田島夢小説「泡沫」
藤堂奈々は夏大5回戦(対美丞大狭山戦)のテレビ中継の録画を田島にDVDにダビングしてもらった。家に帰ってすぐにDVDプレーヤーにそのDVDを突っ込み、試合を観戦する奈々。奈々は今までの人生で野球とは縁がなかったのでこんな風に真剣に野球中継を見るのは初めてだ。
対美丞大狭山戦は、西浦高校にとってはかなり厳しい戦いだった。序盤の1回表からヒットやホームランを打たれて相手に3点を取られてしまった。それなのに1回裏、西浦側の攻撃はうまく繋がらずに無得点。続けて2回表でも美丞大狭山に追加で1点取られてしまう。一方、2回裏の西浦高校の攻撃は三者凡退だった。3回・4回では西浦側が1点ずつ返して得点は2対4になるが、5回表でまた美丞大狭山に1点入る。しかし、5回裏では西浦が2点入れて得点は4対5と1点差まで追いついた。ようやく西浦に流れが来たかと思いきや6回は両者無得点で、さらには7回表で正捕手の阿部が怪我をして退場となってしまった。負傷退場した阿部の代わりに田島が捕手を担った。7回表では追加で2点が美丞大狭山の得点となり、点差は4対7になってしまう。7回裏では西浦は得点を返せなかった。8回裏で西浦が1点返して5対7で最終回となる9回へ。2点差ならまだ可能性は十分にあると思われたが、9回表でなぜか美丞大狭山にバンバン打たれてしまいスリーランホームランも食らってなんと得点は5対11へ。9回裏で西浦が1点返すが、結果6対11で西浦高校が負けてしまった。
奈々はドキドキ・ハラハラしながら試合を観た。結果的に西浦が負けてしまって残念ではあるけど、奈々はDVDを観て、野球の試合観戦はとても楽しいと感じた。事前に田島から借りた野球ルールブックや図書館で借りた野球関連の本など数冊を読み漁った奈々は、今の自分に野球を観戦して戦況を理解できるだけの知識が十分にあることがわかって嬉しかった。
それに、何よりも奈々は試合中の真剣に野球をプレイする田島の姿を見るのがとても新鮮だったし、なんだか心躍った。田島は1打席目もバットにボールを上手に当ててヒットを出したし、5回裏では田島のツーベースヒットを打って泉を本塁へ帰して得点を入れた。7回表で正捕手の阿部が怪我をした時には、冷静に対応する姿もテレビ中継にしっかり映っていた。阿部の退場でポジションが変更になる中で慣れないポジションに移動したメンバーを励ます姿も見れた。自分自身だって慣れない捕手で大変だろうに周りにもちゃんと気を使えてスゴいと奈々は思った。9回表でホームランを打たれた時は、三橋に駆け寄って肩に腕を回して何か話していた。たぶん何か投手のメンタル面のケアをしていたんだと思う。ホームランを打たれた後に三橋は動揺したのかフォアボールを出した。その上、守備の凡ミスまで起きてしまい、このままチーム全体が崩れてしまうのかと心配した。しかしその時三橋は「ワンナウトー!」とシャウトしてチームを鼓舞した。そんな三橋の姿に奈々は驚いたが、そこで三橋に続いて田島も「ワンナウトー!」と叫んだのを見て、奈々は三橋と田島の絆の深さを感じて胸が熱くなった。そして9回裏には田島の長打ヒットでランナーを本塁に帰して1点得点を返した。
『田島君はこの試合大活躍だった。というかきっと他の試合でも沢山活躍しているんだろう。試合だと、いつも教室で見せる豪胆な様子とはちょっと違った凛とした顔付きや真剣な表情も見られる。…田島君の色んな顔、色んな姿をもっと見てみたい。』
奈々は今観終わったばかりなのにまたDVDを頭から再生し始めた。そして田島が活躍するシーンを何度も繰り返し見返した。
『…カッコイイな、田島君』
翌週の朝、登校した奈々はいつものように田島の宿題の手伝いをする。これはもはや朝の恒例行事となっていた。そして、今日も無事に宿題を終えた田島に夏大5回戦(対美丞大狭山戦)のDVDを観たことを伝えた。
「お、観たか!どーだった?」
