※注意:おお振りの原作沿いの名前変換小説(夢小説)です※
※注意:夢小説とはいえ特に誰かと恋愛する予定はな…かったのですが徐々に恋愛要素出てきてます※

「おお振りの世界に異世界トリップ 第75章」


 本日2月3日は節分の日だ。西浦高校野球部では午後の部活の途中でおにぎり休憩を設けるのだが、今日はおにぎりではなく恵方巻を食べることになった。というのも前日に田島からそういった提案があったのだ。"明日は節分だからみんなで恵方巻を食べたい"と。それを聞いたナマエはいいアイディアだと思ったのでモモカンに相談してみた。モモカンは快く承諾してくれた。というわけで現在ナマエは自転車を漕いで近くのスーパーに向かっていた。自分たちで恵方巻を作った方が買うより安あがりではあるが、恵方巻を作るには多くの具材が必要だし今日は普通の平日なので時間的な余裕もないということで出来合いのものを購入することになったのだ。スーパーに到着すると恵方巻はすぐに見つかった。とても目立つ場所に恵方巻売り場コーナーが出来ていたからだ。山積みになっている恵方巻をナマエは買い物カゴにどんどん入れていった。選手たち10人は1人あたり2本恵方巻を食べる。モモカン・志賀先生・篠岡・ナマエの4人は1本ずつだ。合計24本の恵方巻を確保したナマエはその他に牛乳やスポドリの粉や麦茶のパックなど在庫が減っている備品もついでに購入し、裏グラへと戻った。

 そして迎えたおにぎり休憩ならぬ恵方巻休憩タイム、ナマエが選手たちに買ってきたばかりの恵方巻を配っていると田島が「ナマエとしのーかもゲーム参加しようぜ!」と言い出した。
「ゲーム?」
いきなりそんなことを言われてもナマエには何のことだかさっぱりわからない。
「そ、恵方巻早食いゲーム!」
田島はそう言ってニッと笑っている。
「恵方巻を1番早く食べた人が勝ちってこと?勝ったら何が貰えるの?」
「んーん、1番遅かったやつが罰ゲームでコスプレすんの。ちなみにメイド服な。」
「コスプレ!?メイド服!?」
ナマエは目を見開いた。
「そー。メイド服ならドンキとかネットで安く手に入るだろ?」
「いや、そうだけど問題はそこじゃなくて、まずキミたち男子相手に私たち女子は勝ち目ないでしょ!それにもし男子が負けたとして男子もメイド服着るの?」
「オレたち男どもは恵方巻2本食うけどナマエとしのーかは1本なんだろ?それでちょうどいいハンデじゃね?男がメイド服着るのもそれはそれでおもしれーじゃん。」
田島はそう言ってカハハッと笑った。
「えー、そのゲーム誰が参加すんの?」
「もちろん全員参加で!なあ?」
田島はそう言って選手たちの方を振り返った。沖は青ざめながら「オレはイヤだな…」と言っている。たしかに沖は男子の中では比較的食べ終わるのが遅い方だ。
ナマエとしのーかにならカズトシも勝てるんじゃね?」
田島はそう言った。
「……まあ、たしかにそうかも?」
沖はそう言った。
「じゃー、全員参加だな!」
田島は満足気にしている。
「待て待て、私は参加するなんて言ってないぞ。千代ちゃんだってまだ何も言ってないよ。」
「私は男子2本対女子1本だったら勝てるかもって思う。というか少なくともナマエちゃんには勝てるかな。」
篠岡はそう言って笑った。たしかに篠岡は見た目は女の子らしいが、中学時代にソフトボール部だっただけあって女子の中では比較的早く食べ終わる方だ。篠岡vsナマエだったらおそらくナマエが負ける。
「え、それってもはや一利vs私の戦いみたいなもんじゃない?私は別に男子のメイド服姿とか見ても嬉しくないし、もうちょっとこっちにメリットがないと参加する気になれない!」
ナマエがそう言うと田島は「うーん」と考え込んだ。ここで西広が口を開いた。
「じゃあ、ナマエがビリじゃなかった場合はナマエが誰か1人を指名して着せたいコスプレ衣装も指示できるっていうのはどうかな?ただし1位の人は指名できないってことで。これならみんなが1位を目指さなきゃいけない理由ができて緊張感が生まれるし、ナマエにもメリットあるんじゃない?」
「おおっ、つまりビリにさえならなければ誰かに王子様とか執事とかの格好をさせることができるってことね!」
ナマエはそう言いながら誰に何を着せたら楽しいか想像してみた。阿部にメイド服の格好をさせて笑いを取るのもいいし、三橋に王子様の格好をさせるのもいい。花井は背が高くてスラッとしてるから執事の格好がよく似合いそうだ。男子は2本の恵方巻を食べきらなきゃいけない一方でナマエは1本でいいわけだし勝算がないこともない。負けても一時的にメイド服を着るくらいなら露出も多くないからそこまで恥ずかしくないだろう。
「よし、その案乗った!」
ナマエがそう言うと田島は「うっしゃ!」と喜んでいた。ちなみにさっきまで余裕綽々の表情をしていた花井や巣山は沖に「おい、頼むから勝ってくれよ!」と声を掛けていた。沖はプレッシャーを感じたのか青ざめている。
『いいぞ、一利がこれでプレッシャーを感じて身体が硬くなってくれれば勝率も上がるもんね~♪』
そうして篠岡とナマエを含めた野球部員全員で恵方巻早食い競争が実施されることとなった。

