※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定は今のところないです※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第54章」


 試験前休み4日目、今日は土曜日なので午前中で授業は終わりだ。そして本日も阿部・三橋・田島の3人は午後から田島家で自主練をするらしい。だが、ナマエはさすがにそろそろ本腰入れて勉強しておこうと思い、今日は田島家へ行くのはやめて家の近くの市立図書館で勉強することにした。選手たちは甲子園優勝すればプロ野球球団や野球に力を入れている大学からのスカウトを得られる可能性が高いし、万が一オファーがなくてもスポーツ推薦という手段だってある。でもマネジのナマエはそういうものは得られそうにない。自分の学力で進学先を見つけなければならないのだ。甲子園優勝を目指しているチームのマネジをたった2人で務めるのは大変なことだが、だからといって学業も疎かにはしていられない。それがマネジだ。

 ナマエはこの世界では将来どういう道に進もうか…と考えてみた。前の世界のナマエはスポーツとは無縁の人生を歩んでいたが、この世界にやってきて野球部のマネジになったナマエは今や野球漬けの日々を送っている。スポーツの楽しさや奥深さを知った今、将来はこのマネジ経験を活かした仕事がしたいと思うようになっていた。
『おお振りの作者の人はスポーツ心理学を専攻していたって話を聞いたことがある。それも楽しそうだ。モモカンを見習って看護の専門学校に行くのもいいなと思う。あとはスポーツ科学にも興味があるし、私は英語が得意だからそれを活かして海外のプロ野球球団の通訳とかも魅力的だ。』
現時点のナマエにはまだ選択肢は1つには決められない。それならば今ナマエがやるべきことは今後やりたいことが定まった時にその道を選べないなんてことにならないように全教科しっかりがんばることだ。そう思い立ったナマエはやる気に満ちてきて図書館で一生懸命試験勉強に励んだ。

 熱心に試験勉強をしていたナマエは「蛍の光」が館内に流れ始めたことでもうまもなく図書館の閉館時間になろうとしていることに気が付いた。
『もうこんな時間か!』
ナマエは机に出してある勉強道具をカバンにしまい始めた。そして帰り支度を終えたら椅子から立ち上がる。図書館の出入口に向かっていると後ろから「あ!」という声が聞こえてきた。その声につられてナマエが振り返るとそこには花井が立っていた。
「あれ、花井だ!」
「よお」
花井はそう言って右手を上げてナマエにあいさつをした。
「なんでこんなところにいるの?花井の家ってもうちょっと遠いよね?」
ナマエはそう言いながら花井の隣に並んだ。花井とナマエは一緒に歩き始めた。
「うちの近くの図書館さ、今日・明日の2日間臨時休館なんだよ」
「え、そうなんだ。試験前なのに運が悪いね。さすが花井だ~。」
「ええ、オレのせいかよ!」
花井はそう言って青ざめた。そんな花井を見てナマエはケラケラと笑った。
「じゃあ、明日もここで勉強する予定?」
「そーだな。もしくは近くのファミレスでも行くか、それとも塾の自習室でも使うか、どーっすか迷ってる。」
「え、花井って塾行ってんの?」
ナマエは驚いて目を見開いた。
「おう、最近通い始めたんだよ」
「え、でもうちら毎日部活あるじゃん?通う時間なくない?」
「部活終わりの遅い時間でもやってるとこ見つけたんだ。ビデオ講義だから融通が利くしな。」
「へー!それでも部活終わりに塾なんて体力すごいね。さすが榛名さんからホームランを打った男!」
ナマエがそう言うと花井は頬を赤くしながら「それは関係ねーだろ」と言った。
ミョウジは今日は田島んち行かなかったのか?」
「うん。さすがにそろそろ勉強しとこうと思って。だってさー、選手のキミたちは甲子園優勝したらきっとスカウトがあるじゃん?でもマネジにはそんなん普通来ないでしょ?じゃあ、私は部活忙しくても勉学もちゃんとしておかないとまずいよねって気が付いたんだ。」
「そうか…。なんかワリィな。」
花井はバツが悪そうな顔でそう言った。
「いや、別に花井が謝ることじゃないよ。でもさ、そう考えたら花井は塾行く必要なくない?甲子園優勝したら絶対スカウトくるっしょ。だって主将だよ?」
「そりゃスカウトがあったらそれが一番いいけどよ、やっぱ万が一のことも考えて保険は掛けとかなきゃなんねぇよ。オレ、妹2人いるから浪人してる経済的余裕ねーし。」
「そっか。双子だもんね。2人同時に私立大学に進学とかしたら学費だけで年に200万とか飛んでいくよね。」
「そういうこった」
ここで花井とナマエは駐輪所から各々の自転車を取り出した。
ミョウジはこっから家近いんだっけ?」
「うん、チャリで10分くらい」
「明日もここで勉強すんの?」
「そのつもり」
「じゃ、明日はオレと一緒に勉強しねえ?ここのティーン専用学習室なら会話オッケーだったろ。」
「おお、いいよ!花井と一緒だと勉強集中できそう。」
「他のヤツらだと集中できねーのか?」
「うーん、他の人たちと一緒に勉強会すると教える側になることが多いから自分のペースでは勉強できないんだよね」
ナマエはそう言って頭をポリポリ掻いた。
「それはわかるぞ」
花井はそう言って苦笑した。
「その点、花井も私も得意科目は英語だし、苦手科目は古典だし、一方的に教えるとかはそんなないはず!」
ナマエはそう言ってアハハッと笑った。
「そうか、オレら得意・不得意が割と被ってんだな。でもワリィんだけど余裕があったら生物教えてほしい。」
「オッケ、じゃあ私は代わりに歴史教えてほしい。どうよ?」
「オレも別に歴史得意じゃねーけど、そんなんでもいいか?」
「いいよ。じゃあ、明日はここに朝9時に集合でいい?」
「おお。昼メシはどーする?」
「近くのファミレスとかファストフードで良くない?」
「そうだな」
そう言った花井は自転車のサドルに腰かけた。
「オレ、こっちだから。もう行くわ。また明日な!」
「気を付けてね!」
ナマエは自転車でピューッと駆けていく花井に向かって手を振った。

