「おお振りの世界に異世界トリップ 第28章」
夏合宿5日目の朝、ナマエはケータイの目覚ましアラームの音とともに目を覚ました。昨日は阿部と三橋が2人きりで朝食を作ると聞いて心配で早く目が覚めてしまったけれど、昨日の朝食の出来栄えから判断してもう2人で問題ないと安心できたからナマエは今日はぐっすりと眠ることができた。起床したナマエは一応ケータイをチェックしてみる。
『うん、阿部からの着信はないな』
ナマエは朝の身支度を整えてから篠岡と一緒に食堂へと向かった。
「阿部ー!三橋君ー!おはよ、今日も順調?」
ナマエはキッチンにいる阿部と三橋に話しかけた。
「おお、ミョウジ。はよ。今日はオレも失敗してねーぞ。」
阿部が出来上がった料理の皿をテーブルに運びながら答えた。
「おー!えらい、えらい!」
ナマエはニッと笑った。ナマエは料理をテーブルに運んでいる阿部と三橋の手伝いをしようかと思ったがそれも含めて2人の朝食づくりの一環だと考え直し、手を出さずに見守ることにした。そうしているうちに朝練を終えた選手たちとモモカンがぞろぞろと食堂に入ってきた。志賀先生も食堂に到着し、全員で恒例の"うまそう"の儀式とともに朝食を食べ始める。
「うん、今日もおいしい!」
そう言ったナマエに篠岡は「そうだね!」と笑顔で返した。
朝食を食べ終わったら午前はいつもより軽めに練習し、午後からは他校での練習試合がある。篠岡とナマエはいつも通りバットやヘルメットやクーラーボックスなどの様々な道具をモモカンの車に積み込んで練習試合の相手校までモモカンの車で運んでもらった。三橋は今日の午前練習中も練習試合の攻撃中もブルペンで阿部と一緒にワインドアップでの投球練習をしていた。三橋のフォーム改造は阿部の登場のおかげで思ってたよりも順調に進んでいるようだった。
『これで本当にタイトル通り"おおきく振りかぶって"投球する三橋が誕生したわけね…!』
ナマエは念願の三橋の振りかぶって投げる姿が見られるようになって胸がホクホクした。
「ナマエちゃん、なんかすごい嬉しそうだね?」
篠岡がナマエにそう声を掛けてきた。今は練習試合の真っ最中だ。篠岡とナマエはベンチでスコア表と配給表を書いている。
「あ、わかる?ワインドアップで投げてる三橋君、すっごい良いなーと思ってね!」
「あー、やっぱワインドアップしてる方がかっこいいよね」
「モモカンはワインドアップするメリットはあんまりないって言ってたけどね~。それでもワインドアップしてる方が私は好き!」
ナマエは胸の前で両手を組んで目をキラキラと輝かせた。篠岡はそんなナマエを見て「うんうん、わかるよー」と言いながら笑っていた。
「ミョウジはまた三橋の保護者モードか?」
泉がジャグからコップにスポドリを注ぎながらナマエにそう話しかけてきた。
「あははっ、これも保護者モードなのかな?」
ナマエは"保護者モード"という呼称をつけられたことがなんだかおもしろくて笑ってしまった。
「お前、本当に三橋のこと好きだなぁ」
泉もカハハッといたずらっぽく笑った。
「だって三橋君は本当に頑張り屋さんなんだもん。そして日々の成長が著しくて目が離せない!」
「こんだけ入れ込んでるのに恋愛感情にならねーのが不思議だわ」
そう言いながら泉はコップに注がれたスポドリをゴクゴクッと飲み干した。
「なになに、恋バナ?」
"恋愛感情"という言葉を聞きつけた栄口がニヤニヤしながら近寄ってきた。
「いや、ちげー。逆だよ逆。恋愛感情が芽生えないって話。」
泉は栄口にそう言った。
「恋愛感情が芽生えない?誰が、誰に?」
「ミョウジが、三橋に。ミョウジってさー、三橋のこと息子or弟みたいに思ってんだよ、オレらタメなのにさ。」