 結果、1番は田島だった。僅差で三橋が2位だ。3位が阿部…と続いていって最終的にビリになったのはナマエだった。ナマエのビリが決まった瞬間、田島以外の男子はみな安堵の表情を見せた。
「そんな安堵の表情浮かべられたらなんか悔しさが増すんですけど!」
ナマエはそう言いながら頬をむくれさせた。
「次の月曜のミーティング終わりにドンキに買いに行こうな!んでその翌日は1日メイド服だ。」
田島がそう言った。
「え?1日中?」
「おー」
「え、1日メイド服で授業受けろってんじゃないよね?」
「いや、朝から部活開始までの間1日中メイド服だよ。え、そう言ったよな?」
「言ってない、言ってない!聞いてない、聞いてない!」
ナマエはてっきり昼休みとか部活開始前とかにちょろっとメイド服姿を見せてすぐに着替えればいいと思っていた。
「あと、その日は1日中他の部員のことを"ご主人様"って呼ぶって話だからな」
阿部がそう言ってニヤリと笑った。
「ウソでしょ?聞いてない聞いてない!」
「今更"聞いてないからできません"っつーのはナシだろ?」
阿部はスンッとした顔でそう言い放った。
「そうだぞ、男に二言は無いって言うだろ?」
田島がそう言った。
「いや、私は男じゃねんだわ。それとも悠一郎には私が男に見えてんのか?」
ナマエはそう言いながら両手で田島の頬を引っ張った。
「見えてないッス!スンマセン~ッ!」
田島はそう言って涙目になっていた。
「じゃあ、そもそも悠一郎の説明不足だったから無効試合ってことにする?」
西広がナマエにそう訊ねると他の選手たちはあからさまに残念そうな顔をした。そんなガッカリされたらなんだかすごく悪いことをしている気分になる。
「わかったよ!やりますよ!真剣に勝負した上で負けたんだし、ちゃんと受け入れます!でもドンキじゃなくてネットで買うわ。なるべく露出が少なくてあんまりぶりぶりしてなくて清楚なやつを探す。そのくらいは許されるでしょ?」
ナマエがそう言うと田島は「むしろそっちの方がヌけるかもな!」と言った。すかさず泉が「っざけんな!」と言って田島の頭をパシンッと叩いた。ナマエは田島の発言は聞かなかったことにした。

