おおきく振りかぶって 原作漫画感想 3巻 <第8回>
<第8回 / あらすじと感想>
阿部隆也の回想シーンから始まる。
あいつの前に座ると体が震えた
誰だって痛いのは怖い
だけどあの球を捕ればレギュラーになれるのは確実だった
あいつと組めたことを幸運だと思っていた
中1の秋、監督に呼ばれる阿部。今日からシニアチームに入るという中学2年生榛名元希を紹介される。
中一の阿部隆也ちっちゃーい!髪短ーい!かわいーい!
帽子を取って「ちわっ」と挨拶して頭を下げる阿部に対して榛名はフイッと顔を背けて仏頂面で「……ちわ」と返す。態度の悪い榛名に戸惑う監督と阿部。この頃バッテリーを組む投手が決まっていなかった阿部に監督はしばらくは榛名と組むように言う。メニューと球数を指定しようとする監督をさえぎって榛名は「あ、オレ自分で決めます」と答える。戸惑う監督。
榛名「あと試合でも80球しか投げないんでそれでもいいなら使ってください」
不遜な態度の榛名に対して及び腰の監督、「とりあえずお前の捕手はこいつだから。じゃ、また練習の後でな!」と去っていく。
戸田北シニアの監督、不甲斐なさすぎない?不遜な態度の榛名を窘めることもせずに及び腰で阿部に押し付けていくの腹立つんだが。
監督の去った後
榛名「ちいせえなァ何センチ?」
阿部「160です」
榛名「一年なんかが的じゃおもいっきり投げらんねェな」
ムカっとする阿部。"的"という言い方もひっかかる。
捕手を"的"呼ばわりって…性格の悪さがにじみ出てるな。
阿部「なんでですか」
榛名「ケガすっからだよ」
阿部「防具付けてりゃしないです。打者が立つわけじゃないしそこまでキャッチング下手じゃないです」
榛名「……オイ、ケンカ売んなよ」
凄む榛名。阿部は一瞬「……っ」と怯むがそれでも言い返す。
阿部「ケンカなんか売ってませ…」
榛名「オレはムカついたんだよ」
バチッと火花を散らす榛名と阿部
榛名「下手じゃねえっつったな、テメーの言葉に責任持てよ?」
ドカッという音を立てて阿部のみぞおちのあたりにぶつかる榛名の球。ゲホッゴホッと激しく咳込みうずくまる阿部。それを隣で見てる別の捕手も冷や汗をかいてる。「そろそろ時間だよね!全員あがりにしよう!」と榛名を止める。「タカヤ大丈夫かよ」「カントクよぼっか?」と心配する捕手メンバー。阿部は涙を流しながら「くそお…っ」と悪態をつく。
防具付けててもここまでむせかえる程の剛速球ってこと?榛名まだ中2なのに…。榛名の球捕れないの阿部がキャッチング下手なわけじゃないよね?中学の部活では榛名の球とれる捕手いたのか?あ、秋丸がいたのか…。
榛名の球捕れないのは榛名のせいじゃないけどさ、それにしたってボールぶつかってこんなにむせかえってうずくまる程痛がってる阿部に対して、榛名は半年間もの間容赦なく何球もボールぶつけてたのかと思うと腸が煮えくり返りそう。捕れないのは捕手の技術不足、確かにそうなのかもしれないけど、榛名だって阿部が捕れないのわかっても何球も投げてたんでしょ。そんなん故意にボールぶつけてるのと同じじゃないっすか?どうなのよそれって。
中1の冬、部室での着替え中にアザだらけの阿部の体をみて「キタネエカラダ!」と声をかける榛名。
榛名「でもオレ最近は当ててねーよな?」
阿部「え、新しいのもあるけど」
榛名「どれ」
阿部「これ。この間チップ食らったやつ」
みぞおちのあたりを擦る阿部。
榛名「あー転げ回ってたアレね。でもありゃオレのせーじゃーねーよな」
阿部「じゃコレとか」
左腕を指さす阿部。
榛名「わははナニコレ縫い目までクッキリじゃん」
阿部は青ざめながら『てめーの投げたボールで付いたアザだぞ。ノーコンヤローめ。』と内心悪態をついてる。
阿部『でも結局はオレの技術のせいか』
榛名「まァ、遠慮なしに投げてるからな」
阿部の頭にポンと手をのせる榛名。
榛名「お前怖がんねーからよ」