「へー、そうなんだ?」
栄口は泉の説明を聞いて少し考え込むような素振りを見せた後、一拍置いて「でもオレも少しその気持ちわかるかも」と笑った。
「だよね!栄口君はわかるよね!」
ナマエは身を乗りだして栄口に迫った。
「うん、なんか面倒見たくなるというか、放っておけないというか…ね」
「私より栄口君の方が保護者モードじゃん!」
ナマエはそう言いながらアハハッと笑った。
「なんだよ、うちのチームは三橋の保護者ばっかかよ」
泉もケラケラと笑っている。ここでバッターボックスに立っている打者三橋が三振して3アウトとなった。攻守交代だ。
「さー、しっかり守ってよー!」
ナマエは泉と栄口に声を掛けた。2人は「うっす!」と言いながらグラウンドへと出ていった。
練習試合が終わった後、阿部と篠岡とナマエはモモカンの車で西浦高校の裏グラへと帰ってきた。いつもは阿部は他選手たちと一緒に電車移動しているのだが、今は膝を怪我しているのでマネジ2人と一緒にモモカンの車に乗ることになった。裏グラに到着したらモモカンと阿部と篠岡とナマエの4人で積んである荷物を車から降ろして所定の場所へと戻した。他の選手たちはまだ電車移動中で不在のため、篠岡とナマエはこの隙に練習試合中に書き起こしたスコア表と配給表を交換し、ミスがないかお互いにチェックを行った。
「うん、問題ないね」
「こっちも。じゃ、ファイリングしちゃおっか。」
篠岡とナマエがそういった雑務をこなしているとようやく選手たちが裏グラに帰ってきた。
「「みんな、おかえりー!」」
篠岡とナマエは選手たちに声を掛ける
「おお、待たせたな」
花井がそう返事をし、ベンチにわらわらと向かっていく他の選手たちの方を振り返った。
「お前ら、すぐ着替えろー。まずは今日の反省会から始めっぞ!」
「おー!」
選手たちが練習着に着替え終わったら、全員で輪になって座り、今日の練習試合の反省会を始めた。篠岡とナマエはその反省会の内容をメモに書き起こしていく。あとで議事録を作るためだ。そうして反省会が終わったら選手たちはアップに入った。マネジ2人は選手のアップ中に水撒きとジャグの設置を手分けして行うのが毎日の恒例の作業だ。今日はナマエは水撒きの担当だった。水撒きを終えたらナマエはベンチでノートパソコンを開く。メモ帳を見ながら先ほどの反省会の議事録作成を始めた。
「なあ、ミョウジ」
名前を呼ばれて顔を上げると阿部が立っていた。
「お、どした。アイシングする?」
「え、ああ、そだな、それも欲しい。けど、そうじゃなくてだな…。」
氷嚢を作ろうとクーラーボックスの方に向かいかけたナマエは阿部の言葉に足を止めた。
「ん?」
「あのさ、朝食作りのことでちょっと聞きてェことがあんだよ」
「何?あ。明日の朝食の献立に迷ってるとか?」
「いや、そーじゃなくて。いや、それも含めて…か。あんな、単刀直入に言うとだな、ミョウジはどうやって料理できるようになったんかなって聞きたくてよ。」
阿部はベンチの椅子にドカッと座った。
「ああ、そういうことね」
阿部はこの夏合宿で三橋と2人での朝食作りを任されている。おそらく次の合宿でも同様に朝食作りを任されるだろうと推測できる。そして阿部はゴボウや山芋がわからないほどに全く料理の知識がない。阿部は今後のことを見据えて料理のことを少しでも習得したいのだろう。ナマエはクーラーボックスを開けて氷嚢に氷を詰めながら阿部に向かって話しかけた。
「モモカンから貰ったスポーツ選手用の料理の本あるでしょ?あれの後ろの方のページによく使う食材の下処理の方法が載ってるからさ、まずはそれを覚えることから始めたら?」
