※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定はな…かったのですが徐々に恋愛要素出てきてます※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第71章」


 1月上旬、西浦高校では3学期が始まった。これまで学校のある日は基本的に毎日朝練を実施していた西浦高校野球部だが当面の間は朝練は中止になった。理由は冬の時期は日の出が遅いからだ。1月上旬の今は朝7時頃になるまで外は明るくならない。7時から朝練を開始してもアップとダウンの時間を考えたらろくに練習する時間は残されていない。そんなわけで日が伸びる3月頃までは朝練はしないことになったのだ。

 朝練がないのでナマエはこれまでよりも遅めに起床し、自転車に乗って西浦の校門までやってきた。朝のこの時間帯の遅刻坂は登校する生徒がいっぱいいる。人が多いのでナマエは自転車から降りて引いて歩くことにした。そこで目の前に篠岡が歩いていることに気が付いた。
「千代ちゃんだー!おはよう!」
ナマエはそう言って篠岡のもとへと駆け寄った。
「あ、ナマエちゃん、おはよう!」
篠岡はそう言ってニコッと笑った。「今日も寒いねー」なんて当たり障りのない会話をしていると後ろから「千代!…とミョウジさん!」と声を掛けられた。振り返ると夏大でチアガールをやってくれた友井と小川が立っていた。
「あけおめ!今年もよろしく!」
小川が篠岡とナマエにそう言った。
「あけおめことよろですー!」
ナマエはそう返事をした。
「おー、よろしく!」
続けて篠岡が挨拶を返す。
「千代、これあげる。ミョウジさんもどうぞ。」
小川はそう言うと1粒のチョコを篠岡とナマエに手渡してくれた。ナマエはお礼を言って受け取った。
「お、ありがとー。でも急にどしたの?」
篠岡はチョコを受け取りながらそう訊ねた。小川曰くもう巷ではバレンタインモードに入ったらしく、チョコがたくさん売られているという。
「つい買っちゃうよねー」
友井はそう言った。篠岡とナマエは「あー」「気持ちはわかる」と返答した。
「2人は野球部に配るの?」
小川がそう訊ねた。
「いや、私は配んないよ。ナマエちゃんは?」
篠岡がそう言った。
「千代ちゃんが配らないなら私もやめようかな」
ナマエがそう言うと友井は「えーなんで?絶対期待されてるでしょー。」と疑問を呈した。
「ん~、してないと思うよ」
篠岡が答える。
「してないようでもらえないとガッカリすんのがバレンタインじゃん」
友井はそう言った。すると背後から「ほんっとそう!」という声が聞こえてきた。振り返ると水谷が立っていた。
「だからもうくれないことで決めて!」
「え、そうなの?」
「文貴、どーしたの?」
篠岡とナマエが水谷の迫力に少し驚きつつも事情を訊ねると水谷は「バレンタインデーは男にとってツラい日なんだ」と力説した。物心ついてからというものバレンタインデーは1日中ソワソワするし貰えないと母親と姉から憐みの視線を向けられるし最終的にその2人に同情チョコを貰って食べるのが屈辱なんだそうだ。
「もうオレたちは傷付きたくないんだ。だから女の人は男にチョコ配っちゃダメ!ご協力お願いします。」
水谷はキッパリとそう宣言した。女子4人はその迫力に負けて「う…、はい」「善処します…」と答えるしかなかった。水谷は「あざっす!」と言ってから先を歩いていった。
「水谷君どうしたのかな?」
友井はいつもの温厚な水谷とはちょっと違った様子に困惑気味だ。
「うちの部、この間恋愛禁止にしたんだけどそのせいじゃないよねェ?」
篠岡がそう言うと小川が「え、禁止なの!?」と驚愕した。
「それってつまり…―――」
小川はそう言いかけた。
「――…誰も千代とミョウジさんに手を出すなっておふれだよね?」
友井が小川の言いかけた言葉を引き取った。
ナマエは内心『いや、もともとは花井にモモカンへ手を出させないためのもんだったと思うんだけどね』と思ったがそれを話すわけにはいかないので黙っておいた。
「いやぁ、むしろマネジ側が誰にも手を出してはいけないってことかなーと。部内だけの話じゃないしね。」
篠岡はそう答えながら苦笑した。
「え、そうか、そういう解釈もできるのか」
ナマエはそう言った。ナマエにとって篠岡の解釈は目から鱗だった。
「えっと、千代は手出したい人いんだっけ?」
小川はそう言った。
「畏れ多くて、みんなあまりにも一生懸命だから…。それにあんまり近すぎるとねー、なんというか中学生か?小学生か?っていう気分になるっていうかねー。」
篠岡はそう言った。友井は「そうなんだ」と言って苦笑している。ナマエは篠岡には実は野球部内に好きな人がいることを知っているのでその話を聞きながら『千代ちゃんって誤魔化すの上手いなー』と感心していた。ナマエのその目線に気付いた篠岡はナマエに向かって意味ありげにニコッと笑った。
ミョウジさんは手出したい人いないの?」
友井がナマエに訊ねてきた。
「んー…」
ナマエはそう言いながら元旦に泉とデートしたことを思い出していた。
『あれは私が手を出した?いや、誘ってきたのは向こうだし出されたと言うべき?』
ナマエがそんなことを考えて黙り込むと友井は驚いた表情になった。
「え、いるの!?」
友井がそう言うと小川は「え、誰?誰?」と話に食いついてきた。
「いやいやいや…、ちょっと考えてみただけだよ。今のところはまだいないし、恋愛禁止だし。」
ナマエはそう言って話を誤魔化した。

