おおきく振りかぶって 創作 <文化祭の出し物>
※注意:アニメ映画「心が叫びたがってるんだ」のパロディネタです。※
「というわけで私たち2年4組は文化祭で体育館舞台で何らかの公演を披露することになりました。公演の案を文化祭実行委員で考えてみました。これらの中から皆さんの意見を聞いて決めたいと思います。もちろん他にやりたいことがあったら言ってください。」
・朗読劇
・演劇
・ミュージカル
・合唱
「えーよりにもよって体育館での公演かよ」
「一番大変なヤツじゃん」
「オレ部活あるからあんま手伝えねえよ」
クラス中から小声で不満の声が上がった。
そんな中、デカイ声でハッキリを発言をする男がいた。
「てか三橋どーすんだよ、このろくに喋れねえ男よォ」
それはサッカー部の男子だ。
「喋れねーからってこいつだけサボんの?ズリィよな。ならオレもやんねー!」
「確かに!やんなくていーならオレもやりたくねえ!三橋が免除ならオレらだって免除でいいよな?」
同じくサッカー部の男子がそれに同調した。三橋は自分の名前が話題に上がって青ざめてキョドってる。
「オイ、三橋よォ、何か言えねえのかよ。キョドキョドしやがって。オレァ前々からお前のその態度にはイライラしてたんだよ!」
はっきりとした敵意を向けられて三橋はサァァと青ざめてギシッと固まった。
「お前、野球部でエースやってるんだって?お前みたいなのがエースって…野球部はよっぽど人が足りねェのか?じゃなきゃオメーみたいなのがエースやれるわけねえもんな。だから野球部は今年も全国行けなかったんだろ!」
「何も知らねえくせに勝手なこと言ってんじゃねえぞ!」
阿部が席から立ちあがってそのサッカー部の男子の方に向かってツカツカと歩いていく。
「ああ?」
「ああ?…じゃねえよ!テメーがレンの何を知ってんだよ!」
サッカー部男子の胸倉を掴む阿部。サッカー部男子と阿部でメンチを切り合う。
「こいつは実力でうちのエースやってんだよ!」
他のクラスメイトたちはガタイのいい運動部同士で喧嘩が始まったことに驚き、ビビり、中には恐怖で悲鳴をあげた者もいる。
「ちょっと2人ともやめてよ…!」
実行委員のうちの1人の女子が2人を引き離そうとするが運動部の男子を女子の力で引き剥がせるわけもなかった。
「ちょっと泉君!阿部君止めてよ!」
「いや、オレもレンのことバカにされてイラっときてるから止める気はない。阿部は間違ってねえよ。」
泉はさすがに掴みかかりこそしないが阿部と同じくサッカー部の男子に対して怒りを覚えているようだった。
「こいつはな、ストライクゾーンを9分割で投げられるほどの制球力があんだよ。バカのお前にはこのスゴさがわからねえか?これはな、プロでもできねえコントロール技術だぞ!」
「知らねーよ、野球のことなんか!あんな泥臭いスポーツ!」
「んだと!テメェ、この際ハッキリ言ってやるけどな、役立たずはお前の方だろ!聞いたぞ、お前、今、足首捻挫してサッカーできないらしいじゃねェか!自分が役立たずだからってレンに八つ当たりしてんじゃねえぞ!」
「ああ?誰が役立たずだって!?」
どんどんヒートアップしていくサッカー部男子と阿部。あたふたするクラスメイト。それを止めたのは…
「オレーならーやれーるよー♪歌ならー♪どもらずー♪歌えるー♪」
三橋が突然歌いだした。
「うまくなーいけどー♪これーでもー♪よけーればー♪オレはーやれるー♪」
呆気にとられるクラスメイトたち。
「三橋君が歌った!?」
「え、今のミュージカル?」
「じゃあミュージカルやろうってこと?」
掴み合っていたサッカー部男子と阿部もまさかの展開に呆気に取られて腕の力が抜けた。その隙を逃さず2人を引き離す実行委員の女子。
三橋は阿部の方に近づいていった。
「タ、タカヤ君…。オ、オレ、今は、ヒ、ヒイキのエース、じゃないって、わかってる。…から何を言わ、れても…へーき。だから、タカヤくん、お、怒らな、くて、いい。」
珍しく目をそらさずに阿部をじっと見つめる三橋。阿部はそんな三橋の顔をまじまじと見る。
「あ、で…も、タ、カヤ君…オ、オレのためにやった…って、わかる。…だっ、だから、ありがとう、タカヤ君」
三橋はニカッと笑った。
三橋の笑顔を目撃したクラスメイト達はどよめく。
「え、今三橋君笑った…?」
「初めて見た!」
「えっなになに、よく見てなかった」
ザワザワと騒がしくなり始めた教室を静めるため、文化祭実行委員のうちの1人が仕切りなおす。
「えーっと、皆さん、じゃあ歌唱系ってことで、ミュージカルか合唱のどちらかでいいですか?」
「ミュージカルはハードル高いっしょ。合唱で良くね?」
「私も合唱に賛成です」
「オレも。合唱だったら昼休みに練習すれば部活あるヤツらでもやれるっしょ!」
そうして2年4組の文化祭の出し物は無事に合唱に決まったのだった。
<END>