが気になっていたけど訊けなかったことを平然と訊いた。
「ん?23歳!」
モモカンはさらりと教えてくれた。
「監督、お若いですね!大学卒ですか?卒業してそのまま監督に就任したんですか?」
ナマエはモモカンに訊ねた。
「ううん、私は3年制専門学校卒。卒業後は1年間フリーターでバイトやってお金貯めつつ、今年からの監督業務に向けて色々と準備してたの。」
「監督ってバイタリティすごいですよねえ!」
前の世界のナマエはモモカンよりも年上だった。
『私が23歳の時ってこんなにしっかりしてなかったぞ』
ナマエはモモカンのことを心から尊敬した。
ナマエちゃんもなかなかのバイタリティの持ち主だと思うよ。野球初心者なのにもうルールも覚えて、スコア表も配給表も書けるようになって、本当にすごいことだよ!うちのマネジは2人とも優秀で本当に助かってるよ。」
「そう言ってもらえると、すごくやる気出ます!ありがとうございます!」
ナマエはモモカンに褒められて胸がほくほくした。今日も観戦しながらスコア表を作っていった。試合は美丞大狭山が7回コールド勝ちとなった。
「そういえば今日からうちのクラスのダンス部の女子2人がチアガールやってくれるんだよ」
西浦高校野球部がベンチ入りした後、バットやヘルメットなどを棚に設置していると篠岡がナマエに話しかけてきた。
「あー!そういえば前にそんなこと言ってたよね。いよいよチアデビューなんだ!?こりゃ選手たちもテンション上がっちゃうね!」
「だね!試合後にチアの衣装見せてもらおうね!」
「見たい見たい!」
ナマエもチアガールと聞いてテンションが上がっていた。

 試合が始まったら今日はナマエがスコア表を書き起こす係だ。配給表やジャグのドリンク補充などは篠岡が担当してくれる。今日の試合では、5回裏で港南高校に同点に追いつかれた時はナマエは肝が冷えたが、8回表で西浦が3点差をつけてそのまま試合終了し、結果6-3で西浦高校が勝利した。選手たちがグラウンド整備している間にマネジ2人は道具の片づけをした。ベンチを後にして球場の外に出たら応援団やチアガールの女子2人、応援に来てくれた西浦の生徒たちや父母会のメンバーが迎え入れてくれた。
ナマエちゃん、チアの2人紹介するね」
篠岡はチアガールの友井紋乃と小川美亜を紹介してくれた。
「はじめまして。野球部のマネジのミョウジナマエです。」
「知ってるよー!よく7組に来てるの見てたよ!」
友井がそう言った。
「あ、うん、7組によく顔出してるよ。知られてたか。チアの衣装超かわいいね!」
ナマエは小川と友井のチアガールの衣装をまじまじと見た。
「えへへ、ありがとう!次の試合も応援行くからね。」
「暑い中、応援ありがとうね!熱中症には気を付けてね!」
ここでモモカンから電話で連絡を受けた花井が「駐車場まで荷物持ってくぞ!」と野球部員に声を掛けた。ナマエはクーラーボックスを持った。篠岡はタオルや救急箱などの各種備品を入っているバッグを持つ。バットやキャッチャー防具などは選手たちが持ってくれる。しかし、バットケースを持ち上げた三橋に阿部が「おめーは持つなよ」と声を掛けた。三橋は驚いてバットケースを落としそうになる。田島と阿部がそれを見て慌てた。三橋はなんとかバットケースを落とさずキャッチした。
「どれ、オレが持ってやろ」
巣山が三橋の持っているバットケースを代わりに持っていってくれた。
「おお、巣山君かっこいーな!」
サラッと三橋の荷物をもってあげた巣山を見て、ナマエは思わず感想を漏らした。
「今のはすごくスマートで紳士的だったね」
篠岡も巣山を褒めた。ちなみに阿部は三橋に「荷物番してろ!」と指示して三橋を置いていった。田島はバットが危なかったのにそれを気にも止めずに「バットは最悪買えるじゃん」と言ってのけた阿部に文句を言っていた。
『意外と田島の方が常識的なところあるんだよな。っていうか最近阿部の過保護に磨きがかかっているというか。』
ナマエはクスッと笑った。
「阿部君のことでしょ?」
隣にいる篠岡がナマエに声を掛けてきた。なんでナマエが笑ったのか見当がついたらしい。
「三橋君のことすごく大事にしてるよね。私ももう全然阿部君のこと怖くないよ。本当はすごく優しいんだってわかってきた。」
続けて篠岡がそう言った。
「もはや、優しいの域を超えて過保護な感じあるけどねー!」
ナマエはアハハッと笑った。篠岡も「たしかに!」と言いながら笑っていた。

 試合後、学校の裏グラに帰った西浦高校野球部はまず今日の試合の反省会をした。その後、モモカンと花井と阿部はいつものごとく3人で美丞大狭山の資料を見ながらデータ解析を始めた。その間に篠岡とナマエは手分けして残りの選手たちに美丞大狭山高校の資料を配布した。それからナマエはおにぎりの具の買い出しに行った。帰ってきてクーラーボックスに具材を入れていたら、モモカンと阿部とのデータ解析を終えた花井が部員全員に集まるように声を掛けた。全員で美丞大狭山戦へ向けた作戦会議を行うためだ。篠岡とナマエは書記としてその会議の内容をメモっていった。
「よっし、じゃあ今日・明日は美丞大狭山戦に向けてそういうメニューでこなしていくからな!」
花井が選手に声を掛けた。
「おおお!」
選手たちが花井の掛け声に応じた。
 篠岡とナマエは炊飯が終わるまでの間は6回戦に向けたデータ収集・分析を開始する。事前にモモカンと篠岡と話し合った結果、6回戦の有力候補は日農大付属だろうという結論が出た。なので日農大付属のビデオから視聴してスコア表と配給表と書き起こしていった。その作業の途中で米が炊きあがったのでおにぎりの作成を開始した。
「あと4回勝てば優勝か~!!もしかしてこのまま行けちゃったりして!?」
おにぎりを作りながらナマエは篠岡にそう言った。
「今日勝ったから既に埼玉のベスト16だよ!次勝てばベスト8!」
篠岡はとても嬉しそうだ。
「ひゃ~!初出場で1年生だけでベスト16って、うちら結構すごくない?」
「すごいよね!!」
篠岡とナマエはキャッキャッと盛り上がった。練習試合も含めて、ここまで西浦は負けなしだ。美丞大狭山は元々はそこそこの強豪校。でも2年前に監督が変わってからは低迷気味だった。今年の春大ではいい成績を残して上昇株として期待されているとはいえ、西浦は去年の優勝校の桐青高校を倒した上にここまで練習試合含めて全勝していて勢いがある。美丞大狭山のデータの解析も終わってる。
『次もうちが勝つ!』
ナマエの頭の中では西浦が勝利するシーンが思い描けていた。

<END>