 7組の教室前に着くとナマエは篠岡・友井・小川には別れを告げて9組へと向かった。既に到着している浜田を見つけたナマエは「あけおめー!」と声を掛けた。
「おお、ミョウジ!今年もよろしくな!」
浜田はそう言ってニカッと笑った。今日は始業式の日なので授業はない。最初にロングホームルームを受けた後、体育館へ移動して始業式典へ出席する。式典が終わったらクラス全員で掃除をし、最後に締めのホームルームがある。それで本日の学校は終わりだ。午後からは部活があるのでナマエはいつも通り9組の野球部メンバーと昼食を食べてから7組の篠岡を迎えに行った。篠岡は今日は花井・阿部・水谷と一緒に昼食を食べたらしい。いつも昼食をともにしている友人たちは今日は部活はないので先に帰ったそうだ。
「千代ちゃんも男子たちとかなり打ち解けたよね。よかった!」
ナマエはそう言った。篠岡は「うん!」と明るく笑った。夏頃の篠岡は選手たちとの間にまだ距離がある感じがしたし、ナマエはその原因は自分にあると思っていた。ナマエがこの世界にやって来てしまったから本来はもっと選手たちと仲良くなっていたはずの篠岡がそうじゃなくなってしまったという罪の意識があったのだ。なので今日篠岡が花井たちと昼食を食べたと聞いてナマエは一安心した。

 午後の練習が始まると篠岡とナマエはいつも通り分担して水撒きとジャグのドリンク作成を行った。今日はナマエがドリンク作成担当だ。ナマエは数学準備室でスポドリを作成してから裏グラに戻った。篠岡はベンチでボール磨きをしていた。
「私もやるよ」
ナマエはそう言って篠岡の隣に座った。
「ありがと。…ところで朝の話のことでちょっと訊いてもいい?」
篠岡はおずおずと話しかけてきた。
「朝?バレンタインの話?」
ナマエはそう訊ねた。
「ううん、その後の話」
「その後って…恋愛禁止の話かな?」
「うん。具体的には…手を出したい人いるのかって話。」
篠岡はそう言いながらチラッとナマエの顔を見た。
「あー…、気になってしまいました?」
ナマエはそう言って苦笑した。
「うん。あの時の沈黙って一体どういうことなのかな…って思って。」
「えっとねー…」
ナマエは言葉に詰まった。泉がナマエのことを好きだということを勝手に篠岡にバラすのはマズい。黙っておくべきだろう。でもそれを伏せたまま一体どこまで説明できるのだろうか。泉は引退までにナマエを落とすと宣言したこと、そして宣言通り泉からデートに誘われたこと、実際に元旦に映画を一緒に観たこと、今のナマエは少なからず泉に惹かれ始めているということ、でもまだ恋に落ちたと断言できるレベルにはいないこと…色々と状況が複雑だ。
「もしかしてホントに手を出したい人できた?」
篠岡はそう言いながらまっすぐにナマエの顔を見つめている。
「いや、まだその段階までは行ってない」
ナマエがそう言うと篠岡はハッと息を呑んだ。
「え、でも、じゃあちょっといいなって思うような人はできたんだ?」
「うーん…、そうなのかなァ。そうとも言うかも。ちょっと状況が複雑でして…勝手に話せないこともあるしね。」
ナマエはそう言って再び苦笑した。
「そっか。そうなんだー…。」
篠岡はそう言いながら感慨深そうにしている。
「ごめんね、ちゃんと話せなくて」
「ううん、全然いいよ!むしろこっちが深堀りしてごめんね?」
「いやいや、全然大丈夫。私も前に千代ちゃんに"好きな人いるよね?"って訊いちゃったことあるしね。」
「それは全然気にしないで。……ね、前にした約束はまだ覚えてるよね?」
篠岡はそう言ってピッと凛々しい表情をナマエに向けた。
「もちろん覚えてるよ。誰が誰を好きでもお互いに遠慮はしないってやつでしょ?」
「うん。ナマエちゃんが誰に惹かれてるのかは私にはピンと来てないんだけど、それが誰であっても私に遠慮はしないでね。私もしないから。」
「うん、わかってるよ、相棒!」
そう言ってナマエはニッと笑った。
「相棒か!いいね、それ。うん、ナマエちゃんは私の相棒だよ!」
篠岡はアハハッと笑った。

