※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第40章」


 9月になり、西浦高校は新学期を迎えた。毎年9月第1週は西浦高校の生徒たちは賑やかで忙しい日々を過ごす。なぜなら9月頭の土曜・日曜の2日間で西浦高校の文化祭が開催されるからだ。どのクラスも週末に控えた文化祭の準備に明け暮れていた。

 西浦高校野球部は毎週月曜日が休みなのだが、モモカンは文化祭があることを考慮してくれたようで今週は文化祭1日目の土曜日を休みにしてくれた。その代わりに来週の月曜日は普段通りに練習をこなすことになった。ちなみに西浦高校野球部は8月の最終週に新人戦3回戦を迎え、見事に勝利を収めた。新人戦は3試合勝利すれば秋大のシード権が獲得できる。つまり西浦高校野球部は無事に秋大のシード校になれたということだ。そしてその秋大地区予選の抽選会は今週の金曜日、つまり文化祭の前日に行われる。新人戦を終えて秋大はまだ開催前、つまり今の時期は野球部にとってはちょっとしたインターバルのようなものだった。そういう状況に加えて今はちょうど文化祭準備期間という事情もあって野球部では新学期を迎えてもまだ朝練は再開されていなかった。

 野球部員たちは基本的に学校行事やクラス行事には非協力的であることが多い。特に9組では浜田が野球部員は練習に専念できるようにといつもクラスメイトたちと交渉をしてくれているので、田島・三橋・泉・ナマエの4人はクラス行事には疎かった。しかし、今はナマエは新人戦のデータ収集・分析を全部終えたところで比較的手が空いている。ナマエはたまには学校行事にも参加しようと思い、この1週間は朝は早めに登校してクラスメイト達と一緒に文化祭の準備をすることにした。9組は文化祭では展示を行う。その内容としては校内に投票箱を設置し、"学校内で~な人は誰?(例:Niceメガネの人は誰?、天然な人は誰?)"というようなアンケートを行い、その結果をランキング形式で紙で展示発表するというものだ。
ミョウジさん、手伝ってくれてありがとうね。でも部活はいいの?」
クラスの文化祭実行委員を務める女の子が珍しくクラス行事に参加しているナマエにそう声を掛けてきた。
「うん、新人戦も終わったし、データ解析も全部終わってるし、今は朝練もないし……こんな時くらいは私もできることはやろうと思って。あ、田島君たちは相変わらず夜遅くまで練習やってるから手伝い参加できないと思う。ごめんね。でも彼らの分も私が働くから許して。」
「全然いいよ。浜田君からも"オレが野球部員の分まで働くから野球部のことは許してやって"って頼まれてるんだよね。」
「そうだったのか。浜田君にはいつもお世話になりっぱなしだな、私たち。」
ナマエは『浜田にも今度何らかの形でお礼をしなきゃいけないな』と思った。
「あ、ミョウジ、今オレにお礼しなきゃって思ってたろ?そういうのいいからネ。」
気が付いたら浜田がそばにいた。ナマエたちの会話を聞いていたらしい。
「うわ、浜田君、エスパー!?」
ナマエはそう言って笑った。
「いや、思いっきり顔に書いてあったし!」
浜田はニシシっと笑った。
「いつもおんぶにだっこですみません」
ナマエは浜田にペコッと頭を下げた。
「いいって。オレは野球部の応援することで勇気と感動を貰ってんだから、おあいこだよ。」
「あー、その気持ちはマネジも一緒だわ。選手たちのがんばりを見てると自分も励まされるよね。」
「そうそう、そういうこと!」
浜田はそう言ってまた笑った。
「でもよ、朝練はまだやってないってことだけど、昼もクラス行事手伝ってていいのか?いつもの草刈りは?」
「明日は草刈り行くよ。この1週間は千代ちゃんと毎日交代で草刈りすることにしたんだ。お互いにたまにはクラスの行事もちゃんと手伝わなきゃねっていう話をしたの。まあ、もし雨が降ったらその翌日は2人で草刈りする約束になってるけど幸い今週は天気良いみたいだから大丈夫そう。」
ナマエは浜田にそう事情を説明した。
「へー。ちなみに7組は文化祭何やんの?」
「グリーンティーカフェだってさ。なんと7組の女子たちは文化祭当日は浴衣にエプロンを着て接客するんだってよ!今、みんなで衣装作りがんばってるらしい!」
「そりゃすげーな!でも飲食店ってことは7組は準備かなり大変そうだよな。ないとは思うけど、万が一篠岡さんが衣装作りが間に合わなさそうとかでミョウジがマネジ業務を1人で引き受けなきゃいけないなんて事態になったらそん時は遠慮なく部活優先していいからね。」
「うん、ありがとう!」
ナマエはそう言ってニコッと笑った。