田島が奈々に訊ねる。
「すごく面白かった!田島君から借りた野球ルールブックを読んだからかな、試合の状況とかも観てて結構把握できたよ。これなら次に試合観戦に行ってもちゃんと場面を理解して応援できそうで安心した。ってか野球ってすごい頭を使うスポーツなんだね!私もっと野球のこと知りたくなった!」
奈々は目をキラキラながら喋る。
「ねえねえ、ランナーの位置とかアウトの数によって守備位置も変えるんでしょう!?あとバッティング!バントの構えで投手を揺さぶったりとかボールカウントによってバッティングを変えたりとか、私、そういう戦略面も知りたい!」
奈々は元々頭はいい方だ。試合を観ていたらつい野球の戦略的な面にも興味が湧いてきた。さらに奈々は言葉を続けた。
「あとさ、配給!あれ考えるのすごく楽しそうだね!なんか同じコースに球種変えて投げて相手を揺さぶってたよね?あとホームラン打たれた球をわざわざその人に投げたりとか!よく考えてるなぁって感心しちゃった!」
畳みかけるようにわっと話す奈々。田島は目をパチクリさせて奈々を見た。
「あっ、ゴメン、一方的に話しすぎた!」
奈々はつい興奮して喋り倒してしまった自分が恥ずかしくなった。『もしかして引かれたかな』と奈々はちょっと心配になった。しかし、田島は引くどころかニカッと嬉しそうに笑った。そして田島は椅子から立ち上がって奈々の背中をバシンッと思い切り叩いた。
「いった!ちょっと、なによ~?」
「オレ、藤堂が野球の楽しさ分かってくれてチョー嬉しい!」
田島は満面の笑みを浮かべている。
「野球の戦略面のことだったらうちにそういう本は色々あるからまた貸してやるよ!配給のことはオレも捕手始めて日が浅いからまだ人に教えられるレベルにねーんだ。だからタカヤに教えてもらおうぜ!あいつ配給オタクだから。」
「タカヤって正捕手の阿部君か!あの怪我した人!」
「そう!もうとっくに怪我は治ったぞ。紹介してやるから昼休み一緒に4組に行こうぜ。あ、弁当さっさと食っちまえよ!あいつ配給のことになると話なげーから早めに行かなきゃ昼休みのうちに訊きたいこと訊き終わらないぞ。」
「わかった、じゃあ私も今日は早弁しとこうかな」
田島はそれを聞いて「藤堂が早弁すんのっ?」とおかしそうに笑った。
昼休み、奈々は事前に少しだけ早弁をしておいたのでいつもよりも早くお弁当を食べ終わった。もうとっくにランチを食べ終わってる田島が「終わったか?行くか。」と声を掛けてくる。奈々は女友達に「ごめん、ちょっと用事あるからお先~!」と声をかけて田島を追いかけた。2年4組の教室に行くと三橋・泉・阿部の3人が机をくっつけて食事をとっていた。というよりも食べ終わって解散しようとしているところだった。
「よ!」
田島が3人に声を掛ける。
「おお、どした?あれ、藤堂もいんじゃん。」
泉が田島の後ろをついてきた奈々に気が付く。
「泉君、三橋君、久しぶりだね」
「そだな、久しぶりだな。でも田島からお前のことはよく聞いてるよ。勉強面倒見てくれてるんだって?」
泉はそう返事した。三橋は奈々に話しかけられてキョドりながら「あ…ひ、久し、ぶり…」と小さく返事をしている。
「あー、うん。そういう約束したし!泉君も何かあったら言ってね!」
「次の中間試験の時にでも勉強教えてくれよ。で、どしたん今日は?」
「タカヤに用事!」
田島が答えた。
「は?オレ?」
奈々には微塵も興味を示さず昼寝しようと準備していた阿部が名前を呼ばれてぶっきらぼうに返事した。
「こいつ、オレの友達の藤堂な。同じクラス!これからオレらの試合の応援に来てくれるって言うんだ。」
「2年2組の藤堂奈々です。よろしくお願いします。」
ペコッと頭を下げる奈々。
「はあ。そりゃどーも。…で?」
奈々は全く笑いもしないでそっけない返事をする阿部を見て『なんか怖い人だな』と内心思った。
