おおきく振りかぶって 原作漫画感想 2巻 <第5回>
<第5回 / あらすじと感想>
■西浦高校打順
1番:栄口(順位4位)、2番:沖(順位6位)、3番:阿部(順位7位)、4番:田島(順位1位)、5番:花井(順位2位)、6番:巣山(順位3位)、7番:泉(順位5位)、8番:水谷(順位8位)、9番:三橋(順位10位)
鶯嬢をやりながらスコアをとる篠岡。モモカンの愛犬アイちゃんに話しかけている。
【4回裏、三星学園の攻撃】
1〜3番:三者凡退
【5回表、西浦高校の攻撃】
8番レフト水谷、9番ピッチャー三橋、1番セカンド栄口。三者凡退
【5回裏、三星学園の攻撃】
4番ファースト織田
1球目、外のスライダーをファールする。球が遅くて打ちにくい上に好きなコースは力んでしまって振れすぎるとのこと。
2球目、内の球を再びファール。外ぎりぎりの後に内を攻められると身体がついていかない織田。三橋はコントロールしてそう投げてるが、織田はうまい具合に荒れてるだけだと思ってる様子。
3球目、カーブを見送り三振。一死。
阿部『見送り三振は投手にとって最高のアウトだ!気持ちいいだろ!?オレといればいくらでも気持ちよさを味わわせてやるぞ。忘れるなよ。お前の力を引き出してやれるのはオレだからな!!』
阿部君がキモべと呼ばれる所以になったセリフですよね。うん、キモイとは言わないけどなかなかに意味深というかきわどいというか、ちょっと変な意味に捉えられかねないセリフだよね。しかもこれがアニメだと中村悠一さんのステキなお声で再生されるのですよ。たまらなかったですね。
5番畠はまた打ち上げてしまってアウト。二死。
6番もセカンドフライでアウト。三死で攻守交代。
【6回表、西浦高校の攻撃】
2番ファースト沖は三振。一死。
3番キャッチャー阿部はフォアボールで出塁。一死一塁。
そしてやってきました、期待の4番サード田島!…ですが本気モードになった三星は田島を敬遠することに決定。阿部はここで三星がいつの間にか本気になってることに気付く。一死一・二塁。
5番ライト花井、サードゴロを打ってしまい二塁にいた阿部がフォースアウト。ランナー入れ替わって二死一・二塁。
アウトになってベンチに戻ってきた阿部に防具を差し出す三橋。「花井君惜しかったね、でもまだ点取れそうだね」とキョドりながら話す三橋に阿部は「叶君が打たれてもいいんだな?」と三橋の痛いところを突く。青ざめながら「どんどんうてー。オレは三星の味方なんかしてません よ〜…」とキョドる三橋。全く心が込もってなさそう。チロと無言で睨む阿部。
三橋『阿部君誤解してるよ。オレは決心して三星を出てきたんだから。誤解…だよな。だってもうオレは――…オレは三星の敵なんだ』
改めて自分はもうみんな(三星の元チームメイト)の敵なんだと実感した様子の三橋。三橋の様子を見て阿部は『ヘタにつつくと逆に里心がついちまうな』と焦る。『結果を出すことに集中しよう。勝利の気持ちよさにさからえる投手はいねェんだ!』
この阿部と三橋のやり取りの間に6番ショート巣山は凡退。三死で攻守交代。
【6回裏、三星学園の攻撃】
7~9番、三者凡退
【7回表、西浦高校の攻撃】
7番センター泉、8番レフト水谷、9番ピッチャー三橋、三者凡退
【7回裏、三星学園の攻撃】
叶は球数が増えてきているのでもう攻撃中のキャッチボールはやめることに。
織田は叶に三橋のどこに負けてると思ってるのか問う。叶は三橋が一試合を投げ切れるくらいの集中力とスタミナがあることを理由に挙げる。具体的には中2の夏から試合中の失投が全くないということ(一試合通して思った通りの球種とコースを投げられる)。織田は「そんなのできてるかどうかわからないし、本人がそう言ってたって証拠にならない」と反論するが、叶はそれを裏付けるように三橋が中学最後の一年間で一度もデッドボールを出さなかったこと、フォアボールも枠が極端に偏った審判の試合で出した1つだけだったこと、三橋は自宅では9分割のストライクゾーンに分かれた的で練習していることを説明する。9分割ときいて驚く織田「まさか!投手やってるやつが夢みたいなこと言うなや」と信じられない様子。
織田「そら対角線で放れたら理想やけど、打者の打ちづらい組み立ては投手かて投げにくいんや。内の後の外。変化球の後の速球。」
畠「それ、そんなに難しいことなのか?」
織田「はああ!?」
