※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定はな…かったのですが徐々に恋愛要素出てきてます※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第73章」


 1月の第2月曜日、その日は成人の日で祝日だ。しかし、西浦高校野球部では祝日にも部活をやる。普段なら毎週月曜日はミーティングのみの日なのだが、その前々日と前日の土日2日間が大学入学共通テストの為に学校入場不可で練習できなかったので代わりに今日は通常通り練習をすることになった。

 本日は午後から雪の予報が出ている。しかし、朝起きて窓を開けたナマエが空を見上げてみると雲一つない晴天だった。ただし、風は強いし、空気は冷たい。ツンと凍てつくような寒さだ。
『たしかにいつもより寒い気がするけど、でも現時点で雲一つないのに本当に雪降るのかな』
ナマエは疑問に思いながらも万が一雪が降った時のためにカッパと折りたたみ傘を用意しておいた。

 午前中は普段通り練習を行った。午後になったら雪に備えて念のため早めに米研ぎを終わらせておいた。そして午後14時を過ぎた頃、ついに降り出した。初めは雪…というよりもみぞれだった。野球の試合は多少の雨では中断しない。なので当然練習もちょっとの雨やみぞれ程度ではそのまま続行する。しかし、15時…16時…と時間が進むにつれて天候もみぞれからしっかりした雪へと変わっていった。モモカンの指示で今日のおにぎり休憩の時間は早めることになった。16時半におにぎり休憩を迎える頃には日はすっかり傾いて東の空には夜空が広がり始めていた。
「おにぎりを食べ終わったらダウンして今日はもう上がりましょう」
モモカンはそう言った。選手たちは「うすっ!」と返事をした。裏グラには薄っすらと雪が積もり始めていた。