 9月の第1金曜日を迎えた。今日は秋大地区予選の抽選会の日だ。花井と栄口は部活に一旦顔だけを出してから志賀先生と一緒に抽選会会場へと向かった。
「いよいよ秋大開始か」
花井たちを見送った後、ナマエはしみじみとしながらそうつぶやいた。
「緊張する?」
それを聞いていた篠岡がナマエに問いかけた。
「ううん、ワクワクする。阿部の怪我も治ったし、新人戦のデータも埼玉県の強豪校と南部地区の全学校の分は集め終わってるし、もう準備万端だもん。」
「だよね!私もだよ!」
篠岡はそう言ってニコッと笑った。
「そういえば文化祭の準備は順調?衣装できた?」
「うん、できたよー!」
「浴衣にエプロンでしょ。絶対かわいいじゃん!当日一緒に写真撮ろうね!」
「うん!あ、かなりフリルのついたエプロンでぶりぶりしてるけど引かないでね…。」
「引くわけないよ!千代ちゃんはいつ頃お店にいるの?」
「私は明日の午前の当番だよ」
「オッケ!じゃあ文化祭始まったらすぐ向かうわ。」
ナマエはノートにメモを取った。それからいつも通り篠岡と手分けして水撒きとジャグへのドリンク作成を開始した。