織田、三橋のやってる投球の凄さをまるでわかってない様子の畠に驚愕する。
叶「エスカレーター組は三橋がそれをできることを知ってるんだよ。でもこいつら投手は三橋しか見てねェからその凄さがわからなかったんだ」
畠「織田!叶に丸め込まれるなよ!球自体はスピードのないつまらんボールなんだからな」
え、もうさ、三星のエスカレーター組のやつらって超おばかじゃん。叶だけじゃなく関西からスポーツ推薦で入ってきた織田まで三橋の投球の凄さをわかったのに(三橋の投球の成績聞いてもなおその制球力について半信半疑になるくらいスゴイことやってんのに)、それでもまだ「叶に丸め込まれるな」とか「スピードのないつまらんボール」だとか言って三橋を客観的に評価できないのさ、ちょっとホントに頭が悪いとしか思えん。まあ三橋の凄さを認めてしまったら中学時代に自分が三橋をダメピ扱いしてたことが間違ってたことになっちゃうから意地でも認めたくないっていう心理からくるものなのかもしれないけど。
たぶんこの先いつか西浦と三星は甲子園で再度対戦することになるんだろうなと予想してるんだけど、正直言って叶と織田以外の連中がダメダメすぎてこんなやつらが2年後の夏に甲子園に出場できるほどの実力を身に着ける姿が全く想像できないぜ。
三星の監督は織田に1回だけ使える手を思い付いたと提案する。
場面切り替わってグラウンドでは三星の1番・2番をアウトにした西浦。阿部が「ツーアウトー!」と声を出す。
阿部『あとアウト一つとりゃ7回をパーフェクトで終われる。中学なら完全試合の成立だ。そこまでやれりゃあ三橋もオレの力を認めるだろう』
阿部は三橋の元チームメイトへの未練を断ち切りたくて、そのために自分の力を認めさせようと必死。3番吉はアウトローに投げておけば安パイだから『こいつで締めくくってやる』と意気込む阿部。
3番吉
1球目アウトローにまっすぐを投げると吉はレフト方向へ打ち上げる。「よし!」と思った阿部だったが、レフト水谷がまさかの凡ミスでフライを落とす。
阿部「な!!! なにいいい!!? ク ソ レ フ ト 〜〜〜ッッ」と怒り心頭の阿部。
でました、おお振りで有名な名言(迷言!?)、「クソレフト」です。いやーマジでもったいねーな。こんな凡ミスでパーフェクトがなくなっちまって。
パーフェクトがなくなって悔しがる阿部だが、今のはエラーだから次の織田を抑えればまだノーヒットノーランが狙えると考える。
4番織田
真剣にやってもまだ真ん中から逃げていく球を捉えきれてない織田には今回も変化球で内外に揺さぶることに決める阿部。しかし織田は監督から提案された対策に従って1球目は目をつぶって球筋の残像を残さずに直後にミットの位置を見て内外どちらの球が来たか確認するという手段を取る。ミットが外に構えられていることを確認した織田は、それならば次は内に変化する球、すなわちシュートが来ると予想。織田は内のシュートはすでに2回も見てる。
織田がそんな小細工をやっているとは知らない阿部、織田の予想の通りに内のシュートを三橋に要求する。
三橋は織田が1球目、目をつぶってバットを振ったことを見てる。三橋は『だめだ、そこは打たれる!!』と直感で感じるが、『直感だなんて言って納得してもらえるはずがない、ましてや阿部を相手に首は振れない、従わないと阿部に嫌われちゃう』と阿部のリードに従って投げる。
これは初対面の時に「首振る投手は大嫌いなんだ」って言った阿部が悪いな…。
織田は読みが当たってライナー性のヒットをだす。ライトの花井は捕球が間に合わない。一塁にいた吉がホームに帰って三星に1点。2ー1。打者織田を三塁で刺そうとするもセーフ。二死三塁。
パーフェクトどころかノーヒットノーランも完封も消えて呆然とする阿部。そもそも4番の織田を打ち取ろうとしたのが間違いだった、シングルを打たせればよかったんだと後悔する阿部。悔しさのあまり投手の三橋のフォローも忘れて「クソッ」と悪態をつく阿部。三橋は自分が打たれたから阿部君は自分に怒ってるんだと勘違いする。
タカヤーー!!三橋のフォローをしろよおおぉ。お前捕手だろおぉぉ。
5番畠