「ただいまー!」
家に帰宅したナマエがそう言ってあいさつをすると母親が出迎えてくれた。
ナマエちゃん、お父さんがスマホ買ってきてくれたよ」
母親はウキウキした顔でそう言った。
「え、マジで!?」
ナマエは急いでリビングルームに向かった。そこでは父親がスマホ2台を片手にデスクトップパソコンを操作していた。
「お父さん!スマホ買ってきてくれたの!?」
ナマエがそう話しかけると父親がこちらを振り向いた。
「あー、おかえり。買ってきたよ。ナマエの分はそこに置いといた。」
そういって父親はダイニングテーブルのナマエの席を指さした。そこには四角い箱が置かれていた。ナマエはバッと箱に飛びついた。
「やったー!iPhoneだー!」
ナマエはまさかおお振りの世界でiPhoneを手に入れられる日がこんなに早くやって来るとは思っていなかったので感激と喜びでぴょんぴょんと飛び跳ねた。
『この世界に来てからもう半年以上……久々のスマホ!久々のiPhone!』
ナマエはさっそく箱を開けてiPhoneを取り出した。電源を入れる。"Hello"とか"こんにちは"とか色んな言語のあいさつが画面に表示された。ナマエは画面の案内に従って初期設定を行った。
ナマエ、データ移行はパソコンを使ってできるらしいんだ。やり方の説明書を貰ってきたけど、今はお父さんが作業中だからちょっと待ってくれるか。」
父親がそう言った。
「んーん!私、自分のノートパソコンでやり方調べながらできると思う!」
「そうか。さすが若いと適応能力が高いな。あとついでに家にWi-Fiを導入することにしたから設定ができたらWi-Fi接続方法を教えるよ。」
「マジで?最高です!ありがとうございます!」
ナマエは父親にお礼を言ってから自分の部屋へと向かった。それからノートパソコンを取り出してガラケーからiPhoneへのデータ移行のやり方を調べ、ガラケーの電話帳の情報や写真をiPhoneに移行した。その後はiPhoneにメールの設定をしたり、LINEアプリやGoogleマップアプリのインストールをしたりしてナマエは着々とiPhoneの利用設定を済ませたのだった。