ポンと触られた頭に手を当てて『今褒められたか?』と嬉しくなる阿部。
阿部「よっしゃあっ」
過去の回想が終わって現在の阿部隆也。浦和総合と武蔵野第一の試合を見ながらスコア予想ゲームをしている。そろそろ3回が終わるためスコア予想を書き終える必要がある。
阿部「もーこれでいーや」
栄口「できた?見して」
阿部「ん」
栄口「おお、三振予想9かよ!榛名さんの評価高いんじゃない!」
阿部「四死球も9だろ」
栄口「ありゃホントだ。ノーコンなの?」
阿部「そらもう」
栄口「それが"最低"の理由?」
阿部「え……それは…」
理由を聞かれて『気になったか。言うんじゃなかったな』と内心思う阿部。
"最低"の理由を話したくないらしい。というか嫌な過去を思い出したくないのかな。
ここで栄口は三橋を呼ぶ。
阿部「!?」
ちっとも試合を見てなかったので慌ててスコア予想を描いてる田島と三橋。急に呼ばれてビビる三橋はにげよかどしよかと迷ってる。
逃げるなよwなんで逃げるんだよw
再度栄口からチョイっと手招きされて「やっぱオレ!?」となおビビる三橋。
栄口「そーだよお前を呼んでんだよ!」
なんで三橋を呼ぶのかわからない阿部は戸惑う。
この戸惑ってる顔の阿部隆也の顔整っててすき。というか基本的に阿部隆也の顔がスキ。特に初期の顔。タレ目に小さな瞳孔に吊り眉にツンツンした固そうな黒髪、全部いい!阿部隆也の見た目スキ。いやもちろん中身もスキだよ?
スコアを書き終わって栄口のところにやってきた三橋。
栄口「三橋も気になるだろ。なんで榛名さんが」
阿部は「え…オイ」と栄口を止めようとする。
栄口「"最低の投手"なのか」
三橋はドキッして狼狽えた表情を見せる。そしてサーッと青ざめていく三橋。
栄口「ホラ気になるって」
そんな三橋を見てる阿部も青ざめながら「オレもずっと気になってたんだけど、お前そんな顔に出やすくてそれは投手としてどうなんだ?」とゆらりと三橋に迫っていく。三橋は「う、うううぅ」と泣きそう。栄口はそんな二人を「まあまあ、それはちょっと置いといて!」と窘める。
私は青ざめてる阿部隆也の顔がスキだ!(いつも言ってるけどw)
ここで4回に入りようやく榛名がリリーフ。早速三振を取る。
観戦中の桐青高校では起きた利央が「別に普通っすね」と榛名を評価。和己は「まだ打者1人みただけで気が早いな」と言う。また榛名に対してやけに攻撃的な利央に「つかお前榛名になんかあんのか?」と問う。ピクッとなる利央。そこに準太がニッと笑って美丞大狭山のコーチをやってる利央の兄の呂佳が榛名をスカウトしたが振られたことを話す。しかも弟の利央はスカウトしなかったらしい。フルフル震えながら涙目の利央。利央をいじめて楽しそうな準太。和己はコーチをやり始めた呂佳を漢気があると褒める。準太は「和さんだって頼まれたらやりそうだ」と言い、和己は褒められて照れる。利央は夫婦漫才キモイという反応。
場面切り替わって、西浦高校サイド。
栄口「阿部が関東大会に出たのは中2だろ。中2でレギュラーだったんだよな?」
阿部「榛名がエースだったんだよ。オレはたまたま榛名の壁やってたから」
他の捕手は榛名の球を捕れなかったから結果阿部が中2でレギュラーになったという。
栄口「じゃ榛名さんのおかげでレギュラーなったようなもんじゃない」
ピクッとして不愉快そうな顔をする阿部、「だからなに?」。栄口はすこし狼狽えながら「だから…組んでた人のこと"最低"とかいうの聞くと今組んでるものとしてはいい気持ちしないんだよ」と言う。
阿部「………」
しばしの間無言で考え込む阿部。くるりと三橋の方を向き「そっか?」と問う。「う、ううっ」とキョドる三橋。
このコマの阿部隆也の顔が整っててスキ。可愛い。
阿部「一体何なんだそのリアクションは〜〜〜っっ イミわかんなくてイライラするっっ」
三橋にウメボシを食らわす阿部。栄口は「あーもー話がすすまねえっっ」とガックリ。
これがアベミハ初のウメボシかな?
