ソフのたまねぎ ※本サイトは各作品のネタバレを含みます

おおきく振りかぶって 創作 <バレンタイン・トーク>


※注意:コミックス35巻のネタがあります※

※注意:若干BL要素あり?アベミハ、タジミハ、タジハナっぽいかも※


バレンタイン・トーク


2月14日、それはバレンタインデー。女子が好きな男子にチョコレートをあげるとされている日だ。放課後の部活開始前、部室での着替え中に三橋が女子からバレンタインチョコを貰ったことを田島は野球部のみんなに報告した。どうやら三橋以外に女子からチョコをもらった野球部メンバーはいなかったらしい。いつも通りに放課後の部活が終わって再び部室に戻ってきた西浦高校野球部員たちは現在、帰り支度の着替え中である。
そこでふと栄口が口を開いた。

栄口「なーなー、みんなさ、もし自分が女だったらこの部員の中の誰にバレンタインチョコあげる?」

あまりに唐突な発想に一瞬ポカンとして顔を見合わせる面々。まず口を開いたのは水谷だった。
水谷「えー、オレチョコなんて作れねーよォ」
栄口「別に作らなくたって買ったっていいじゃん。つか聞きたいのはそこじゃなくてさ、もし自分が女だったらこの部員の中の誰を好きになると思う?って話」
花井「はあ!?何だよその気色悪ィ仮定はよ」
青ざめる花井。その隣で阿部もドン引きしている。
栄口「えー、そんなドン引きしなくたっていいじゃん。チームとして一緒に野球やってて、オレらもうお互いの色んないいところ知ってるだろ。誰のどういうところが魅力的だと思うかって、そういう話だよ。」

ここで田島がバッと手を上げて声を上げる。
田島「はいはいはーい!オレ、レンがいい!!」
三橋「!!? オ、オレ…?」
三橋はまさか自分の名前が挙がるとは思っていなかったようで驚いて青ざめている。
田島は三橋の肩に腕を回し、「だってレンってカッケーとこあるじゃん」と言う。
『レンがカッコいい…?』
多くのメンバーが疑問を抱き、理解不能という顔をする。
水谷「え、レンのどういうところがカッコいいと思うの?」
素直に疑問を口にする水谷。
田島「え?みんな、わかんない?なんで?例えば、――試合中!試合中ののレンってスゲーカッコいいなと思うことない?」
そう言われてこれまでの試合を振り返る面々。
西広「オレ、わかるよ。試合中のレンが見せる投手としての…プライドっていうのかな、あれはオレもカッコいいと思ったことあるよ。HR打たれて、崩れそうになっても立て直すところとかさ。」
巣山「あ〜!!あのさ、美丞大狭山戦終盤の"ワンナウトー!"ってシャウトすげーよかったよな!」
沖&水谷「わかる!!」
泉「うん、オレもあれはグッときたわ」
栄口「オレ実はあの時ちょっと泣きそうになったよ。あれ、オレがミスってフライ落としちゃった直後でさ…。」
栄口はその時のことを思い出したのか、少し目がウルッとしてる。花井も「たしかにあれは胸熱だったなァ」と思い返している。
田島「タカヤはあの時ベンチにいたからあんまり状況わかってなかったか?」
阿部「や、まあ、ベンチから見てたよ。コントロール崩しかけたレンが立て直した時のことだろ」
栄口「そんな一言では語りつくせないものがあったよあれは」
田島「だよなあ!あれはすげーカッコよかったぞ、レン!」
三橋はみんなから褒められてフヘッと変な顔で照れ笑いしている。

田島「タカヤだってレンを選ぶだろ?」
阿部「は!?」
眉間にしわを寄せる阿部。
田島「え?違う?タカヤの方がオレらよりももっと沢山レンのカッコいいところ見てきたはずだろ。例えばさ、捕手やってて、レンがストライクゾーンギリギリのところにバシッと球を決めてきた時とか惚れ惚れしない?するだろ?」
阿部「う…、…いや、まあ、するけど……。」
恥ずかしいのか頬を赤く染めている阿部。
田島「あの快感は捕手やってねーと味わえねえよな!」
ニイッと田島が笑う。
田島「だから、タカヤはレンだろ?」
阿部「……まあ」
三橋「!」
三橋は『阿部君が…オレを…?』とポーッと顔を赤くする。