「ほー、なるほど?」
「写真が載ってるからどの食材がどんな見た目なのかも覚えられるし、調理前にどんな下処理が必要なのかっていう基礎的なところをまずは把握しないとね。ゴボウを山芋と間違えちゃうのはさすがにまずいよ~!」
ナマエは例の場面を思い出してクスッと笑った。
「テメ、笑うな!もう間違わねーよ!」
阿部は顔を赤くしながらナマエに向かって目くじらを立てた。
「あはは、ごめんごめん!…あとは自宅でお母さんと一緒に料理する時間が取れたらそれが一番いいんだけど、選手たちは朝から晩まで練習三昧だからそれは難しいよねぇ。」
「そーだなァ…」
「でも三橋君は少し料理できるみたいだし、三橋君から教わりながら少しずつ覚えていけばいいんじゃない?もっと三橋君を頼ってみなよ。モモカンが2人に朝食作りを任せてる目的もその辺にあるわけだし。」
「おお、たしかにそうだな」
ナマエは阿部に氷嚢を手渡した。阿部は「サンキュ」と言って氷嚢を受け取り、それを怪我している膝に当てた。
「あとはねー、スポーツ栄養学の本を読んでみるのもいいと思うよ。阿部は典型的な理系男子だから理屈から入るのはありなんじゃない?私、本持ってるから貸してあげるよ!」
「お、マジか。ぜひ貸してくれ。」
「おけおけ。合宿明けに持ってくるね。」
「あんがとな」
「いーえ。私も以前配給の本とか貸してもらったしね!」
ナマエはニカッと笑った。
「じゃ、オレは筋トレしてくるわ」
阿部はベンチから立ち上がった。膝を怪我している阿部は他の選手と同じ練習ができないので1人だけトレーニングルームで黙々と筋トレすることになっているのだ。
「おー、がんばってこいよー」
阿部を見送ったナマエは再度ノートパソコンを開いて議事録作成を再開した。その後は普段通りノックのボール渡しやボール磨き・ボール修理やタイム計測などをして過ごしていたらあっという間に夏合宿5日目は終了となった。
夏合宿最終日、ケータイの目覚ましアラームの音とともに目を覚ましたナマエは念のためケータイの着信履歴をチェックした。今日も阿部からの着信はないので朝食作りは問題ないようだ。顔を洗ったり髪を梳かしたりして身支度を整えて食堂へ向かうと前日と同様に阿部が出来上がった料理の皿をテーブルに運んでいた。ナマエは阿部と三橋に朝のあいさつをした。
「おはよ!今日も問題なかったみたいで何より!」
「おー。とりあえずこの夏合宿の朝食作りはなんとか乗り切ったな。」
「この調子で次の合宿の時もよろしくー!」
ナマエはカラッと笑った。阿部は「おう」と答えた。
夏合宿最終日は特に練習試合もないし試合観戦もないので朝から通常の練習メニューをこなす。ただし、最終日は19時には道具の片づけなどを終えて合宿所を出ないといけないため、今日は合宿所での夕食はない。17時半に練習を終えたら、あとはみんなで合宿中に使った様々な道具の片付けをしたり各自荷造りを行うのだ。
「あ~もう腹減ったよぉ」
「オレもぉ」
18時、合宿所の片付けをしている選手たちはみんな空腹でヘトヘトだった。今日は朝から1日中練習三昧だった上にこの5日間は毎日18時には夕食の時間だったのだからそれも仕方がないことだ。
「家に帰るまであと1時間以上もこんな空腹、オレ耐えられないよぉ」
水谷が弱音を吐いた。
「じゃーさ、上がったらみんなでどっかメシ食いに行こうぜ!」
田島がそう提案した。三橋は"メシ"と聞いて田島の隣で「うおお」と目を輝かせている。
「いいな、それ!」
「行こう!行こう!」
ウキウキしているのは三橋だけではない。他の選手たちも乗り気だ。