榛名は3アウトをとって攻守交代。四死球なし。
阿部にウメボシを食らった三橋は目をぐるぐるさせながら「オ、オ、オレは…っ、サ、サ、サイテーでも!一生懸命!なげる!だけだ!!」と宣言する。
阿部&栄口「……」
阿部「グルグルしすぎだろ。誰がお前を最低だっつったよ」
呆れる阿部。栄口は『計り知れない思考回路だ』感じながら三橋の背中をぽんぽんとたたいてあげる。
阿部『くそ』
三橋が"自分が最低だったとしても…"と言い始めたからなのか、榛名が"最低"の理由を話すことに決めた阿部。
三橋は最低じゃないって伝えるために話すことに決めたってことかな!愛だね!愛!
阿部「ふう、お前とは全然違うんだよ榛名は。榛名はプロになるために野球やってるんだ。」
三橋「プロになったらスゴイ」
阿部「そら"スゴイ"よ。あいつは"スゴイ"からエースナンバーもらってからだって絶対に80球しか投げないし、全力出す価値のない試合では1球だって全力じゃ投げなかったよ。でも81球で絶対交代なんてアホらしいだろ。身体が商品のプロだって100球を目安にはしても状況に応じて交代するんで、101球目で交代なんかしねーもんな。あと指を蚊に食われたからスライダー投げねえってのもあったな。スライダー投げる時ちょうど当たるっつって、そこ気になって肩だの腕だのに変な力入ったらヤだからってサ。」
へー、プロになるための球数管理なのに結果敵に野球に対して不誠実になってたらそりゃ本末転倒な感じするけどね。
阿部「あいつ中学で故障したらしくてな、もともと俺様な性格の上に防衛本能に火がついてものスゲー扱いづらいヤツだったよ」
再び阿部隆也の回想開始。
榛名「サインなんかイラネーんだよ。どーせ半分しか思ったところ行かねーんだから」
阿部「だからって無視することないでしょ。あの6番は元希さん程度のスライダーでも空振ってくれるありがたい打者なんすよ!」
榛名「オレ程度で悪かったな!投げたくなかったんだからしょーがねーだろ!」
阿部「こっちゃあんたのヒデエコントロールに文句言わないでリードしてんだぞ!せめて球種くらいサイン通り投げろよ!」
榛名「うるせえ!投手には首振る権利があるんだよ!!」
しかしあの俺様で強気で先輩の榛名相手にも臆せず言いたいことハッキリ言うところ、さすが阿部隆也だよな。
現在の阿部『そらそうだけど、お前にそれ許したら全部自分の都合だけで投げるじゃねーか』
それでもまだあいつと組めたことを幸運だと思っていた
……オレたちはいいバッテリーだと"あの試合"までは思っていたんだ――……
再び阿部隆也の回想に戻る。
先発投手が5点とられてしまってごめんと謝りながら泣いている。他チームメイトは「泣くなよバカ」「まだ初回じゃんか!これからせめるし」「あとは元希が投げてくれる!」と励ます。まだ勝つ気でいる。
榛名「5点は無理だな」
しかし榛名はもう諦めていた。阿部は『確かにうちの打線で5点は厳しい。でも榛名が本気で投げてくれれば望みはある!』と考え、榛名に全力投球してくれと頭を下げる。
榛名「イヤだね」
きっぱり断る榛名。
榛名「その代わりお前のサイン通りに投げてやるよ」
現在の阿部『サイン通りに投げるって言ったって半分は逆球だ。あいつへのリードにコースは意味ねえ。ストレート、スライダー、力いっぱい投げたストレート、せめてこの3つで組み立てなきゃカタチにならねえんだ。あいつはそのことをわかってた』
わかってたの!?わかってて全力投球しない"代わりに"サイン通りに投げてやるとかいってきたの!?すっっっごいヤなヤツじゃない?