 ナマエが数学準備室で2度目のドリンク作成をしてから裏グラに帰ってくると篠岡がナマエのもとに駆け寄ってきた。
「どーした?」
「情報連携しようと思って。さっき阿部君から見学したい神奈川の高校の一覧を貰ったよ。グループLINEにメッセージが来てるからナマエちゃんも見れるよ。私学と公立で2つずつ合計4校を回りたいらしいの。知りたいのは練習内容、スケジュール、食事、ウェイトメニュー、メントレ、それからデータの活用方法だって。で、マネジの方でアポを取っといてくれって頼まれた。」
「そっか。自分たちでアポ取りもしなきゃいけないんだもんね。ちょっと緊張するねっ!」
ナマエがそう言うと篠岡も「だねーっ!」と言って笑った。
「じゃ、片方が公立校で、もう片方が私立校に連絡入れようか。どっちやりたいとかある?」
ナマエはそう訊ねた。
「どっちでもいいよ。どちらにしても緊張するし。」
「じゃ、私が公立やるね。千代ちゃんは私立をお願い。」
「了解!さっそく電話掛けちゃおう。」
篠岡とナマエは一旦裏グラの外に出て、比較的静かな場所に移動してから阿部の作ったリストに従って神奈川の高校に電話を掛けた。
「あ、私は埼玉県立西浦高等学校の野球部にてマネージャーをしている者でミョウジナマエと申します。はじめまして。御校の野球部の顧問の先生、または監督とお話をさせていただきたいのですが今お時間よろしいでしょうか。あ、はい、お願いいたします…――」
こうしてナマエは無事に神奈川県立逗子萬翠高等学校と神奈川県立松ヶ丘高等学校の2校に練習見学の約束を取り付けることができた。篠岡も私立久良高等学校と私立桜雲高等学校から許可を貰えたそうだ。
「あー緊張したよぅ」
篠岡はそう言ってフゥーっとため息をついた。
「全部希望通りになってよかったよね」
ナマエはそう言いながらスマホを操作して西浦高校野球部のグループLINEに4校の見学許可が降りた旨のメッセージを送信した。

 その後はいつも通り選手たちの練習手伝いをしたりおにぎり作りをした。おにぎり休憩の時間になると阿部がマネジ2人のもとへ近づいてきた。
「LINE見た。もう連絡取ってくれたんだな。サンキュ!」
「いーえ。どこも快く承諾してくれたよ。」
篠岡はそう言ってニコッと笑った。
「誰がどこに行くかの割り振りはまた日が近づいてから決めような」
「そうだね。ちなみにどういう基準でこの4校を選んだのか聞いてもいい?」
ナマエがそう言うと阿部は各学校の概要や特色、参考にできそうだと感じた部分をつらつらと篠岡とナマエに説明してくれた。
「わかった。ありがとう!どこもおもしろそうだね!」
ナマエはそう言った。
「おう、そーだろ?」
阿部はそう言いながら片方の口角を吊り上げるようにして笑った。

 おにぎり休憩の後はナマエは最後にもう一度ジャグのドリンクの補充を行った。ナマエが数学準備室に行っている間に篠岡はおにぎり作りで使った食器類を洗っておいてくれた。ベンチに戻ってきたナマエを見つけた篠岡は「じゃ、私たちはそろそろ上がろうっか」と言った。
「うん!」
篠岡とナマエはベンチ横の倉庫で着替えをしてから2人で自転車に乗って帰途に就いた。

<END>