三橋は阿部が怒ってると勘違いしていて『リードがよくてもオレの球じゃ限界があるって阿部君にきっと思われた』と動揺している。阿部は自分が焦ってるせいで三塁打を打たれた三橋の動揺には気付いていない。阿部は今日は畠にはシュートしか見せてないから内にまっすぐを入れればシュートだと勘違いして仰け反ると予想し、三橋にまっすぐを要求する。動揺している三橋は無意識のうちにまっすぐを投げる時のクセを見せてしまい、中学の3年間三橋の捕手を務めた畠に球種がバレる。畠は球種さえ分かれば三橋の球は打てる。球種がバレてしまった状態でまっすぐを投げた三橋の球を畠はホームランする。三塁にいた織田と畠がホームに帰って三星に3点目が入ってしまう。2−3。三星が逆転。
逆転ホームランを打たれた三橋は膝に手をついて俯く。
三橋『阿部君のリードがいくらよくても実際投げるのはオレだ。打者とぶちあたれば弱いほうが負ける。オレのせいでチームが負ける』
三橋が崩れると思ったモモカンは西広を読んで伝令を頼もうをする…が、三橋は顔を上げて立ち上がる。
三橋『だけど投げなくちゃ。ここは投げる人間の立つ場所なんだから!』
三橋が投げる気をなくしてないことがわかったモモカン、三橋のことを『大したもんだ』と評価する。一方で捕手なのに自分がショック受けちゃってホームランを打たれた投手をほっとく阿部には『まだまだだぞ!』という評価。
阿部は織田と畠になぜ打たれたのか、自分は何か間違っているのかと困惑中。
6番はライトフライでアウト。三死で攻守交代。
阿部はとりあえず3アウト目を取れたことにほっとする。ベンチに戻る阿部は三橋がベンチに入らず、ベンチ横へと向かっていく姿をみる。
阿部『ベンチに…入らねェ。入れねェんだ。』
ベンチの外で体育座りする三橋
せ、切ないというか、痛々しい…。ベンチに入れないだなんて…。
阿部『オレの配給で打たれてもオレが打たれるわけじゃない。痛い思いしたのはこいつじゃねえか』
三橋の前に立つ阿部。目の前にやってきた阿部に気付く三橋。謝らなきゃと思いながらも顔を上げることができず目に涙を浮かべる三橋。
み、みはしぃぃぃ〜〜〜!私は今すぐ三橋を抱きしめて涙を拭ってあげたいっ!別に三橋が悪いんじゃないんだよォ。でも中学時代は三橋は打たれるたびにチームメイトから侮蔑されてきたんだよねきっと。だから今回もそうされるって思っちゃうんだよね。中学時代から三橋は打たれるたびにこうやってベンチに入れずにベンチの外で体育座りしてたのかな…とか想像したら、すごいつらい思いしてきたんだなって…なんかもう私が泣きそうだ。
体育座りで俯く三橋に「ごめん」と謝る阿部。「オレが自分の欲でアウトあせったんだ。三塁打もHRもオレの責任だよ。お前はよく投げてんだ。顔上げろ」
三橋は自分のほうが謝らなきゃいけないと思ってたのに阿部に謝られて驚いた顔。
三橋「なんで阿部君が謝るんだ…よ。欲って…?」
阿部「ノーヒットノーランを狙ったんだ」
三橋「それがなんで阿部君の…?」
阿部「おまえが三星に未練タラタラな顔してっから!ハッキリ差つけて勝ちたかったんだよ!!」
ここでモモカンに打順1〜3番の人が呼ばれて阿部は去っていく。
三橋は自分が三星に未練があると言われて『…オレが、三星に……』と考え込む。
モモカンは打順1〜3番の3人に4番の田島を敬遠させないために3人で満塁にするつもりで攻めろという。そして狙うのはもうすぐ投球数80球を超える投手の叶だ、と。叶が練習球をやめてるのを見てたモモカン。
モモカンよく見てるなぁ。監督ってスゲー仕事だ。
【8回表、西浦高校の攻撃】
1番セカンド栄口
叶になるべく球数を放らせるために1球目を見る栄口。ラッキーなことにボール判定。
2球目、フォークも見送り、ボールに。
畠は今まで積極的に振ってきたのに今回は2球も待たれたことで待球の指示がでてることに気付く。それなら2ストライクまでは楽に入れさせてもらおうと3球目は真ん中にストレートを要求する畠。栄口はここでバットを振ってファールにする。
4球目も真ん中にストレートを要求する畠。叶は内心『真ん中は気合がいるぶん疲れるんだぞ』と思ってる。これもバットに当ててファールにする栄口。
ファールにすることで球数増やせるし、投手にプレッシャーも与えられるし、真ん中を要求されてる叶は気合がいる分疲れるし、モモカンの指示をよく理解してきっちり仕事をこなす栄口。
5球目は畠はバッティングカウントだからきっと振ってくると見越してフォークで空振りさせることを狙う。が、栄口は振らずに見送り。これで3ボール。フォークが来るという読みが当たって「うあ〜よかった〜〜っ」と安心する栄口。
栄口君かっこいいー!