水谷「ほへー、レンってば部内でもモテモテだ〜。いいなー。誰かオレ選んでくれる人いねーの?」
泉「コメはないな」
水谷「ヒデエ!」
沖「オレはフミキいいと思うよ。まず顔が整ってるよね。それに性格も朗らかで誰とでも仲良くできて、コミュ力の高さが羨ましいよ。結構モテそうに見えるけど、バレンタインチョコとかもらったことないの?」
水谷「やった!褒めてもらった!嬉しー!ありがとな、カズトシ!バレンタインチョコはねー、小学校低学年の時に仲良かった女子からもらったことあるけど、あれはただの義理チョコだったよ。」
沖「義理チョコでももらったことあるだけすごいよ」
沖は「オレは一度もないよ」と言う。

栄口「フミキはこの中だったら誰がいい?」
水谷「えー迷うな〜。花井かユウトかシンタローかショージ!コースケも入れようかと思ってたけどフラれたからいれない!」
栄口「ずいぶん多いな(笑)」
泉「お前、浮気性だな〜」
栄口「理由は?」
水谷「花井はリーダーシップがあって羨ましいからで、ユウトはすげー気遣いができるところを尊敬してて、シンタローは頭がいいから羨ましくて、ショージは料理が上手でおいしいもの沢山作ってくれるからで、コースケは性格が男前だから!」
泉「単純だな。つかオレはいれないんじゃなかったのかよ。つか性格が男前ってなに。」
水谷「コースケは顔はかわいい系なのに性格は割とオラオラしてて男っぽいだろ。花井とは違った頼りがいがあるよな。コースケは誰がいいの?」
泉「"顔がかわいい系"っつーのは余計だ!オレは花井か田島だな。理由は単にバッティングスキルが高くて羨ましいから。ユウトは?」
栄口「オレはショージかなー。ショートっていう難しいポジションをこなす野球の上手さが羨ましいし、冷静で堅実な性格がいい。あとは料理上手なところとか私服のセンスがいいところとか!」
巣山「なんかこれ結構照れるなァ。ありがとな。」
巣山が照れて頭をポリポリと掻く。

栄口「ショージは?」
巣山「オレは…花井かな。やっぱキャプテンとして皆をまとめられるリーダーとしての素質がカッコイイって思う。」
花井「う、え、オレェ!?」
花井は顔を赤くする。
西広「オレも同じ理由で花井。あとはカズトシ。字がきれいだったり水泳上手だったり何かと器用だし、色々キチンとしてるし、なにより温厚な性格がいい。」
沖「あ、ありがとう…」
照れる沖。

田島「なァ、花井は!?」
花井「ええェ…オレはいーよ。自分が女だったらとか考えらんねえよ。」
田島「別に女だったらっていう仮定じゃなくてもいーってユート言ってたろ。"誰のどういうところが魅力的だと思うか"ってハナシだってさ」
花井「……」
田島「あー!一人だけ言わない気かー!ズリーぞ」
花井「なっ…三橋だってまだ言ってねーだろ」
田島「あ、そっか。レンは?」
三橋「オ、オレ…!?…え…み、みんな、スゴイ、ヨ…」
オドオドしながら答える三橋。
田島「みんなって答えはダメだー!この浮気者!誰か選べ、レン!」
三橋「う、えぇ…!?」
困惑するする三橋。そんな三橋をジッと見つめる田島。
田島「ちなみにお前を選んだのはオレとタカヤだぞ」
三橋「じゃ、じゃあ、ゆ…ゆう君…と…あ、阿部君」
田島「どっちもかよー!まあ、いっか。一応オレら相思相愛だなー!ほい、じゃあ最後花井の番な!」
目をランランと輝かせて花井を見る田島。
花井「ええ〜……」
戸惑う花井。どうしても口にするのが憚られる。
田島「誰にすんの?」
花井「……」
田島「なあ?」
花井「………」
田島「なあ??」
花井「………お前」
田島「………オレ?」
きょとんとして花井を見る田島。花井はなんだか気恥ずかしくなって顔が赤くなってしまう。
花井『何だこれ。なんで愛の告白をしたみたいな気分になんなきゃいけねぇんだ、クソ』
田島「理由は?」
花井「そら、野球の才能とセンスが羨ましいからだよ。……でも、オレだって負ける気ねえからな。」
田島はニッと笑い、「オレだって負けねえぞ!」と言い返した。

田島「さーて、全員の回答聞けたし、早くコンビニよって帰ろーぜ!オレ腹減った〜!」
くるりと踵を返す田島。急いで帰り支度を進める。
三橋「オ、オレも!…オレ、肉まん食いたい!」
栄口「いいねー!オレも今日は肉まんにしよっかなー」

今回の会話でなんだか少し親密度が上がった西浦高校野球部員たちだった。

<END>