 その日の夜、ナマエはパソコンを操作してネットでロング丈でのあまりフリルのついていないクラシカルメイド服を検索し購入手続きを済ませた。荷物は日曜に届くらしいので罰ゲーム実行は次の月曜日に決まった。

 そして迎えた月曜日、ナマエはまずは普段通りなんちゃって制服で登校した。だってさすがに家からメイド服で行くのは無理がある。でも登校してきた田島はナマエの姿を見つけるなり、「あー!」と非難げな声でナマエを指さした。
「なんでメイド服じゃねーの!?楽しみだからいつもより早く登校してきたのに!」
「野球部男子が来てから着替えようと思ってたんだよ。ちゃんと持ってきてるよ。」
「着替えて来い!今すぐ!」
田島はそう言って廊下を指さした。女子更衣室へ行けと言いたいらしい。
「わかったよ!行ってくるよ!」
ナマエはカバンからメイド服セットを取り出して女子更衣室へ向かった。

 女子更衣室で着替えを終えたナマエは姿見で自分の姿を確認した。なるべくぶりぶりしてないクラシカルな清楚めのメイド服を選んだつもりではあるが、やはりしっかりメイド服だ。カチューシャとエプロンさえ外せばただのシックな黒いワンピースに見えなくもないがそれでは田島たちは納得してくれないだろう。ナマエはとりあえず黒いワンピースだけ着て教室に戻ることにした。エプロンとカチューシャは教室で田島たちの前で着ればいい。ナマエが黒いワンピース姿で9組の教室に戻るともう泉と三橋も到着していた。
「え、それメイド服か?」
黒いワンピース姿のナマエを見つけた泉がそう訊ねてきた。
「エプロンとカチューシャ着ければちゃんとメイド服だよ」
ナマエはそう言いながら頭にカチューシャをセットし、エプロンを身に着けた。
「「「おお~!!」」」
9組野球部男子3人は感嘆の声をあげた。
「かわええ!!」
田島が満面の笑みでそう言った。
「おー、似合ってんよ」
泉はそう言って頬を赤く染めていた。三橋は何にも言わないが顔が真っ赤だ。
「写真撮っていいー?」
田島はそう言ってスマホを取り出そうとしたが、泉がそのスマホを取り上げた。
「ダメだ、悠は何に使うかわかんねーもん」
おそらく泉は先日田島が"ヌける"と言った発言をしたことを気にしているのだろう。ナマエもあの発言を聞いてしまった以上、田島に写真は撮られたくない。田島は「ちぇっ」と言いながらも写真撮影は諦めたようでスマホをポケットにしまった。
ミョウジ、それが例の罰ゲーム?」
浜田がメイド服姿のナマエを見つけて話しかけてきた。
「左様でございます、ご主人様」
ナマエはそう言ってロングスカートの裾を持って少し屈んでみせた。
「おー、スゲー!かわいいし、結構様になってるな!」
浜田はそう言って朗らかに笑った。

 それからナマエは鎌倉遠足で仲良くなったソフトボール部女子2人から事情を訊ねられたり、担任教師から「お、ミョウジどーした?」と声を掛けられたりする度に「罰ゲーム中です」と回答した。田島が野球部のグループLINEにナマエがメイド服姿になったことを告知した影響で1限目の後の休み時間になると他のクラスから続々と野球部員が9組までやってきてナマエのメイド服姿をしげしげと眺めた。
「おっ、ナマエかわいーねぇ」
水谷がそう言ってヘラッと笑った。
「なかなか似合ってんじゃん?」
花井もそう言ってニッと笑っている。
「じゃ、ご主人様と呼んでもらおうか」
阿部はそう言ってニヤリと悪い笑みを浮かべていた。
「うげ、こいつのこともご主人様って呼ばなきゃいけないの?」
ナマエがそう言うと阿部は「こいつじゃなくてご主人様な」と訂正した。
「何のご用件ですか、クソご主人様」
「クソは余計だ、このクソ生意気メイド」
「もし私がメイドになる日が来ても隆也にだけは奉仕しないもんねーっ」
「もしじゃなくて今のお前はメイドなんだよ。勝負して負けたんだろーが。」
「ムキーッ、ヤなやつ!」
阿部とナマエがそうしてギャーギャー言い争っていると栄口が「まあまあ、その辺にしときなって」と言って2人を引き剥がした。それからナマエは篠岡とツーショット写真を撮ってもらったり、阿部以外の部員たちのことを"ご主人様"と呼んでみたりしてみんなでわいわいと休み時間を過ごした。最初は恥ずかしかったメイド服姿も時間の経過とともに慣れてきて恥ずかしさも和らいだ。ちなみに今日の阿部は休み時間になる度に9組にやって来て散々ナマエのことを冷やかしては満足気に帰っていった。
『明日の隆也のおにぎりの具はたっぷりのわさびにしてやろうか』
ナマエは7組に帰っていく阿部の背中を睨みながらそんなことを考えていた。