モモカンは栄口君の駆け引きの上手さにぞくぞくっと身体を振るわせる。
3ボールになってしまった叶はプレッシャーに負けて6球目大きく外してしまい、フォアボールに。栄口出塁。
叶は体力の限界が近づいてきているのか『クソ、気合じゃ誤魔化せなくなってきた。ブルペンでならこのくらいの球数こなしてるのにマウンドで放るとこんなに消耗するものなのか。三橋は中学からずっとこんなことやってたのかよ!』と三橋に尊敬のような気持ちを抱く。
三橋はベンチの外で体育座りしながら阿部に言われた"三星への未練"について考えている。
三橋『オレは三星に戻りたいのか!?』
2番ファースト沖
1球目、真ん中ストレートを要求する畠。沖は一瞬バントの構えだけしてすぐに引く。バントの構えにつられて叶は走ってくる。1ストライク。
叶はかなり体力の限界が近いようで息が上がってる。
2球目、デッドボールで沖が出塁。無死一・二塁。
3番キャッチャー阿部
畠がずっと真ん中に構えてる姿を見て待球だと思い込んでるんだと踏んだ阿部は1球目から真ん中を思いっきり振りに行く。阿部の打った球は二遊間を抜けて、無死満塁。
お膳立てが整ったところで高打率の4番サード田島
三星はタイムを取って作戦会議。ここで叶はフォークの握りをもっと深く握っていいかと問う。つまり叶はもっと深く落ちるフォークを持ってるけど、畠の捕球がおぼつかなくて今まで投げられなかったということ。
1球目から深いフォークをなげる叶。初回の浅いフォークだと思っていた田島は空振り。見逃せばボールになる球なので待球させようとするモモカンだが、田島は目の前の叶に集中していてサインの確認を忘れてる。
2球目も深いフォーク。まだ捉えきれない田島。バットを空中でクルッと回してパシッと掴む田島。『今度はしっかり計った!』と次は打てる気満々の田島。
このバットをクルッと回すところかっこよくて好きです。バットってこんなきれいに回せるものなの。そしてそんなうまくキャッチできるもんなの。私運動音痴だから絶対無理だ〜。
あと田島が大事な場面で発揮するスゴイ集中力も好き。集中してる時の凛とした顔、かっこいい。
3球目も深いフォークで来るかと思いきやまさかのチェンジアップ。バットを不利にでちゃってる田島、なんとか踏ん張ってバットに球を当てる。ライトフライで打者田島はアウトだが、三塁にいた栄口はホームに帰って西浦に3点目。同点。ランコーは三星のセカンドが肩が弱いと踏んで沖にも三塁蹴って本塁へ向かわせるが、これはアウトに。二死三塁。
三橋はまだベンチの外で体育座りしながら三星への未練があるかどうかについて考えてる。そんな三橋ににアウトになって戻ってきた田島が近づく。
田島「オイ。無死満塁だったのに1点しか入れられなかった。4番のくせにカッチョワリーけどベンチに帰れないことはねーよ。お前力全部出してんだろ。守ってりゃそれはわかるから一緒にベンチ帰ろうぜ!」
ここ…ここ…すごく好き…ありがとう田島君。このシーン、なんか読んでて泣けてくるんだよね。田島が三橋のことを認めてくれてるのが伝わってくるじゃん。そんで一緒にベンチ帰ろうって声かけてくれるのがさ、すごくイイよね。田島君ホントにいい子だし、スゴイ子だよ。