「ほいじゃ、さっさと片付けてメシ行くぞ!」
花井がそう言ってみんなにハッパをかけた。片付けを早く終えれば早く夕食にありつけるというこの状況で選手たちは力が甦ってきたようで格段に動きが良くなった。
「ミョウジとしのーかもメシ一緒に行くー?」
田島がマネジ2人にも声を掛けた。
「うん、私も一緒に行くー!」
普段から田島・泉・三橋・浜田と行動をともにしているナマエは男子の中に交じることに全く抵抗がないし、みんなで夕食なんて滅多にないイベントなので当然行くつもりだ。
「しのーかは?」
「うー、行きたい…!…けど、私は早く家に帰って家事手伝いしないとだからやめとく。ごめんね。」
篠岡はそう返事をした。篠岡の家は祖母の介護で母親がとても忙しくしているらしく、篠岡もできる限り家事を手伝っているそうだ。
「そっかー。千代ちゃんは本当に立派だねえ。」
「そんなそんな…ただ家の事情だから別に私がえらいわけじゃないよー」
篠岡はエヘヘッと照れ笑いをした。
「私はお母さんに今日の夕食は要らないって伝えてくるね!」
ナマエの母親はこの合宿中は父母会メンバーの一員として食事や洗濯などの手伝いに来てくれていたし、今もキッチンの片付けをやってくれている。ナマエはキッチンにいる母親の元に向かい、今日はこの後野球部員で食事に行くことになった旨を伝えた。
「そう、わかった。楽しんでおいでね。」
ナマエの母親は快く承諾してくれた。
合宿所の片づけを終えて、これで6日間の夏合宿が終了となった。野球部員たちはみんなで駐輪場へと向かった。そして自転車に乗って遅刻坂を下っていく。
「メシ、どこ行くー?」
田島が自転車に乗りながら周囲に問いかけた。
「近いところ!もう腹減りすぎて耐えらんない!」
水谷がそう言った。
「じゃーやっぱうどん屋じゃね?」
泉がそう言った。
「うどん!」
三橋はうどんと聞いてワクワクが抑えきれない様子だ。
「オレ、ゲソ天乗せるぞー」
「オレも!」
選手たちはとてもハードな練習を丸一日こなしたというのに食事のことを考えると元気が湧いてくるらしい。ナマエはうどんに何の天ぷらを乗せるかという話題で盛り上がっている選手たちがなんだかかわいらしく見えてきてクッと笑った。
「何笑ってんだよー」
泉が自転車を漕ぐスピードを緩めてナマエの隣に並びながらそう言った。
「やー、食べ物の話してるみんなが爛々としてておもしろいなって思ってさー」
「だってあそこのゲソ天超うまいんだよ。ミョウジは何の天ぷら乗せる?」
「んー、どうしよ。定番のエビ天もいいけどかき揚げも好きなんだよね。でもゲソ天がうまいって言われたらゲソ天も気になってきちゃった。」
ナマエが優柔不断を発揮しているとナマエの前を走っている水谷がこちらを振り返った。
「どれにするか悩むよなー!」
水谷はニカッと笑っている。食事会に参加しない篠岡とは校門のところで別れを告げて、残りの野球部員たちでうどん屋へと自転車を走らせた。
「着いたー!いっちばーん!」
田島が両腕を上に伸ばして元気いっぱいに店内に入っていった。そんな田島を三橋が追いかける。水谷も「ヒャッホー!うどーん!」と言いながら店の中に入っていった。
「おい、お前ら、店の中で騒がしくすんな!他の人に迷惑だろ!」
花井がそう言って田島たちを窘めた。まず先に11人分の席を確保してから券売機で食券を購入することになった。
「ミョウジは荷物番をしててくれ。お前の分はオレが持ってくるからさ。何にする?」
花井がナマエに言った。
「じゃー、温かいかけうどんの並サイズ!あとゲソ天追加で!」
「了解」
「はい、これ、お金」
「おう」