再び阿部隆也の回想に戻る。
阿部「10球でいいです。じゃ8…5…3球…!なら1球!1球でいいから投げてくれませんか!?その球があるって相手に知らせるだけでいいんです。」
どうしてもと食い下がる阿部に対して榛名は「しつこい!それ以上言ったら今すぐマウンド降りる」ときっぱり断る。
これはヒデェ…。榛名にマウンド降りられたら勝利は絶望的なわけで、そしたらもうこれ以上言えないよな。それをわかってて、マウンド降りるぞって言ったんだ。これはひどいよ、こんなエースやだよ。こんなのエースじゃないよ。いくら剛速球投げれてもこんなのエースの資格ないよ。
でも榛名が投手やるからここまで勝ててきたのも事実で、その事実があるゆえに余計残酷。
榛名のフォアボールで打者出塁。ノーアウト満塁となってしまう。そこで指で何かを数えた後、マウンドを降りていく榛名。
阿部『え!?まさか今のが80球!?公式戦なのに、自分の四死球で満塁にしたのに、80球投げたらマウンド降りていいのか!?そういう約束で投げてるから?故障したらだれも責任取れないから?あいつの力で勝ってきたから?』
呆然とする阿部。
阿部「オレなんのためにここに居るんだ?オレ何のためにあいつの球捕ってたんだ」
あまりの惨い仕打ちに読んでるこっちが泣けてくる。
阿部はたくさんボールぶつけられて、痛くて体が震えるほど怖くて、それでも頑張って榛名の球捕れるようにすごく努力したのに!そしてそれは勝ちたかったからなのに!なのに公式戦の関東大会のベスト8が決まる大事な"本番"の試合でこんな風に試合放棄されたらそりゃ自分のこれまでの努力は何だったんだってなるよ。
しかも今日は榛名は全力投球してくれない中でがんばってリードしたのに。これはこれまで榛名の捕手を務めてきた阿部への裏切りだ。
結果21−7で負ける戸田北シニア。トイレで涙を流す阿部。
阿部『なんでオレがチームを辞めたくならなきゃならねーんだ。あいつが』
そこに負けても平然としている榛名がタイミング悪く入ってくる。「はあ」と溜息をつく榛名。
榛名「泣くほどのことかよ……」
ブチキレる阿部、榛名の胸倉を掴み壁に叩きつける。
榛名「てめえ左肩ケガしたらどうすんだよ。はなせ!」
この期に及んでなお自分の体のことだけを案じて、胸倉を掴みかかるほどに阿部が感じている心の痛みを微塵も理解しない榛名。
過去の回想が終わって現在。物思いにふける阿部を心配そうに見つめる三橋と栄口。はっとする阿部。
阿部「…………わり」
話の途中で考え込んでしまったことを詫びる阿部。
阿部「あいつにとってはオレたちチームメイトは"練習道具"でしかねェんだ。結局あいつが引退するまで組んで何度かでかいケンカもしたけどあいつの姿勢はずっと変わらなかった。榛名はオレたちとは全然違う次元で野球やってんだよ。そういうのもありなんだろうし、スゲエとも思う。けどオレはあいつをチームのエースとして最低だと思うし、オレは二度と組みたくないね」
途中で回想シーンが入ったせいで阿部が三橋と栄口にどこまで具体的に話をしたのかよくわからないんだけど、チームのエースとして最低だって話をしてるってことは、関東大会のベスト8の試合で全力投球してくれなかったことやフォアボールでノーアウト満塁にしておきながらマウンド降りていったことは話したってことよね?