 篠岡とナマエがおにぎり作りで使った食器類やジャグを片付けていると選手たちの方もダウンとグラ整(というよりもはや軽い雪かきだった…)を終えたようで今日はマネジ2人も選手たちと一緒に帰ることになった。マネジ2人は裏グラの倉庫で着替えをした後、プール下の部室前で選手たちが出てくるのを待った。しばらくすると選手たちが続々と部室から出てきた。
「つか今日って成人式の日だよな。こんな雪降っちまって振袖着てる女性とか大変じゃねーのかな?」
プール下の部室から出てきた花井がそう言った。
「成人式自体は午前中とか午後の早い時間に終わるところがほとんどだからこの時間はもう振袖は着てないんじゃないかな?」
栄口がそう答えた。
「でも成人式の後って同窓会やるよね?女性はドレス、男はスーツとかでさ。振袖ほどじゃないにしても雪は厄介だよね。」
水谷がそう言った。それから水谷はマネジ2人の方を振り向いた。
「しのーかとナマエって成人式で着る振袖はもう決めてるの?」
水谷にそう訊ねられたナマエはそこでハッとした。
『そっか!この世界の私はまだ10代なんだ…。ってことはもう一度成人式を体験できる!』
ナマエはこの世界に来る前の世界ではとっくに成人していて一度成人式も経験している。成人式は一生に一度だからもうないもんだと思っていた。数年後にはまた成人式を迎えられるだなんて…なんだか得した気分だ!
「まだちゃんとは決めてないけど、私は定番の赤い振袖にしようかな~って思ってるよ」
篠岡が答えた。
「いいね、しのーかは赤い振袖似合うと思うよ」
水谷はそう言って朗らかに笑った。
ナマエは決めてんの?」
泉がナマエに訊ねた。
「全然決めてなかった…!けど、私は赤以外がいいかな。」
前の世界のナマエが成人式を迎えた時は定番の赤い振袖を選んだのでこの世界では違う振袖に挑戦したいとナマエは考えた。
「赤以外だとどんな振袖があるもんなの?」
巣山がそう言った。巣山は女兄弟がいないのでその辺あまり詳しくないのだろう。
「色々あるよね。水色とか緑とかピンクとか。」
沖が答えた。
「今朝、成人式のニュースを見た母親がうちの妹にはどんな振袖着せようかって1人ですごい盛り上がってたよ。うちの妹まだ小さいから成人式なんてずっと先の話なのにね。」
西広はそう言って苦笑した。
「あー、うちもそうだった。母親と妹が振袖どんなのにするかって話でスッゲーはしゃいでたよ。」
花井もそう言って苦笑している。
ナマエは白系にしようぜ!ナマエは色白だからぜってー似合うよ!夏に着てた浴衣も白系でめっちゃかわいかったもんな!」
田島がそう言ってニシシッと笑った。
「白系か!たしかにいいかも。」
ナマエは前の世界の成人式で友人が白に近いクリーム色をベースに古典的な花柄が入った振袖を着ていたことを思い出した。楚々とした雰囲気がありつつもオレンジ色の花柄が鮮やかに映えてとてもステキだと思ったのを覚えている。
「え、夏に着てた浴衣って何?」
泉が田島に訊ねた。
「夏にナマエがオレんちに晩メシ食いに来た時、浴衣で花火やったことあるんだよ」
田島がそう言うと泉は「はああ!?」と大声を出した。
「ほんっとによぉ、なんで誘わねーんだよ!」
泉はそう言いながらガックリと項垂れている。田島は「ワリィ、次のやる時は絶対誘うからよ」と言いながら泉の肩をポンッと叩いた。
「てか男子たちは成人式は何着るの?やっぱスーツ?」
ナマエがそう訊ねると花井が「そりゃスーツだろ」と答えた。
「はいはーい、オレは袴着たい!金ピカのやつ!」
田島が元気に手をあげながらそう言った。
「袴?しかも金ピカかよ!?」
花井は驚愕の表情を浮かべていた。
「でも悠一郎なら似合いそうだよね」
西広がそう言って笑った。
「みんなも袴着ようぜ!野球部全員で!」
田島がそう言うと花井は「オレはぜってー嫌だ」と拒絶反応を示した。
「オレもやだ。めんどくせえ。スーツが楽でいいだろ。」
阿部も花井に同意のようだ。
「えー、じゃあ、袴着んのオレだけ?」
田島がそう言いながら不貞腐れた表情を見せると意外にも三橋が口を開いた。
「オ、オレも、袴だっ!じいちゃんが選ぶ…!」
「おお、そっか!レンの家は由緒正しい家系だもんね!成人式は袴って家の決まりがあるんだね?」
ナマエがそう言うと三橋はコクコクッと頷いた。
「レンの袴姿楽しみー!やっぱ正統派の黒?でもレンは色素薄い系だから白とかベージュ系の方が似合いそうな気もするなぁ。」
ナマエがそんなことを言いながら三橋の袴姿を想像していると沖がおずおずと話し出した。
「実は…オレも袴着させられる…と思う」
「ええ、沖もかよ!?」
花井は再び驚愕の表情を浮かべた。
「お、これで男子10人中3人は袴じゃん」
ナマエはニシシッと笑った。スーツ姿は社会人になればたくさん見られるけど袴姿は滅多に見られないのだから袴を来てくれる男子がいた方がナマエとしては嬉しい。
「袴の方が嬉しいのか?」
泉がナマエに訊ねた。
「うん!袴姿なんて滅多に見れるもんじゃないしね。」
ナマエがそう言うと泉は「へー、そうなんか」と言って少し考え込んだ。
「もしかして孝介も袴にしてくれる!?」
ナマエは目をキラキラと輝かせてそう言った。
「まー、そうだな。成人式なんて普通にスーツでいいやって思ってたけどナマエが喜ぶんなら袴にしてもいいかもな。」
泉はそう言うとフッと微笑んだ。
「よっしゃ、袴4人目!」
ナマエはガッツポーズをした。
「いやいや、成人式なんてまだ4年も先の話だろ?気が早えって。」
花井はそう言って笑った。
「そうだけど、でも絶対野球部で集まろうね!絶対同窓会しようね!全員参加で!」
ナマエはそう言って花井の腕を引っ張った。花井は「そうだな」と言ってナマエの頭をよしよしと撫でてからサッと歩き出した。
『え、な、撫でられた…!』
ナマエがびっくりするやら胸キュンするやらでポーッとしていると後ろからパシンッと背中を叩かれた。振り返ると泉がムッとした顔で立っていた。
「あ、いや、ハハ…」
ナマエと泉は別に付き合っている訳でもないのだからナマエがちょっと花井にときめいてしまったところでナマエには全く非はないのだが、それでも泉の想いを知っている身としては泉のそんな顔を見るとちょっと申し訳ない気持ちになってしまうのだった。
「……オレにどうこう言う資格ねーのはわかってんだ。これはちょっと…八つ当たりだよな。」
「いや、いいよ。これはこれで愛を感じるし。」
ナマエはそう言ってクスッと笑った。それを聞いた泉は頬が少し赤くなった。
「ところで、浴衣の写真は持ってねーの?」
「浴衣?ああ、夏に悠一郎の家で着た時のやつね。たくさんあるよ!」
「くれ。全部くれ。」
「私、めっちゃ浴衣似合うよ?孝介、鼻血出しちゃうかも。」
ナマエがそう言うと泉は「自画自賛かよ」と言って呆れた顔をした。
「アハハッ、あとでLINEで写真送っとくね!」
ナマエはそう言って笑った。
「お、雪がひどくなってきたな。オメーら、とっとと帰んぞ!」
花井がそう言って部員たちを急かしたのでナマエたちは慌ててカッパを着て自転車に乗って帰途に就いた。