 花井と栄口と志賀先生は18時過ぎに裏グラへと帰ってきた。グラウンド整備中だった泉が真っ先に花井に気付いて花井と栄口のもとへと駆け寄っていった。その後ろには巣山もいる。
「どこんなった!?」
泉がそう問いかけると花井はバツが悪そうな顔をした。
「………武蔵野第一」
「いきなり夏のベスト4かよーーっ」
泉は大きな声でそう言った。泉の声で花井の帰還に気付いた他の部員たちも続々と駆け寄ってきた。
「えっ、どこ?」
水谷がそう訊ねた。
「武蔵野第一だって」
花井に代わって巣山が答えた。
「はーっ、さすがのクジ運だな」
泉はため息をつきながら花井に向かってそう言った。花井は「クジ運関係ねーだろ、向こうが入ってきちゃったんだからっ」と言い訳をしている。
「でもシードじゃないんだから新人戦は負けたってコトなんだよ」
栄口がそう言った。
「うん、武蔵野第一は新人戦では3回戦で2-3で大宮寿に負けてるよ」
ナマエは選手たちに補足説明をした。篠岡とナマエは南部地区の強豪校のことは特に警戒していたので武蔵野第一のデータももう頭に入っているのだ。
「そうなんだ。夏のベスト4も元レギュラーがピッチャー1人じゃ厳しいか。」
西広がそう言った。
「つっても新人戦はどこもバタバタしててまだ実力発揮してる感じじゃなかったろ。あんまナメてもよくないと思う。」
花井はそう言って選手たちの気が緩まないように注意した。
「よくやった!もーオレ楽しみでしょーがない!」
田島は目をギラギラと輝かせて喜んでいた。
「バッセン行こーぜ!!」
田島がそう提案するが巣山と沖が「バッセン130までしか出ねーぞ」「左なんか120までだよ」とツッコミを入れる。榛名は左利きの投手な上に速球は時速140キロ台だ。全然足りてない。
「あの、明日の休みなくなったりする?」
ギラギラとやる気に満ちている田島の様子を眺めていた水谷が花井にそう訊ねた。
「なしなし!榛名対策しなくっちゃ!」
田島は両腕でバッテンのポーズを作ってそう言ったが、花井に「いーや、週一で休みは入れなきゃだめだ」と却下されていた。それを聞いてナマエはホッとした。高校生活を野球部に捧げていると決めているナマエではあるが、文化祭は楽しみにしていたのだ。たまにはこういう学校行事にも参加して青春を謳歌したい。だって文化祭なんて学生のうちじゃなきゃ味わうことができない貴重なイベントだ。
「明日はちゃんと休んで、んで明後日から朝練再開しよう」
花井がそう言うと田島はキラッキラの笑顔で「オッケーイ!」と返事をした。そして花井が「朝練全員参加するよな!」と念押しすると他の選手たちは「おおっ」と元気よく返事をした。その中でも三橋の声はよく響いた。
『おっ?三橋がすごい元気だな?』
ナマエが三橋の元気な声に釣られて思わず振り返ると、ちょうど阿部が「対戦うれしーのか」と三橋に声を掛けているところだった。
「だって、阿部君、出れるでしょ。…オ、レ、勝てる!」
三橋は頬を赤くして嬉しそうにそう断言した。
『ひゃ…っ』
ナマエは思わず口元を両手で抑えた。"あなたがいるなら勝てる"なんてそんな超ド級のストレートな信頼の言葉を投手から投げかけられて嬉しくない捕手なんていない。阿部は三橋のその言葉を聞いて顔を真っ赤にして無言で固まっていた。三橋は何も言わない阿部を見て、ハッとして青ざめる。
「頼るんじゃなくて、オレも、がんばる」
三橋はそう言いながら後ずさっていった。どうやら三橋は阿部が嬉しくて黙り込んでいるとは気付いておらず、むしろ自分が無責任なことを言ったから阿部が怒ってると勘違いしたようだった。
『三橋は天然人タラシだな』
ナマエは三橋と阿部のやりとりを見て思わずププッと笑った。
「そういやお前んとこ文化祭何やんの?」
いつものクールな表情に戻った阿部が三橋にそう訊ねた。
「……?知らない。」
三橋はポカーンとした間抜けな顔でそう返事をした。阿部は「ふーん。うちも何やんのか知んねーや。」と言い返す。この2人は本当に良くも悪くも野球のことしか頭にない野球バカだ。
「そういうとこ、キミたちってホントお似合いのバッテリーだよね」
ナマエは呆れた顔で阿部と三橋にそう言い放った。阿部は「どーいう意味かわかんねぇけど、絶対褒めてないだろ」と言いながらナマエをジトッとした目で見た。一方、花井は阿部に向かって「おいおい、知らねーのかよっ!うちは…――」と言いかけて何かを思い出したようでハッとした表情になった。
「そーだ、今日は設営手伝うんだ。な、水谷、今日だけやんだよな!?」
「そうだよ~。ま、お前ら忘れてんならそれでいいと思ったんだけどね。いつもそんなだし。」
水谷はそう言ったが、花井は「イヤ、行こうぜ。応援来てもらったし少しは貢献しねぇと。そろそろ女子の目も怖いし。」と返した。水谷は「だねー」とその意見に同意している。しかし阿部は「オレはいーや。重いもん持ちたくねぇから。テキトーに言っといて。」と言って断った。1人だけ手伝いせずに帰る気だ。
「うっわ、阿部、サイテー!!」
ナマエはそう言った後、サッと花井の後ろに隠れた。阿部の殺人的デコピンの魔の手から逃れるためだ。
「お前はスーパーマイペースだなァ」
花井はギョッとしたような、呆れたような、何とも言えないビミョーな表情をして阿部を見ていた。
「重いもん持たせねーから来い!」
花井にそう言われた阿部は「ええ~」と言いながらもキャプテン花井の命令に従うことにしたようだ。7組メンバーの会話を聞いていた栄口&巣山コンビと西広&沖コンビもこの後クラスの手伝いに行くことにしたらしい。
「なー、ミョウジ。うちは何やってんだ?」
田島がナマエに訊ねた。隣に立っている泉もクリクリのおめめをナマエに向けている。
「キミたちも知らないの!?うちは展示をやるんだよ。ちなみにミスターコン&ミスコンの投票所も兼ねてる。」
ナマエは9組男子3人(田島・三橋・泉)に向かってそう説明した。
「へー、そうなんか」
泉がそう言った。
「でも、手伝いはいいって浜田から言われたよな?」
田島が泉にそう訊ねた。
「おう、そうだな」
「んー。まあ、野球部は手伝えないって言ってあるから別に無理に来なくてもいいよ。でも私はこの後手伝いに行くつもりだけど。」
ナマエはそう言った。
ミョウジが行くならオレらも行くか。筋トレがわりだ!」
「そーだな!」
田島と泉は結局は手伝いに来てくれる気になったらしい。となれば当然三橋も来る。
「じゃあ、一緒に行こう。早く着替えて!」
ナマエがそう言うと田島たちは「おう!」と言って着替えのためにベンチに向かって走り出した。