5番ライト花井
畠は花井には普通のフォークで充分と考える。が、ここで意外にも花井はバントをする。しかもノーサインで。三塁の阿部は二死ならファーストへ送球するだろうと踏んで本塁へダッシュする。投手の叶が捕球してファーストへ送球しようとしたところで足を滑らせて転ぶ。阿部はホームへ帰還。花井も生きて、西浦に4点目。逆転。二死一塁。
田島「おっしゃ!!」と叫びながら三橋に抱きつく。三橋は抱きつかれたことに驚いて「わ、わ」と言葉が漏れる。
この田島が三橋に抱きつくところがスキだーッ!今後この二人はどんどん仲良くなっていって田島がしょっちゅう三橋に抱きつく姿を見れるようになるんだけど、たぶんこのシーンが初めて田島が三橋に抱きついたシーンだと思う。この時は抱きつかれて動揺してる、というか若干固くなってる三橋が今後だんだん慣れていって、ほぐれていくその変化の様子が見て取れるのがイイんだ。そんなほぐれた姿を見た後にここに戻ってくるとそれはそれで感慨深いものがあるんだ。
逆転されたこと、自分が足を滑らせたことで「クソ」と悪態をつく叶。織田はそんな叶を見ながら『一番しょいたい人間がマウンドでその態度はアカン』と考える。目をゴシゴシと擦る叶。泣いてるのかと勘違いする織田だが、叶は「目に汗が入っただけだ」と答える。情けない自分への怒りはあってもそれによって逆転されたことを仲間に詫びたりはしない叶のその姿勢を見て、織田は『お山の大将はそれでいい、オレはそういう投手がスキなんや』と評価する。
そっかー。三橋だったら絶対すぐ謝るだろうな。自分がふがいないところがあっても謝らないで堂々としてるガキ大将みたいな投手が好きって言う人もいるわけね。チームによって投手のあり方も様々というわけだ。じゃあ、やっぱり三橋には三星のこの学年のこのチームは合ってなかったってこった。三橋、三星を出て西浦に来てよかったな。西浦、いい子たちばっかりだからね、ホントによかったな。
一方西浦のベンチではモモカンが武者震いをしてる。あの場面で硬球を恐れずバントという選択を選んだ花井への評価も上々。ここで田島が三橋をベンチに引きずってくる。
モモカン『おっとう田島君が連れてきたか!』
ベンチに入るのに抵抗する三橋に背中でタックルをかましてベンチに押し込む田島。ベンチに戻ってきた三橋に「あ!復活した!」(誰の発言か不明。栄口かな?水谷かな?)
水谷「なんだよもー心配すたじゃんかあ!オレがフライ落としたせいだって思ったぞ!」
西広「平気?」
栄口「せめてベンチン中でおちこめよな!」
と優しく声をかけてくれる西浦のチームメイトたち。皆の優しい掛け声に顔を赤くする三橋。田島は三橋の肩をたたいて「に!」と笑う。田島にタックルされた拍子に落とした帽子を三橋に被せてくれる西広。栄口は「お前ちゃんと水分とれよ」と飲み物まで手渡してくれる。
あーーー!!西浦のチームメイトのみんなが三橋に優しくて、そんな様子を見ている私も胸がいっぱい。感無量。西浦ーぜ、尊いっ!!