 翌日の日曜日、花井とナマエは昨日と同じ市立図書館の出入り口で待ち合わせをした。そして図書館内にあるティーン専用学習室へ向かう。ここは図書館の中だけれど声を出して教え合ったりすることも許可されているエリアだ。
「じゃー、まずは生物からやろうか。どの辺がわかんないの?」
ナマエはそう言った。
「内容わかんねぇっていうよりかはどの辺が重要なポイントなのかあんまピンと来ねぇって感じ」
花井はそう言った。
「あー、じゃあさ、花井のノートにマーカーで線引かせてもらってもいい?試験に出そうな単語とか内容にしるしをつける。あと教科書にも付箋とかつけていい?」
「マジ?頼む!」
そう言って花井はナマエに教科書とノートを手渡した。
ミョウジは歴史教えてほしいんだっけ?何が知りてえの?」
花井がナマエに訊ねた。
「うーん、覚え方?どんな工夫をしたらスッと頭に入ってくるかな~って。」
「それはオレも割と悩んでる。あ、そういやオレが塾でもらったプリントに今回のテスト範囲のところの時系列を表形式にまとめたやつがあったはずだ。それ見りゃ多少は覚えやすくなるかもしんねえ。ちょっとコピー機んとこ行ってくる。」
花井はそう言って席を立った。花井がコピー機のところに行っている間にナマエは花井の生物のノートにどんどんマーカーで線を引いていく。補足説明がしたいところには正方形の付箋を貼って説明を書き加えた。その作業の途中で花井が帰ってきた。
「オラよ、これが今回のテスト範囲の資料な」
「わ、ありがとう。でもいいの?花井がお金払って通ってる塾の資料を横流ししてもらっちゃうのってタダ乗りじゃない?」
「これくらい別にいいよ。つかミョウジは今オレのために生物のノート・教科書に色々やってくれててそれのお返しなんだからタダ乗りじゃねーし。」
「そっか。じゃあ、ありがたく頂戴します!」
ナマエはそう言って花井から歴史のプリントを受け取った。
「私の作業はもうちょっと時間かかるから、花井は他の教科勉強してて」
「了解」
花井は古典の勉強を始めたようだ。ナマエは引き続き花井の生物のノートにマーカーを引いたり付箋で補足説明を書いたりする作業を続けた。それが終わったら今度は教科書を開いて重要な部分に小型の長方形の付箋を貼っていった。
「でーきたっ!」
無事に作業を終えたナマエは花井に生物の教科書とノートを差し出した。
「サンキュ!」
花井はそう言いながら教科書とノートを受け取った。その後はナマエは花井から貰った歴史のプリントを見ながらその内容を頭に叩き込んでいった。花井は古典の勉強は中断してさっそく生物の勉強を始めたようだ。
「付箋に説明まで書いてくれてんのか。スッゲー助かるよ。わかりやすい。」
花井が生物のノートを見ながらそう言った。
「こっちも、この歴史のプリントめっちゃわかりやすいよ。塾ってすごいんだね。私も通おうかな。」
「もしオレが通ってるとこに興味あんなら紹介すんぜ。紹介コードがあると入会金の割引が受けられるんだよ。それにオレの方も紹介した相手が入会するとその月の会費が少し安くなるんだ。」
「へー!じゃあ、もし本当に塾入るってなった時はまた相談するね!」
「おう」
それからしばらくの間、花井とナマエは黙々と自習を進めた。