ナマエが席で荷物を見張りながら待っているとうどんを手に入れた田島が1番目に席に戻ってきた。田島に続いて三橋、水谷、泉…と野球部のメンバーが続々と戻ってくる。栄口と西広は11人分の水をカップに注いで持ってきてくれた。
「ほらよ、これミョウジの分な」
花井がナマエにうどんとゲソ天が載ったお盆を手渡す。
「花井君、ありがと!」
ナマエは花井からお盆を受け取った。
「ミョウジは結局ゲソ天にしたのか」
ナマエの後ろ側に座っている泉がナマエのお盆を覗き込みながらそう言った。
「泉君が超うまいって言うから気になっちゃった!」
「オレもゲソ天だよ。ここのやつ、マジでうまいから!」
巣山がナマエに話しかけてきた。他の選手たちも「オレはエビ天」とか「オレは豚しゃぶ」と言って自分の選んだメニューをアピールし始めた。ナマエは楽しそうな選手たちを見ていて胸がホカホカするのを感じた。
『こんな風に西浦ーぜたちと一緒に毎日を過ごせるなんて、私、今すごい幸せだなぁ』
この世界にやってくる前、ナマエは兄を失って絶望の毎日を過ごしていた。あの頃はこんな充実した毎日がやってくるなんて夢にも思わなかった。
「花井ー!早くー!」
田島は花井に恒例の"うまそう"を早くやってくれと急かした。
「わーったよ!行くぞ!……うまそう!」
「うまそう!いっただきまーす!」
西浦高校野球部員は一斉にうどんを食べ始めた。丸一日キツイ練習をこなして腹ペコ状態の選手たちはものすごい勢いで特盛のうどんと天ぷらを食べつくす。そして食べ終わってお腹いっぱいになったら今度は眠気がやってきたらしく、まだ食べ終わらないナマエを待ちながら多くの選手たちがウトウトと居眠りを始めてしまった。ナマエはそんな選手たちがかわいくてクスクスと笑った。
「お?笑ってんの?」
しっかり者の花井は起きていて、笑っているナマエに気が付いた。
「うん。みんな、何事も全力で子どもみたいでかわいいなと思ってさ。」
「あー、田島とか特にそうな。天真爛漫って感じ。」
「三橋君もすっかりチームに馴染んだよねぇ。4~5月頃はいつも緊張しててさ、こんな風に健やかな寝顔を見せてくれることなんてなかったのに。」
ナマエは田島の横で居眠りをしている三橋の姿をしげしげと眺めた。
「おお、そーいやそうだな」
「花井君もさー、最初はすごいイキってたよね」
ナマエはニヤッと笑った。
「あ、クソッ、あれはもう忘れてくれよ」
ナマエに初日の出来事をからかわれた花井は顔を赤くした。
「ったく、ミョウジって割といい性格してるよなァ~」
花井はハァ~と深いため息をつきながらそう言った。
「ふっふっふ!それは褒め言葉として受け取っておこう。」
ナマエは不敵な笑みを浮かべた。
「いーや、褒めてねーからなァ!?」
花井のツッコミにナマエは思わずププッと吹き出した。
「ねー、花井って呼び捨てにしてもいい?」
「あー?別にいいよ。ってかむしろなんで阿部と水谷だけ呼び捨てなんかなって思ってた。」
「うーん、なんとなくだけどこの人は呼び捨てにしたいなーって人と君付けしたい人がいるんだよね。花井は前者だなと思ってさ。」
「ふーん。ま、オレは"君"が付いてよーが付いてなかろーがどっちでもいーよ。…あ、食い終わったか?じゃ、明日も朝から練習あるしさっさと帰んぞ。」
「はーい!」
花井とナマエは居眠りをしている選手たちを起こし、食器をできる限りまとめてから食器返却口に返した。居眠りしていた選手たちを笑っていたくせにナマエ自身も食事を終えたら急に眠くなってきて、西浦高校野球部員はみんな眠気で重たい瞼を擦りながら別れを告げてそれぞれ帰宅したのだった。
西浦高校野球部、夏合宿全日程終了。
<END>