「あの、私、野球部の試合の応援に行くにあたって野球のこと勉強中でして、それで配給のことを詳しく知りたいと田島君に相談したところ阿部君に訊くといいって言われたんです。私に配給のこと教えてもらえませんか。」
「配給のこと?別にいいけど…でもあんたが配給のこと知ってどーすんの?学んだところで捕手やるわけでもねェだろ。」
奈々は阿部のキツい口調に思わず「う…っ」と面食らった。
「タカヤ、オレの友達イジメんなよー」
田島が阿部をたしなめる。
「はァ?別にイジメてねぇだろ」
「藤堂は女子だぞ、もうちょっと言い方に気をつけろ」
阿部の頭をコツンと叩こうとする田島とその手を掴んで阻止する阿部。
「あー…田島君、ありがと。大丈夫だから。私がちゃんと説明する。」
奈々が取っ組み合いを始めた2人を止めた。
「あの、阿部君、私、夏大5回戦のテレビ中継の録画を昨日見たんです。それで同じコースに違う変化球を投げて打者を翻弄したり、あえてホームランされた球をその打者に投げたりしてましたよね?おもしろいなって、よくこんなの考えられるなって感心したんです。それで配給の理論に興味がわいて。たしかに私は捕手をやるわけじゃないけど、そういうのわかったら試合観戦もっと楽しくなると思うんですよ。だから、もし阿部君が嫌じゃなかったら、教えてくれないかなって。こんな理由じゃダメですか?」
奈々はさっきの阿部の様子からして『断られる可能性が高いよなー…』と思いながらダメ元で聞いてみた。
「あんた結構わかってんな!いいぜ、教えてやんよ、ここ座んな!配給は奥が深いけど、その分すげーおもしれーぞ。」
阿部はそう言ってニィっと笑った。なんと、奈々の言葉を聞いてやる気になったみたいだ。奈々は『おおっ、阿部君が笑ったぞ?』と内心驚いていた。
「オレも一緒に教わる!」
田島も近くの机の椅子を持ってくる。
「よろしくお願いします!」
奈々は阿部が指さした椅子に座った。
「藤堂、タカヤとは同い年なんだからタメ口でいいぞ」
田島が奈々にそう言った。阿部も異論はないらしいので、奈々は敬語はやめることにした。
「具体的に何が知りたいこととかあんの?」
阿部が奈々に訊ねた。奈々はまず聞きたいことがあった。
「まず夏大5回戦の配給のことで…、ホームランを打った美丞大狭山の和田選手に同じコースの同じ変化球投げてたよね?裏をかいたんだろうなってことくらいは予想できるけど、でもホームラン打たれたのと全く同じ球って怖くないのかなって。あれって裏をかいた意外にも和田選手はあれを打てないだろうって算段が何かあったのかな?」
「ああ、あれか!あんたホントよくわかってんな。あれはホームラン打たれた球が内のスライダーだったんだけど、その球を投げる前に内にシュート投げてんだよ。スライダーが捕手から見て右に曲がる球な。シュートは逆で左に曲がる球だ。つまり対角線に球を放ってるんだ。対角線に球を放って打者を翻弄するっつーのは配給の基本で、その上和田はホームラン打った内のスライダーはもうこないと予想しているだろうからその裏をかくという2つの狙いがあったんだ。」
「へー!すごい!じゃあ、よく同じコースに違う変化球を投げてるなって思ってたんだけどそれも同じく対角線に放ってるの?」
「そういうパターンが多いな。けどそれ以外にもあるんだ。例えばまっすぐと変化球で相手を翻弄することもあるし、あとは対角線って内角と外角だけじゃなくて上下もあるんだ。それから速い球の後にカーブっていう他より遅い球でタイミングをずらして芯を外させるってやり方もある。」
「へー!なにそれ!めちゃめちゃおもしろい!」
「な、おもしろいだろ!こうやって配給考えてそれが思い通りになるとめちゃくちゃ気持ちいいんだ!」
「そりゃー気持ちいいだろうね!そういうの他にもある?」
「あるよ!ってかそこまで興味あるなら配給基礎の本貸してやるよ」
「ぜひっ!貸してくださいっ!阿部君はいつからこういうの学んでるの?」