 12時が近づいてくるとナマエはお腹が減ってきた。ナマエはチラッと花井をみた。花井はすぐにナマエの視線に気が付いて顔を上げた。
「腹減ったよな」
花井がそう言った。
「わあ、以心伝心だ!」
「いや、普通にそういう時間だからだよ」
花井は呆れ顔でそう言った。
「じゃあ、一旦図書館出て腹ごしらえしますか!」
ナマエはそう言って机の上の勉強道具を片付け始めた。
「どこ行くよ?この辺って飲食店何があんだ?」
花井は教科書とノートをカバンにしまいながらそう言った。
「近くにデニーズがあるよ。そこでもいい?」
「おう、いいぜ」
ナマエたちは席から立ち上がり、図書館を出てデニーズに向かった。店に到着し、席に着席するとナマエは昨日手に入れたばかりのスマホを取り出してタイマーを1分にセットした。そしてメニューを花井に手渡す。
「はい、じゃあ1分で注文決めるよー!よーい、スタート!」
西浦高校野球部では状況把握能力と決断力を高めるための訓練で飲食店などでメニューを決める際には1分以内にするようにとの指導がされているのだ。花井もナマエもバッとメニューを開いて、集中してメニューを見た。1分後、スマホのアラームが鳴った。
「決まった?」
「おう」
「じゃ、店員さん呼びまーす。」
ナマエは店員呼び出しボタンを押した。すぐに店員が注文を訊きにやってきた。
「花井からどうぞ」
「オレはサーロインステーキのおろしソースのライス大盛り…とチキンサラダ。あとドリンクバーも付けてください。」
花井がそう言うと店員は「はい、承知しました」と返事をした。
「私はエビとアボカドのパスタで。私もドリンクバー付けてください。以上です。」
ナマエがそう言うと店員は「かしこまりました」と言ってお辞儀をしてから去っていった。店員が去ったら花井とナマエはさっそくドリンクバーに飲み物を取りに行った。再度席に着席すると花井が口を開いた。
ミョウジ、スマホに変えたのか?この間までガラケーだったよな?」
そう言われたナマエはニコッと満面の笑みを浮かべた。
「実は…昨日の夜からスマホデビューしましたー!!」
ナマエはそう言いながら手に入れたばかりのスマホを花井に掲げてみせた。
「おー、よかったな」
花井はそう言ってフッと笑った。
「ねえ、花井ももうスマホだったよね?LINEやってる?」
「おう、やってるよ。フレンドなろうぜ。あとスマホ持ってる野球部のLINEグループ作ってあるからそっちにも招待するわ。」
「そんなの作ってたんか!いつの間に!」
ナマエはそう言いながら自分のLINEのQRコードを花井に見せた。花井はそれを自分のスマホで読み込む。
「フレンド追加したぞ。今スタンプ送る。」
「あ、きたきた!ブ…ッ、花井のLINEのアイコン、顔やばくない?」
花井のアイコンは加工アプリを使って異様に目がデカくなってお肌がツルツルになった花井の顔写真だった。ナマエは「アハハハ…ッ!」とお腹を抱えて笑った。花井はニッと口角を吊り上げながら「それ、いいだろ?妹がやってくれたんだよ。」と言った。
「意外!花井ってこういうギャグセンスあったんだ…!」
ナマエはまだ笑いが収まらなくて肩を震わせながらそう言った。
ミョウジはLINEのアイコン設定しねーの?」
「するつもりだけど、何の画像にしようかまだ迷ってるんだよね」
「オレが顔写真撮ってやろうか?」
「いやいや、私は自分の顔載せるのは嫌だよ!なんかいい画像ないかな~。」
「じゃ、好きなもんの写真でいいんじゃね?」
「好きなものか~」
ナマエはしばしの間考え込んだ。
『私の好きなもの…そりゃおお振りだよ。西浦高校野球部だよ。今の私にはそれが全てじゃん?でもそれを画像にするってどういう…?』
ナマエがそんなことを考えながらスマホの画像アプリを漁っていると西浦高校野球部の帽子の写真が見つかった。4月に初めて帽子を貰った時に嬉しくて撮った写真だ。
『これにしよう!』
ナマエはさっそくその写真をLINEのアイコンに設定した。
「できた!」
ナマエがそう言うと花井は「どれどれ…」と自分のスマホを開いてナマエのLINEのアイコンを確認した。
「ああ、帽子か。いいじゃん。」
花井はそう言って爽やかな笑顔を見せた。そこに店員が出来上がった料理を運んできた。花井とナマエは恒例の"うまそう"の儀式をやってから昼食を食べ始めた。

 ナマエより先に昼食を食べ終わった花井は「ドリンク取ってくる」と言いながら立ち上がった。
ミョウジは?何か取ってくるか?」
「お、じゃあ、ウーロン茶お願いしてもいい?」
ナマエがそう言うと花井は「オッケー」と答えてドリンクバーへと向かった。そしてドリンクを持って戻ってきた花井はナマエにグラスを渡しながら「てかスマホケース着けた方がいいと思うぞ」と言った。
「うん、そうだね!ケースほしい。それに液晶フィルムも買わないと。」
「この後、図書館に戻る前にショッピングモール寄ろうぜ」
花井はそう言った。
「え、付き合ってくれるの?」
「おお、もちろん」
「ありがとー!」
ナマエはニカッと笑った。