 1日の授業が終わり、ナマエはようやくメイド服から解放された。なんちゃって制服姿になったナマエを見た田島は「あーあ、いつものナマエに戻っちゃった」と残念そうにしていた。
「あ、でも来年も恵方巻早食い競争やろうな!」
田島はそう言ってニシシッと笑った。
「来年は男子は恵方巻3本で女子は1/2本ってことならまた挑戦してあげてもいいよ」
ナマエがそう言うと沖は「それは女子が有利すぎるよっ」と言って青ざめていた。
「一利、大丈夫だよ。私がビリを免れたら隆也を指名してメイド服を着させてやるんだから!」
ナマエはフッフッフッと悪い笑みを浮かべた。
「はあ!?オレかよ!」
阿部は青ざめつつ目に角を立てている。
「今日1日散々揶揄われた雪辱は来年果たしてみせる!嫌ならタカヤが1位になってみせなさいよねっ!」
「上等だ、オレが1位になったらオメーは来年こそはオレに従順に従えよ」
「何言ってんのよ。隆也が1位になっても私はビリさえ免れればメイド服着なくて済むもん。」
「じゃあ来年は1位になったやつが誰か1人指名してコスプレさせられるっつールールにしようぜ」
「な…っ!そんなルールなら参加しないっ!」
ナマエがそう言うと阿部は「おー?逃げんのか?」とナマエを挑発した。
「逃げるですって?」
「オレとの勝負が怖いんだろ?」
阿部とナマエの視線が交錯した。バチバチッと火花が散る。
「やってやろうじゃないの。隆也が1位になったら私はメイド服姿で1日中隆也に従順にご奉仕してあげるわよ。逆に私がビリを免れた時に隆也が1位じゃなかったら隆也にメイド服を着させるから1日中従順に私に付き従いなさい。ちなみにもし来年また私がビリになっても隆也が1位じゃなかったら隆也のことはご主人様とは呼ばないからね。」
「おー、いいんじゃね?」
阿部はそう言って笑った。
「来年は阿部が1位になれるのか、そしてミョウジはビリから免れることができるのか、スッゲー見物だな」
花井はそう言って楽しそうに笑っていた。
「あ、ちなみにもし私がビリを免れた時に隆也が1位だったら私は花井に執事の格好をさせるから」
ナマエがそう言うと花井はサッと青ざめた。
「なんでオレに矛先が向くんだよっ!」
「今、花井が他人事のように笑っていたのが癪に障った」
「マジかっ!巻き込まれた~っっ!」
青ざめながら涙目になっている花井を見て他の野球部員たちはゲラゲラと笑った。そんな風に雑談をしていたらミーティング開始の時刻になった。モモカンが教室に入ってくる。部員たちはピッと背筋を伸ばしてモモカンにあいさつをした。甲子園優勝を目指す西浦高校野球部はその目標達成のために今日も真面目にミーティングに取り組んだ。

こうして節分の罰ゲームイベントは幕を閉じたのだった。

<END>