三橋『オレは確かに三星に未練があった。だけど だけど だけど――…』
どうやら三橋は西浦のチームメイトの温かさに触れて三星への未練を断ち切れたようですね。
そうこうしているうちに6番ショート巣山はスリーストライクでアウトになったため三死、攻守交代。
【8回裏、三星学園の攻撃】
7番8番は凡退。
9番ピッチャー叶
まっすぐに狙いを定める。狙い通りの球が来てシングルヒット。二死一塁。これで9回裏に織田まで打席が回ることが確定し、一安心する。
1番宮川は三振となり三死で攻守交代。
【9回表、西浦高校の攻撃】
7番センター泉、8番レフト水谷、9番ピッチャー三橋
三者凡退
【9回裏、三星学園の攻撃】
打席に立っていた三橋に帽子とグローブを持ってくる阿部。メットとバットを受け取る西広。
4番の織田には前打席で三塁打を打たれたが4番の前にランナー出さなければいいんだと声をかける阿部。ここで三橋は4番の前打席で打たれるって思ったことを伝える。「はあ!?なんで!?」と驚く阿部。
三橋「よくわからないけど、一球目目をつぶって振ってて…なんか変だったから!!だと思う!!」
意を決して阿部にモノ申した三橋は『あ〜〜言えた!』と安心したのも束の間、驚いて呆けた顔してる阿部の顔をみて『う!?怒ってる!?逆らう気はないっ ないよおっっ』と青くなる。
阿部「なんでその場で言わねえんだ!!ノロマ!!」
三橋、ぎゃいーーーーっという擬態語とともに涙目。
このコマ、すごい好き。ていうか阿部隆也が青ざめてる顔を見るのが好き。青ざめながら怒ってる阿部の顔ってなんかコミカルでイイよね。あと普段仏頂面な男が表情豊かになる瞬間ってイイよね。
それに少し前まで猫被ってた阿部隆也が本来の姿を見せるようになってきたっていうところもグッとくるポイント。初対面の日や合宿初日の阿部は内心悪いことを考えてても表面上は取り繕ってたもん。心開いてません〜って感じだったじゃん。まだまだ仲良しとは言えない二人だけど、阿部が本性見せられるくらいにはなれたってことで、一歩近づいたってことなんじゃないでしょうかね。
阿部は三橋の言葉のおかげで前打席は織田に内外の揺さぶりが効いてなかったことを認識する。そして、つまりは自分の考え方は間違ってなかったとニィっと不敵な笑みを浮かべる。
阿部「よし!これで行けるぞ!ビビんなよ!!」
三橋「うん!」
三星の監督は三橋が"目をつぶって"と阿部に伝えていたことを聞き取る。『捕手にバレたからもうあの手は使えない。あとはもう選手に託すしかない。』
2番センター柊
『三橋に負けたくない!』という思いは叶わずファーストフライでアウト。一死。
3番ショート吉
前打席のように『もう一度オレから流れをかえてやる!』と意気込むも打ち上げてしまい、フライキャッチでアウト。二死。
4番ファースト織田
三星の皆は織田に希望を託す。
1球目は全力投球のまっすぐ。織田は見送り。ストライクになる。
三橋は『打たれるかもしれないってすっごいドキドキしてる。だけど、中学の時とは全然違うドキドキだ』とポジティブ。
2球目は外に遅い球(まっすぐかな?カーブかな?)。これはファール。
3球目、阿部は遊び球は放らずここで勝負することに決める。織田も来る!と直感してる。
叶「織田!!おわんな!!」
三橋『オレは今マウンドで勝負を楽しんでるんだ。オレはここで―――』
3球目を投げる三橋。内にまっすぐを打てない織田、空振り。
これでゲームセット。西浦高校の勝利!
三橋『ホントのエースになる!!』とガッツポーズ。
栄口、巣山を始めとした西浦のチームメイトが笑顔で三橋のところへ駆け寄ってくる。
勝利の後にチームメンバーが投手のところに駆け寄ってくる描写、私大好きっす!
試合後、畠から名前を呼ばれた三橋、ぴゅっと逃げ出す。しかしそんな三橋の首根っこをがしっと捕まえた阿部、三橋を元チームメイト達の前に差し出す。ビクビクしてる三橋。
阿部『オレたちゃ勝ったんだ。大丈夫。何言われてもこいつは三星に戻ったりしない!』
固唾をのんで見守る阿部。
畠「お前の中学時代をオレがメチャクチャにしちまった。オレが悪かった!ごめん!」
頭を下げる畠。続けて他のチームメイトも「オレも悪かった!ごめん!!」と頭を下げる。青ざめながら驚いた表情の三橋。阿部も西広もその勢いに驚いてる様子。
畠「……っ つぐなうチャンスをくれないか」
モモカンと阿部が「!!」と焦った様子。
畠「……戻って来いよ」
驚いた顔の三橋。緊張した面持ちの阿部。栄口と田島も様子を窺っている。
阿部『戻らねえってハッキリ言え!言ってくれ…!』
三橋「…も…ど……らない」
言ってくれました!よかったね阿部!