阿部の話を聞き終わった三橋は震えながらガバっと顔を地面に伏せる。戸惑う阿部と栄口。三橋はかつて阿部が
"マウンド譲りたくないのなんて投手にとっては長所だよ"
と言ってくれたのは榛名を見てたからだと気付く。
三橋『阿部君が榛名さんを許せないのは"チームのエースとして"じゃない。"自分のエースとして"だよ。阿部君は榛名さんにちゃんとこっちを向いてほしかったんだ。榛名さんとちゃんとバッテリーになりたかったんだ。プロになってからじゃなくて阿部君と今やってる野球を大事にしてほしかったんだよね』
三橋はよくわかってるなァ。
ちょっと話それるけど、三橋も中学時代畠とちゃんとバッテリーになりたかったのかな。畠にこっちをむいてほしかったのかな…って想像してしまってちょっと切なくなった。
ムクと起き上がる三橋。
阿部「お前さァもうちょっと泣いたりキョドったりするの我慢できた方がいいぞ。マウンドでの話だぜ。そんな顔に出てたら守っててバックが困っちゃうからな。」
三橋「!」
阿部「マウンドでは……そうねェ、無表情もいいけど……やっぱ笑顔がいいね」
ニッとさわやかな笑みを浮かべる阿部隆也。
お、おお!!お、お前、阿部隆也、そんなさわやかに笑うことできるのね!?お前ホントに阿部隆也かーーっ!?
栄口&三橋「………っ」
突然の阿部の満面の笑顔になんともいえない表情の栄口&三橋。
驚いてる?面食らってる?そしてちょっと動揺してる!?わかる、分かるよその気持ち!
阿部「バックは安心するし相手はムカつくし、やってみな。ホラこうニイッと。」
ニィっと笑って手本をみせる阿部。栄口は顔を赤くしてる(笑いをこらえてる?)し、三橋はものすごい汗だく。
三橋、「あ、う、に……にい」
両頬を手でぎゅっと握って引っ張り無理やり「に」と笑う三橋。
栄口「ぶはっ!いーぞ!なんか頼もしいぞ!」
三橋「ニヒ、ヒ」
阿部は腹を抱えて「はっはっ はっはっはっ!!」と身体を振るわせて笑ってる。
阿部君がすげー笑ってる!!腹抱えてる!身体震えてる!これまた珍しい〜!顔を伏せてしまっててどんな表情してるか見えないのがちょっと残念。こういう時、阿部君はどういう顔して笑うの?
栄口「しかも打者的にはスゲームカツク!」
三橋「ウヘヘ……」
三橋『――阿部君にはオレが投げる』
ひとしきり笑い終わって頬染めてまださわやかな笑顔の阿部。まだ身体を振るわせて爆笑してる栄口。
わー!阿部君の普通の笑顔だー!珍しー!阿部隆也という男はいつもニヤリと不敵な笑みばかりですからね。この先もなかなかこんな普通に笑ってる阿部君にはめったにお目にかかれません。皆さん目に焼きつけましょう。
栄口「はーー……わらった。ところで今の話オレからみんなにしてやってもいい?」
阿部「は?」
3人の話に聞き耳を立てていた花井・泉・栄口・モモカンはビクッとなる。
ところで"今の話"ってどれのこと?阿部が榛名を最低の投手だと思った経緯のこと?それともこれからは三橋がマウンドでニイっと笑顔で投げるって話?たぶん前者よね?栄口は何のためにみんなにその話をしたいんだ?
阿部がかつて組んでいた元チームメイトの榛名を最低だって言ったのは榛名が自分たちを"練習道具"としてしか思ってなかったからだって説明することでオレらはそんなことしないから阿部に最低だなんて言われないよってことを皆に伝えて安心させておきたいってことかな?
もし後者ならあの阿部がさわやかな笑顔で"マウンドではやっぱ笑顔がいいね!"って言ったのと必死に笑顔のマネする三橋がおもしろかったから皆に話したいってことか?