「あーオレはね、そもそもオヤジが…―――」
最初は阿部が怖かった奈々だが、阿部と奈々は意外にも意気投合した。2人はしばらくの間、配給の話で盛り上がった。
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配給の話で盛り上がる阿部と藤堂を見ている田島。あの阿部が珍しく女子相手に笑顔を見せて話をしている。藤堂も楽しそうだ。田島はなんだが胸がモヤモヤするのを感じた。
『なんだ、この感じ?』
田島は自分の胸の違和感を不思議に思った。
「あ、やばい、もうこんな時間だ!授業始まっちゃう!」
藤堂が時計を見て言った。もう次の授業開始の10分前だ。随分と長い時間2人は盛り上がっていたようだ。
「じゃあ、明日にでも本持ってくるから」
阿部が藤堂に声を掛ける。
「うんっ!阿部君ホントにありがとー!話めっちゃ楽しかった!」
「おーオレも楽しかったよ」
阿部は口角が少し上がっていて微笑んでいるように見えた。
「よし、田島君、教室戻ろう!」
「おー」
藤堂は笑顔で阿部に「じゃあねー」と言って手を振った。田島の胸のもやもやは一層濃くなっていく。
「田島君、ありがとうね。阿部君すごいいい人だった!」
「………」
田島は『なんかおもしろくない』と思った。
「……タカヤのこと気に入ったのか」
「え、うん。色々教えてくれて優しいし、話楽しいし。」
「……タカヤのことスキになったか?」
「え?え!?好きってどういう意味で?」
「恋愛感情で」
「ええっ、違うよー!そんなんじゃなくて、なんていうか尊敬だよ!こんな配給考えられてすごいなーって!阿部君って地頭がいいんだろうね、きっと。」
「…………」
恋愛感情じゃないと言ってはいるけど今の藤堂は明らかに阿部のことを好意的に思っている。しかも理由は頭がいいから尊敬するんだと。それがなんだかムカムカして田島は思わず口を開いた。
「言っとくけど野球部は恋愛禁止だからタカヤを好きになっちゃダメだぞ」
「……恋愛禁止?」
藤堂はキョトンとした。
「野球部が?」
「そう」
「全員?」
「全員」
「そういう規則があるの?」
「そう、1年の冬に決めた。オレら甲子園優勝目指してんのに恋愛なんてしてるヨユーないし、恋愛沙汰で揉めたりしたくないし。」
唖然とする藤堂。
「……じゃあ、田島君も誰かから告白されても絶対に振るの?」
「振るよ。」
「……自分は恋しちゃったりしないの?」
「しないように毎日オナニーしてるもん」
藤堂は田島の頭を軽く叩いた。
「ちょっと!私、女子なんですけど!下ネタやめてよねぇっ」
顔を赤くして怒る藤堂。
「あー、ワリワリ。でも、そういうことだからタカヤはダメだぞ。」
「…………」
藤堂は俯いて黙り込んでいる。
「……そんなにショックなのか?」
田島は藤堂が阿部と恋愛できないのがわかってショックを受けて黙り込んでいると思った。藤堂はハッと我に返った。
「違う!ショックじゃないよ!びっくりしただけ!そんなどこぞの国民的アイドルみたいなルール設ける部活なんてあるんだって衝撃的だっただけ!てか別に私阿部君のこと、恋愛感情での好きとかじゃないし。勘違いしないでよっ。」
藤堂はプイッとして田島を置いて先に教室に戻ってしまった。
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―――言っとくけど野球部は恋愛禁止だからタカヤを好きになっちゃダメだぞ
野球部に恋愛禁止なんてルールがあるとは知らなかった。っていうか普通そんなの予想できるはずがない。そんな国民的アイドルグループみたいなルール。ただの一般高校生の部活で、そんなルール設けるって…。もしかして甲子園常連校の野球部にもそういうのあるんだろうか。それが甲子園を目指す高校球児の普通なんだろうか。
―――……そんなにショックなのか?