食事を終えた2人は会計を済ませてデニーズを出た。そして近くのショッピングモール内にある家電量販店に寄った。スマホアクセサリー売り場に到着すると実に様々なスマホケースが置いてあった。
「iPhoneのアクセサリーはこっちだぞ」
花井がナマエを呼んだ。
「おー、どうしよっかな~」
ナマエはずらっと並んでいる様々なタイプのiPhoneケースを見て迷いに迷った。
「花井はどんなの着けてたっけ?」
「オレはシンプルなクリアケースだよ。でも女子はもっとかわいいのが好きなんじゃねーの?こういうのとかさ。」
花井はそう言いながらキャラクターのイラストがデカデカと描かれたケースを手に取った。
「たしかにそういうのもかわいくていいね。でも私は落として画面割るのが怖いから手帳型がいいかなと思ってる。あと落下防止のためストラップ付きがいいな。首から下げるか、手首に引っかけたい。」
「なんかスゲーミョウジっぽいな。そういう落下対策をしっかりしてるところ。」
花井はそう言ってクッと笑った。
「あとICカードを入れられるポケットも欲しい」
ナマエがそう言うと花井はブブッと吹き出した。
「なんで笑うのさ」
「いや、だってなんかもうめっちゃ"ミョウジ"って感じすんだもん。実用性重視なところが解釈一致。」
花井がそう言ってずっと笑っているのでナマエはちょっと顔が赤くなった。決して貶されているわけじゃないということはわかっているのだが、なんか全部見透かされちゃってる感じがして恥ずかしい。
「そんだけ条件決まってんならもうかなり選択肢は限られただろ」
花井はそう言いながらナマエの条件に当てはまるiPhoneケースを探して手に取っていった。
「この辺じゃねーか?」
そう言って花井は手に持っているいくつかのiPhoneケースをナマエに見せてきた。ナマエはその中から気に入ったケースを1つ選んだ。
「これにする!ありがと、花井!」
「おー。見つかってよかったな。」
それからナマエは液晶フィルムも手に取ってレジへと向かった。会計を済ませた後は再度図書館に戻った。さて午後の勉強開始…の前にナマエはまず今買ってきたばかりの液晶フィルムとスマホケースを開封した。
「花井って手先器用そうだよね」
「え?ああ、まあ、不器用ではないと思うぞ。」
花井はそう言いつつも"いきなりなんだ?"と言いたげな顔をしている。ナマエは花井に自分のスマホと液晶フィルムを差し出した。
「お願いします」
ナマエはそう言いながら頭を下げた。
「ええっ、オレが貼んのかよっ」
花井は面食らっていた。
「花井って几帳面だし、私よりも上手に貼れると思うの!」
ナマエはそう言いながら花井に向かってウィンクをした。花井は最初は「ハァー」っと深いため息をついたものの、「しゃーねえな」と言いながら付属されているクリーニングクロスでナマエのスマホ画面を拭き始めた。そしてホコリ除去シールで丁寧に画面のホコリを取っていく。最後は慎重にゆっくりと液晶フィルムをナマエのスマホに貼っていった。
「オラ、できたぞ」
花井が返してくれたスマホ画面を見るとホコリや気泡が一切なく、向きや位置も完璧な状態で液晶フィルムが貼られていた。
「キャー、さすがはキャプテン様!最高です!ありがとうございます!」
ナマエはそう言って花井の背中をバシバシッと叩いた。花井は「ったくよー」と言いながらも満更でもなさそうにしている。花井に液晶フィルムを貼ってもらった後はスマホケースを装着した。これで完成だ。
「できたか?じゃ、そろそろ午後の勉強始めんぞ。」
「はーい」
その後は花井とナマエは図書館の閉館時間になるまで真面目に黙々と勉強に励んだ。閉館時間を知らせる音楽「蛍の光」が館内に流れ始めたところで2人は本日の勉強はこれで終了することにして片付けを始めた。
「おし、帰るか」
「うん」
図書館を出て駐輪場から自転車を取り出した花井とナマエは「じゃ、また明日学校でな」「うん、気を付けて帰ってね」というやりとりを経て、それぞれ帰途に就いたのだった。

試験前休み5日目、終了。

<END>