試合は武蔵野第一が中盤に逆転し4−3のまま最終回。あとアウト1つ。ランナーなし。ボールカウント2−1。榛名がくるりと3塁側を向く。阿部に向かってグラブをもった右手を突き刺す。榛名の合図に気付く阿部。
栄口「ね、今の……」
阿部「田島!見とけ!」
試合観戦に飽きて泉・水谷と遊んでいる田島を呼ぶ阿部。榛名が全力投球のストレートを投げる。武蔵野第一の捕手、榛名の全力投球を後逸。打者走者1塁へ出塁。いきなり全力投球してきた理由がわからない捕手はタイムをとって榛名に声をかける。
榛名「スンマセン。もうしないっす。」
次からはいつもの8割の球にもどる榛名。田島は「なんだよぉ1球だけェ!?ツマンネ〜〜〜」と不満げな様子。阿部は何か考えてる様子。そんな阿部の様子をチラチラッと窺っている三橋。阿部は三橋の目線に気付いてプチッとキレる。
考え込んでる顔の阿部隆也、美しい顔してる。そして毎回言ってる気がするけど阿部がキレる時の青ざめた顔大好き。阿部にはいつも青ざめててほしい、かもしれないw
阿部「キョドんなっつってんだろっ」
三橋「うう〜〜っっ」
またウメボシをかます阿部
栄口「ははは、お前らホント打ちとけたよなァ」
試合は武蔵野第一の勝利。
モモカン「さて帰ろっか」
花井「二試合目は観ないんですか?」
モモカン「あの辺が限界だからね」
氷オニで遊んでいる田島・泉・水谷を指さすモモカン。帰りもランニングするらしい。恥ずかしがる花井。
観戦していた桐青高校
準太「1球のために半日仕事でしたね」
和己「1球見れただけでもよかったかもよ」
準太「明日はもっと放るでしょ?」
和己「同じだよ。問題は捕手だからな。」
利央『アホだぜ榛名、美丞大狭山に行ってりゃもっとましなキャッチャーと組めたのに』
榛名は3塁側観客席にいた阿部が帰ってることに気付く。野球場の外まで探しに行くがもうそこにもいない。
榛名「クッソあいつ待っておけっつったのに」
追いかけてきた秋丸「ああ、"タカヤ"?シニアで組んでたキャッチャーだよね」
榛名「何で知ってんの?」
秋丸「中学ん時よく話にでてたよね。オレとよく比べてたじゃん。シニアにオモロイ1年がいるんだって自慢気にさ」
榛名「………そりゃ捕手としてはいいんだけどさ、あいつ人のことサイテー呼ばわりするから……」
秋丸「はあ?そらまたなんで?」
榛名「知らねえ。勝って一言言ってやりたかったのによっ」
榛名自分がサイテーなことした自覚ないのか〜…。イジメとかもイジメた側は覚えてなかったりするよねぇ…。それと似たようなもんかね。
てか勝って何を言いたかったんだろ?
秋丸『中学の部活で揉めて部も野球もやめると言ってた頃の榛名はホントに怖かった。目がすさんでて家でも学校でも誰も近づけなかったんだ。あの榛名と正面切って付き合ってたとしたら――……』
ぶるっと身震いする秋丸。
秋丸「オレ"タカヤ"の気持ちわかるわ」
榛名「なんでだよっっ」
秋丸『シニアに入って榛名はゆっくりともとに戻ってった。その間……タカヤはずっとつきあっててくれたんだ。そりゃ苦労もイヤな思いもしただろうな。自分が腐ってた時のことなんか榛名には忘れちゃってほしいけどこいつが今当たり前に投げてることオレはタカヤに感謝する。』
それ阿部に言ってあげてほしい。まあ、それでも阿部の努力は榛名の"裏切り"によって報われなかったという事実は変わらないし、阿部のおかげで更生した榛名が今別のチームでちゃんと野球をやってるという事実は阿部にとってはむしろ残酷な話なのかもしれないけど。それでも自分が榛名の球を捕ってたことが榛名の更生につながったことを知ったら、少なくとも自分の努力は完全な骨折り損ではなかったと知れたら、少しは阿部の心の傷は癒えるんじゃないかと思う。
西浦高校裏グラに戻ってきた西浦野球部。
モモカンはさっそく部員のスコア予想を見ながら採点。三橋と田島は0点w
<第8回終了>