ショックだった。田島に対してはショックではないと答えたが、正直言ってショックで胸が痛んだ。でも、それは阿部と恋愛できないからじゃない。
『田島君は恋愛しないんだ』
つまり、田島は彼女作らない。田島に告白しても振られる。田島は誰のことも恋愛感情では好きにならない。奈々はそれがショックだった。
『なぜ私はこんなにショックを受けている?』
自分自身に問う奈々。答えは簡単に出た。
『私は田島君のことが恋愛感情で好きだったんだ』
奈々は心の中でハハッと自嘲した。
『好きって自覚した途端に失恋ですか。あほらしい。』
田島にこの感情を見破られるのがいやで、奈々は田島を置いて一人で先に教室に戻った。
奈々は授業中、小テストを早々と解き終わった。そしてまだ必死に小テストの用紙に何かを書いている田島の後ろ姿をぼんやりと眺める。
『私、あの人のこと好きだったんだ。』
自分の胸に手を当てる奈々。
『うん、好きだな。明るくて、優しくて、意外と気配りができて、おもしろくて、田島君と話していると胸がポカポカ温かくなる感じがする。それからあの力強い眼差しや小柄なのになぜか頼もしさを感じさせる背中も大好きだ。』
そう、大好きだ。そう思ったらなんだか目頭が熱くなってきて、奈々は慌てて自分の思考を止めた。
放課後、田島はいつものようにウキウキとした足取りで部活へ行った。奈々は普段通りを装って田島に別れを告げた。そして田島の後ろ姿を見送った。奈々はいつもは家の近くの図書館か学校の図書館で勉強をしてから家に帰るのだが、今日は家に直帰した。自分の部屋のベッドに倒れ込む。
―――オレら甲子園優勝目指してんのに恋愛なんてしてるヨユーないし、恋愛沙汰で揉めたりしたくないし。
言われてみれば、それはそうだ。ただ甲子園に行きたいんじゃなくて甲子園に行った上にそこで優勝したいんだ。全国で1位になりたいって言ってるんだ。それがどれだけ高い目標なのか。それを本気で目指すなら毎日寝ずに努力するくらいのことをしなきゃダメだ。恋愛なんてしてる暇ないよ。
『私だって定期試験の成績学年1位を目指してるし、大学は国公立を目指してるんだから、恋愛にうつつを抜かしてちゃダメだ。だから、これでよかったんだ。田島君と私はこれからも"友達"のままでいればいい。田島君の傍に居られるだけでいい。"友達"としてでいい。それ以上は望まない。この気持ちはずっと伝えないで胸にしまっておこう。いつか自然に消えてなくなる日が来るはずだから。』
奈々はそう決意した。
『でも、今日くらいは泣いてもいいよね…』
ベッドに横になりながら奈々はしばらくの間、失恋の涙を流した。
<END>