叶「なんでだよ!今日負けてやっとみんなお前の力認めたんだぞ。やっとオレの言ってたこと証明されたのに、お前の捨てた1番オレに拾えっつうのかよ…!」
三橋「!! すっ捨ててないっ。三星のエースはずっと叶君だよ。それをオレがムチャしてみんなの中学時代をぶちこわしたのはオレじゃないか!オレのせいで"野球"になんなかったじゃないか。なのにオレあやまりもしないで逃げちゃって…。でも今日は来て…よかった!だってオレはずっとみんなと"野球"したかったんだ。今日みたいにずっとしたかったんだ。」
切ない〜〜!!チームメイトから嫌われてイジメられてた時からずっと三橋はみんなと野球がしたかったんだ。ホントはみんなと仲良くしたかったんだ。でもずっと叶わなかった。それが今回ようやく、敵同士だったけど、ようやく叶ったんだ…。切ねえよ、三橋。
叶「野球したっつったって敵同士じゃねえか。ずっと一緒だったのに転校までしちゃってお前一人でさみしくねーのかよ!」
くるりと後ろを振り返り今の西浦のチームメイトを見つめる三橋。「!」と面食らう阿部。
三橋→叶「ないっ よっ」
いいシーンだ。そして後ろで笑ってる栄口君がかっこいい。
叶『そんな風に言われたらこっちがさびしくなるじゃんかよ……』
畠「そりゃそうだよな。もうそっちのチームで動き始めてんだもんな」
畠は「ウチも外から来たヤツ入れてもう中学とは別のチームとして動き始めてる」と言う。そして叶に対して「お前はそこの中心になるんだからもう三橋の影にはかくれてらんねえんだよ」とハッパをかける。叶は「そんなこと言ってねーだろお」と反論する。
三橋「ま、また試合しよっ」
頬を赤く染めながら元気に提案する三橋。が、「……イヤ…し…してくださ…」と急に弱気になりビクつき始める。そんな三橋に内心『しゃんとしろっ』とイラついてる阿部。叶は「絶対 な!」と返事し、再戦の約束を交わす2人。
ここで畠がまっすぐのクセが出てたことを教えてくれる。他のも洗い出せよと指摘。(叶と吉は内心『あ、教えちゃった』と思ってる。)それから畠は「試合には負けたけど投手としては叶の方が上だ」と宣言し、叶は青ざめながら「負けてもゆうか〜〜」と畠の胸倉を掴む。三橋は当然と思ってるのでキョトンとした顔。
合宿所に戻ってきた西浦のみんな。洗濯物を干し終わった阿部はこちらに背中を向けてしゃがみこんで動かない三橋に気が付く。
阿部『…?マメでもつぶしたか?』
三橋に近づく阿部。
阿部「何やってんだ?」
グラリと倒れる三橋。「わ」と驚く阿部。
花井「どした?」
横から栄口も様子をうかがっている。
阿部「あ、や、なんか」
三橋の体を支えながら焦る阿部。ヒョイと顔を覗かせたモモカン「寝ちゃった?」
阿部「あの…寝かせといてもいいすか。こいつこの頃眠れなかったみたいで」
三橋を気遣う阿部君!この短時間で変わったよねえ!(阿部が三橋の右手を握って"捕手をわかった"のはこの日の午前中の出来事ですからね。)
ニコッと笑って「風邪ひかないようにフトンに寝かせてあげて」と答えるモモカン。阿部と花井と栄口の3人でフトンを用意して三橋を移動させる。わさわさ揺らされても持ち上げられても全然起きない爆睡中の三橋。
モモカン「この安心は阿部君があげたんだよ。阿部君が三橋君に信頼されたってこと。捕手が投手に尽くした分を投手は信頼で返すのよね。信頼されるっていいもんでしょ」
阿部『こっちからの一方通行じゃないんだ』
なんだか少し嬉しそうな顔の阿部。寝てる三橋の姿を見つめる。
『オレは3年間お前に尽くす。西浦を選んでよかったって必ず思わせるからな!』
"捕手をわかった"阿部君が、三橋への献身を心に決めるの、良いですなぁ。バッテリーの関係がまた一歩良い方向へ進展しました。
<第5回終了>