 家に帰宅したナマエはすぐにお風呂に入って身体を温めた。それから母親と一緒に夕食作りをし、食事を終えて自室に戻ると泉からLINEのメッセージが届いていることに気が付いた。
"浴衣、まだ?"
そのメッセージを見たナマエは思わずプッと吹き出してしまった。ナマエは自分が写っている浴衣の写真を全部選択して泉に送信した。泉からは"お、サンキュ"という返事が届いた。
"それだけ?"
ナマエがそう返信をすると泉からLINE電話がかかってきた。
「もしもし?孝介?」
「おう」
「どーした?」
「"どーした?"ってなぁ…!ナマエが欲しがるからだろ?そんなに言ってほしいなら直接言ってやろうと思ってよ!」
「おお?」
ナマエは泉の次の言葉を聞き逃すまいと身構えた。
「浴衣姿、めちゃくちゃかわいいじゃねーか!あんなの悠とレンにだけ見せてたなんてクッソ悔しい。」
泉からドストレートな誉め言葉を貰ったナマエは嬉しくて胸がジワッと温かくなるのを感じた。
「えへへ、ありがとう。今年の夏は孝介も一緒に花火しようね。」
「……それは悠たちと一緒にって意味か?」
そう言う泉の声色は少し不満げに聞こえた。
「え、他にある?」
「2人きり…はダメなんだっけか」
「そ、それはダメでしょ…!てかそんな話を昨日したばかりでしょ!」
ナマエがそう言うと泉は「そうだよなぁ…」と残念そうな声で返事をした。
「え、浴衣姿見るのに2人きりである必要なくない?」
「ないけどさっ!好きな子の浴衣姿なんて独り占めしたくなるもんなんだよ、男はっ!」
泉は普段より少し声が大きくなった。泉から改めて"好きな子"と言われたナマエは嬉しいやら恥ずかしいやらでジワジワと顔が熱くなっていくのを感じた。
「あーもう孝介はズルいなぁ。そんなこと言われてときめかない女子、この世にいないよ!」
「んなこと言うけど、お前、今日花井にときめいてたじゃねえかよ」
「あ、はい…。いや、でもあの花井はちょっとカッコよすぎたよね?すっごい自然に頭よしよしされてびっくりした。」
「やっぱ妹いるからかね」
「ああ、お兄ちゃんムーブが染みついてるのか」
ナマエはそう言って笑った。
「あれはオレには真似できねぇわ」
泉も電話口の向こうで笑っていた。泉とナマエはそうしてしばらくの間他愛のない雑談をした後、「そろそろ寝るか」「うん、おやすみ」というやり取りを経て電話を切った。

 夜の間に雪がどれだけ積もるかわからないので万が一に備えてナマエは明日はいつも早めに起床する予定だ。ナマエは部屋の明かりを消してベッドに入り、目を閉じた。ナマエはメントレの一環で寝る際にはそれまでの人生で幸福だった出来事を思い返すようにしているのだが、ここ最近はよく泉のことを考えながら眠りに就くことが増えた。
『浴衣姿、孝介にかわいいって言ってもらえた!』
ナマエは今日も幸福な気分で眠りに落ちた。

<END>