 ナマエたち9組の野球部員が教室に到着するともう既にほとんどの装飾が終わっていた。
「おおっ、すごい!こんな風になったんだ!」
ナマエはクラス中を見渡しながらそう言った。
「あっ、ミョウジ…だけじゃなくてお前らも来てくれたんか!」
ナマエの声で9組野球部4人の到着に気が付いた浜田が駆け寄ってきた。
「おう!なんでもやるよー。」
田島はそう言った。
「つっても、もうほとんど出来上がってるな」
泉はそう言いながら展示をしげしげと眺めている。
「じゃ、掃除すっか!」
「おう」
田島と泉がそんな会話を交わしていると文化祭実行委員の女の子が「あれ、野球部男子だ!」と言った。
「来るのが遅くなってごめんね!もう終わりかけだね…。」
ナマエが文化祭実行委員の女の子にそう言うと、「ううん、来てくれてありがとー!」と言って笑った。
「でも三橋君はいいよ!カッターとか針金とか危ないから!」
文化祭実行委員の女の子は三橋に向かってそう言った。
「気ィ使ってくれてありがとう」
ナマエは文化祭実行委員の女の子にお礼を言った。
「ううん、事前に浜田君からそう説明されててさ。私は野球の事よく知らないけど、投手は手が大事なんだって?」
「そうなのー。うちって選手10人だけだから公式戦で戦力になる投手って三橋君しかいないんだ。」
ナマエが文化祭実行委員の女の子とそんな会話をしていると泉は何とも言えない微妙な顔をしていた。
「え、どしたの、その顔」
それに気が付いたナマエが泉に声を掛ける。
「いや、女子に手の心配をされるってどーなの…とちょっと思ったダケ。そりゃ三橋に怪我されたら困るけどさっ!」
「ああ。そう言われると男子高校生なのにクラスの女子からお姫様待遇されてるのちょっとウケるね!」
ナマエはクスクスッと笑った。
「笑ってるお前が三橋のことかわいがってる女子ランキングNo.1だぞ。そうだ、今からそのランキング表作ろうぜ!」
泉はそんな冗談を言ってニヤリと笑った。
「いらんて!そんなランキング需要ないわ!」
ナマエは泉にツッコミをいれつつ、お腹を抱えて笑った。
「おーい、お前らの分もホウキとチリトリ持ってきたぞ~!」
田島がそう言いながら登場した。
「おお、ありがと。私がチリトリやるわ。泉君はホウキね。」
「おう」
それから9組野球部の4人はクラスの掃き掃除やごみ捨てをしてクラスの設営のお手伝いをした。20時には全ての装飾が出来上がり、掃除・片付けも終わった。これで無事設営完了だ。それからナマエは念のため文化祭実行委員の女の子に明日の当番について訊ねてみた。どうやら9組では特に当番はないらしい。というか正確に言うとただの展示なので一応見張りの人は設けるがそれは文化祭実行委員のメンバーだけで足りるので他のクラスメイトたちは当日は何もしなくていいとのことだった。
「野球部だから免除してくれてるとかそういうわけじゃないんだよね?」
ナマエは念のためそう訊いてみた。
「うん、違うよ」
「そっか。じゃあ、明日はよろしくお願いします。」
ナマエは文化祭実行委員の女の子に頭を下げた。それから田島たちと一緒に帰宅した。

明日はいよいよ文化祭だ!

<END>